マガジンのカバー画像

認知症フレンドリージャパン・マガジン

41
認知症にかかわるさまざまな活動を掲載していくマガジンです。
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

変化の予兆:Build Back Better

北里大の人を中心としたコミュニティと関わる活動が新型コロナの影響で延期が続いていた。「だったらZoomを使いましょう」ということになり、そのための一歩がはじまった。 元々、北里大の人はこの何か月か授業等でZoomを使っているので、そのリソースを少しだけ外に向けて開けば、ずいぶんと大きな力になる。今日の最初の一歩では、OT(作業療法)の先生が少し話をした。面白かった。 話の中で、オーストラリア作業療法士協会のHPに精神科作業療法士のLorrae Mynard 氏による「No

対話の要件

対話が生まれる要件とはなんだろうか。ひとつには、パターン・ランゲージ「対話のことば」で記述されたような心的態度を参加者のそれぞれが意図的に実践することだろう。 ふたつめの要件は参加者の動機だろう。もちろん、その動機は参加する人ごとに異なる。明示的かもしれないし、曖昧かもしれない。必要性かもしれない、期待かもしれない。 いずれにせよ、その場にいるという事実は、参加者による関与・寄与の間接的な意思表明となる。対話という文脈でいえば、何かを話したいという気持ち、聴きたいと思って

変化の予兆:京都ソリデールとは【連帯】の意

京都ソリデールという取り組みがある。京都府の事業だが、和風に【次世代下宿「京都ソリデール」事業】と表現されている。事業目的は『若者(一人暮らしの大学生等)へ低廉で質の高い住宅確保と自宅の一室を提供する高齢者との交流を図る、同居マッチングシステムを構築』とある。 ソリデールはフランス語で「連帯」の意。つまり、よくよく目を凝らせば、和風な事業名と目的の中に、若者と高齢者との【連帯】を求める精神がある。 下宿は連帯。「ともに生きるではなく」、「支えあう」でもなく、連帯と言い切っ

認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(DFJI)

2011年に、国際大学GLOCOM・認知症フレンドシップクラブ・富士通研究所の3組織で、共同プロジェクト「認知症プロジェクト」を始めた。認知症という社会的課題に対して、「企業は何ができるか」が最初の問いだった。 2013年には、その位置づけをもう少しより広くとらえ、非営利型一般社団法人として『認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ』(Dementia Friendly Japan Initiative)を設立した。 名称の間口は広いが、その意味は、『認知症をとりまく課題

「参加から参画へ」 – さまざまな立場の人が認知症の課題に取り組む意味(Ⅰ)

認知症の課題を地域で考えていくためには、多くの人が関与することが大切だ。。そのような活動には具体的に誰がどのように関わればよいのだろうか。そのヒントが世界でも、日本でも、生まれ始めている。 “I want to speak please” 認知症の当事者本人としての声をとどける 冒頭の写真は、ロンドンから列車で2時間ほどの英国中部の街、人口20万人ほどのヨークというところで使われている絵はがきほどの大きさのカードです。 この街では、認知症当事者のみなさんが月に一度集まって

「参加から参画へ」 – さまざまな立場の人が認知症の課題に取り組む意味(Ⅱ)

「参加から参画へ」というテーマで、ヨークの"Minds & Voices"の人たちの活動を中心に、認知症の当事者も交えたさまざまな立場の人が認知症の課題に取り組む意味について考えた。 同じ英国でも、スコットランドのエジンバラでは、また別の活動が進められている。以下では、変化を少しずつ形にしながら働きかけていくことについて考えていきたいと思う。 変化を少しずつ形にしながら働きかけていく スコットランドで認知症当事者グループを立ち上げたJames McKillopさんは、エジ

旅のことば。プロジェクトが生まれた日

慶応義塾大学の井庭さんたちと認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(DFJI)とで、「旅のことば 認知症ともによりよく生きるためのヒント」のプロトタイプ版を2014年に制作した。 下記のノートは、六本木にある国際大学GLOCOMの部屋で、井庭さんたちに「こんなことをしてみたい」と伝えたときのものだ。 ノートは、1) 右ページ中央から下へ、2) 右ページ上から中央へ、3) 左ページ上から下へ、という順番で書かれている。資料はこれだけ。 左ページの進め方のところには期間は

作業科学に魅せられる書: 吉川ひろみ 『「作業」って何だろう―作業科学入門』

この本は、作業科学という新しい分野の魅力的な入門書。 ページ数はあとがきを含めて105ページと短く、だからこそ、読者は細かな隘路に陥ることなく読み通すことができ、「作業とは何か」について考えることができる。 作業科学は、作業という現象について深く考えていく学際的分野であり、この本の目的も、作業科学という新しい潮流に触れることにある。本書では、作業科学とは何を対象にした学問なのか、それはどのような背景で生まれ、そこで大切にしている価値は何なのかが、平易な文章で述べられている