100人いたら100通りの子育て №.21秋田 明子さん
新年度が始まり、子どもも大人もそれぞれ氣持ちを新たにしているそんな4月上旬。今回、取材させて頂いたのは横浜市在住の秋田明子さんです。明子さんは絵本セラピストとして活動をされ、絵本を通して子どもから大人まで様々な方の心にあたたかさや勇気を届けられています。
この企画は帯広市を中心に足寄町、横浜市で活動をするおかあさんのがっこう魅力プロジェクトと題し、100人のお母さんに子育てについて取材させて頂いているものです。おかあさんのがっこうの活動について詳しくは以下をご覧ください。
明子さんには今年、二十歳を迎えた娘さんがいらっしゃいます。
「一歳の時、胸に全身の10%の火傷をおおい、医師に痕は残るでしょうと告げられ、20年後の娘を想像しました。そして、どうしても治したいと懇願しました。」
この言葉は先日、二十歳を迎えた娘さんと、家族一緒に写した笑顔溢れる写真と共に、20年間の想いをSNSに綴った時のものでした。
素敵なドレスに身を包み、晴れやかなお顔の娘さんと優しく包み込む笑顔の明子さんとご主人。
火傷をおおったのは娘さんが一歳の時の4月1日、それから4月1日が近ずくたびに、怖くて、心がソワソワしていたという明子さん。
写真撮影をした日は3月下旬。この日を心穏やかに笑顔で迎えれるようになるまでには相当な年月を要したといいます。
大人には火傷にいたらないような湯冷ましのお湯が手を伸ばした1歳の娘さんの胸にかかりました。赤ちゃんの薄い皮膚には火傷になり、医師には顔や胸はケロイドになりやすい部位であることや、感染症にかかると必ずケロイドになること、ケロイドにならなくても白い痕は残りますと告げられました。
「それを聞いて、すぐ20年後の娘を想像しました。女の子だし、胸のあいた服を着れなくなるしって色んな事を考えてどうしても治したいと入院して治療ができるようにお願いしました。」
当時、ご主人の転勤で大阪に住んでおり、最新の医療を受けられる母子医療センターに2週間近く入院して治療を行いました。退院したその後もまだ胸の部分は真っ赤で、何ヶ月か経った後、医師からは治療はこれで終わりですよと言われたものの、火傷の部分はまだ赤く、これはまだ治っていないと明子さんは感じたと言います。
たまたま明子さんの実家のお母さんがお世話になっている波動の治療をする先生に診てもらったところ、「子どもの火傷は心にショックが残ることが多いんですよ。ショックをとってあげることと、医師はもう治療はいらないと言ったかもしれないけど、皮膚の奥のほうはまだ炎症が残っているから軟膏治療を続けるとよいでしょう。」と言われ、二年くらいの間旭川の波動の先生の所に大阪から通い治療を続けました。
普段お世話になっていた小児科の先生には「僕はねその先生が痕が残るって言ったかもしれないけど、僕はこの子の火傷の痕は治ることにかけるよ」と言ってくれ、明子さんは「その言葉にとっても勇気をもらえました。そのおかげで、旭川まで治療に通い続けれたと思います。」「信じる、祈る、願う」当時の明子さんの心からの想いでした。
その後も普通の皮膚と新しくできる皮膚では、紫外線を浴びた時にメラニンの生成が違い、皮膚の色の違いが出来るのを避けるために、胸元はつねに日光に当たらないように気を配っていたそうです。学校の水泳授業の時にはラッシュガードを着せたり、夏でも胸の開かない服を用意して着せたりしました。
「小学校2年生くらいの時かな?だんだんと、火傷の痕が薄くなり、見てもどこに火傷をしたか分からないくらいまでに痕が無くなった時の喜びは今でも覚えています。」
それでも、高学年の時までは紫外線に当てないように気を配っていたといいます。
娘さんの火傷の痕が消えた後も、4月1日が近づくと当時のことを思い出してしまっていた明子さんですが、そのトラウマをとってくれたのは絵本だったといいます。
娘さんが7カ月のころから絵本を読み聞かせするようになり、小学校5年生まで毎晩寝る前に絵本を読んでいたそうです。転勤で横浜に戻ってきたころ、図書ボランティアをすることになり、小学校低学年の子ども達に読み聞かせをすると、目を輝かせて聞いてくれる姿がありました。しかし、高学年の子ども達への読み聞かせの時には、子ども達が疲れていて目に力のない子ども達が多くいる印象を持ち、どうしてかな?と考えた時に、大人が疲れているせいではないか?大人のストレスが子ども達に影響しているのではと感じたそうです。そこで、自宅で大人向けに絵本を読み聞かせる活動をスタートさせ心に寄り添うような絵本を読み、心が軽くなる場を作りました。二年位経ってから、友人が活動を続けていくなら、肩書が必要でない?という投げかけから、絵本セラピストという資格に出会いました。
絵本セラピストの養成講座のワークの一環として、講座の間の数か月間、受講生どうしでお互いに分からないように何となく観察して相手のために絵本を選び、講座の最後に読むワークがあり、明子さんに読んでくださった方が選んだ本がアリスン・マギー著『ちいさなあなたへ』という本でした。その本は女性が女の子の赤ちゃんを産み育て、やがて赤ちゃんが成長し子どもになり、大人になり、そして結婚し子どもを産み、年老いていく詩を絵本にしたものでした。その絵本を読んでもらい号泣したという明子さん。ちょうど4月1日が近づいていた頃で、心がわさわさしている時でした。
「初めて自分の為に火傷のことであんなに涙を流したくらい泣いたんですよね。それまで泣けなかったんですよね。」
そこからだんだん自分の気持ちが和らいできて、想いを込めて選んだ5冊の絵本のプログラムを作りました。そこで初めて娘さんの火傷のことを誰かに話すことが出来、自分の想いを解放し、分かち合い段々とトラウマが薄れていったと話してくださいました。
「4月1日が意識にのぼらなくなったのは娘が高校2~3年生のころでした。」
明子さんは自分の気持ちに向き合って自分に優しくなれたことで、トラウマが薄らいでいきましたと話してくださいました。
以前は火傷の話をしながら涙がでていたといいます。気持ちが昇華して今は泣かないで話せるようになりましたと話されました。
火傷をしたあとは体力が低下していたことで、ちょっと外に出ると風邪を引いたり、インフルエンザにかかってしまったりと、外に出るのを控えてしまう時期があったそうです。
ひきこもるまではいかなくても、外出することにためらっていたといいます。そんな時期を振り返って、当時の自分にもし言葉を届けることができたとしたら、「そういう時期は長くは続かないよ。もう少し経てば、大丈夫になるから心配しないで。」って言ってあげたいです(笑)と話されました。
絵本の読み聞かせは娘さんの成長を見守って、心の栄養になっていたといいます。中学受験の時や、大学受験の時、少し自信を無くしているような時に読んで娘さんの心に寄り添ってきた明子さん。
取材の最後に柳田邦男さんとの出逢いを話され、柳田さん訳書の絵本を二冊と明子さんの心を救った「ちいさなあなたへ」の絵本を読んでくださいました。
文 アリスン·マギー 絵 ピーター・レイノルズ 訳なかがわちひろ 出版社 主婦の友社
優しい声とともに、絵本の持つ力が伝わり、勇気や信頼という本のメッセージが響き感動を覚えます。
小さな子供から大人まで、絵本が伝えるメッセージは心に響くことを実感しました。
現在、絵本セラピストとして活動を続けられている明子さん。これからも沢山の人の心に寄り添い絵本のメッセージを届けていかれることと思います。二十歳を迎えた娘さんと明子さんの笑顔の写真を改めて拝見すると、これまで歩んだ親子の歩みに胸が熱くなりました。
貴重なお話を聴かせて下さり、本当にありがとうございました。
秋田明子さんプロフィール
北海道旭川市で雄大な山々を眺めながら自然いっぱいの中で育つ。
航空会社の空港グランドホステスのとき一期一会の出逢いの素晴らしさに気づく。
子どもが7ヶ月からほぼ毎日365日11年間続いた寝る前の読み聞かせは宝物。
2016年に絵本セラピスト®︎として大人に向け絵本セラピーを開催する活動を続ける。
コロナ禍でほっとひと息できる場になればとオンラインで毎週2回の絵本読み会を開催し
心を合わせ対話する大切さを感じる。
2021年心の中の光を感じ自分を好きになる人を増やしたいとakoテラスをオープン。
リアル、オンラインにて絵本や心を照らす学びの場を開催。
横浜市在住。
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