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足踏み母と2段跳び園児

この春に、息子は保育園のトップ『年長さん』の座に就いた。
3月後半に保育室が年長さんの部屋に変わったその日から、卒園まで続くと思っていたルーティンが私たちの間から消滅した。

年中のころの話。
年少~年長の保育室は保育園の2階にある。
保育士に前日の様子を簡単に伝え、「じゃ、よろしくお願いします」と去ると、当然のように後ろからついてくる息子。
1階に降りる階段の手前にある引き戸は大人の胸の高さまである。そこで高めに手をかざすと、息子はマリオのようにジャンプしてタッチをする。
「もうちょっと高く」「もっと高く」と、さらなる高みを目指してマリオジャンプする息子と、ぎりぎり届かなさそうで届く絶妙な高さを狙う母。

マリオジャンプに満足して解放されると、玄関に向かい靴を履く。去り際に2階を見上げると、玄関を見下ろすことのできる窓から様子を見ている息子と手を振り合う。
ここで終わりと思いきや、玄関から出た後に保育園の外から見上げると、外の駐輪場を見下ろす窓から見ている息子がいるので欠かさず手を振る。
朝は逆光になっていてこちらから窓の向こうが見えていないけど、そこから見ていることを知っているので「いるであろう息子」に向かって手を振っている。誰もいなかったらちょっとしたホラーである。

抱っこで縦揺れ10カウントしていた年少のあの頃に比べれば楽なもんなので、特に負担もなく日々過ごしていた。
縦揺れ10カウントの記事は以下↓

そして、その日は突然やってくる。
最初に言ったように3月後半になり、ひとつ上の子たちの卒園式が終わると、いよいよ年中の部屋から憧れの年長さんの部屋への移動となる。
年長さんの部屋は大きな窓があり、道路を見ることもできるし使えるおもちゃのバリエーションが増える。LaQやKAPLAの数が全然違うと言うのだ。
年長さんの部屋で過ごす初日。
一緒に保育園へ行き、またいつものように階段までついてくると思っていた。
振り返ると、来ていない。
「えっ、いいの?いない・・・このまま帰っていいのかな」
後から「なんで帰ったの!!」と怒られる気がしつつもそのまま保育園を出て仕事を始めた。

翌日、ついてこない。
その翌日、ついてこない。

こりゃ完全に意図して見送りを辞めているのかも。
けど、ここで「辞めたんだね」と言おうもんなら「忘れてた!!明日からはちゃんとタッチしてからにする」と言うかもしれない。いや、言うに決まっている。だからこのままなあなあにしておこう。

そう思っていたのだけど、10日ほど経ったころ、つい寝る前に布団の中で聞いてしまった。
すると、予想していなかった答えが返ってきた。
見送りを忘れてなんかいなかった。ずっと見送りをしていないことに気づいていた。
わかってて、見送りをしなかったのだと。
もう年長さんだから、お部屋の前でバイバイできると。

生まれてたった5年だと息子を侮っていた。
家ではまだ赤ちゃんのように甘えたがる時がある息子も、外では「保育園で一番お兄さんのクラス」に所属している自覚を持っていることに驚いた。

もう年長さんだからと言いつつも、「本当は前みたいにママとバイバイしたいんだけどね」と呟いていた。
「別に今まで通りバイバイしてもいいんだよ」と伝えたが、
「ううん、いい。もう年長さんだから我慢する」とキッパリと断られた。
ならばその意思を尊重しよう。
今までも、日々の些細なことでも自ら宣言したことはちゃんと覚えていて実行するので、きっと本当にもう年中さん時代のお見送りはしないのであろう。

本当に、子育てはあっという間なんだと実感している。こんなことを言うともっと大きなお子さんのいる先輩方々から「たった5年で何がわかる。この先もっと早いぞ」と言われるだろう。
自分の年齢があっという間に進んでいる実感があるので、子育ても怒涛の速さで過ぎ去っていくだろうと思っている。私一人が保育園で足踏みしている間に、息子はとうとう保育園児の最後の1年となってしまった。
これからの保育園での行事はすべてが『最後の』となってしまう。
まさか年中の間に『最後のお見送り』が終わるとは思っていなかったな。

寂しくないわけではないけれど、徐々に自分から私の手を離して自分の世界を築いている姿はとても頼もしい。今はその姿を特等席で見させてもらっている。そのうち、それすらも見えない遠い場所に行くのだろうけど、それまでは目の前でレジャーシート広げてオペラグラスで凝視するくらいの気持ちを持ちつつ、2階席から見守る距離感でいきたいです(願望)(いや無理そう、私が)

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