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語義の表現形

新明解国語辞典(第4版)で「さびしい」の語義と用例を読んでいて気がついたことがある。

さびしい【寂しい】(形)
①自分と心の通いあうものが無くて、満足出来ない状態だ。
  「-生活」
②社会から隔絶されたような状態で、心細くなる感じだ。
  「-山道」 
③有ればいいと思うものが無くて、満ち足りない感じだ。
  「ふところが-」「口が-」

形容詞の定義を「~状態だ」「~感じだ」で終わらせるなんて。形容詞とはそういうものだったのかという発見がある。寂しいという気持ちにさえ、そこに救いが見いだされるような気持ちにしてくれる。

もちろん、新解さんの表現形は語意によって揺らいだりはしない。

たのしい【楽しい】(形)
その状態を積極的に受け入れる気持ちが強く、出来ることならそれを持続したい感じだ。

あくまでも、~な感じなわけだ。もちろん、語尾は微妙に変化する。そして微妙な例外もある。

しらじらしい【白々しい】(形)
①知っていてしらないふりをする様子だ。
②その事が自分の生活や心情にはぴったりと来なくて、なんとなく空虚な感じを与える様子だ。

しろい【白い】(形)
白の色だ。

新解さんには本当に励まされる。言葉の語義の中に深く沈みこんでいく感じだ。そしてそれは同時に、高いところから俯瞰する感じでもある。

寂しさの底抜けて降るみぞれかな 内藤丈草
淋しさに花咲きぬめり山桜 与謝蕪村

前者は深化、後者は俯瞰。新解さんはそんなことも考えさせてくれる。

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