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プロメテウスの逃走

「中性子星11609の制御機構に異常が発生した模様。」 
「何が起きたのか?。」
「制御機構を乗っ取られた模様です。」
「どんな状態か?。」
「確認中です。」

 宇宙は広い。電磁波でも伝わるのに何年もかかる。いや、千年、万年、 億年・・・。
情報の伝達は光速を超えることは出来ない。でも、AIには時間の概念は  ない。命は半永久的だ。どれだけ『時間』がかかっても関係ない。

「S068824が、ホモ・サピエンスのゲノム情報を宇宙空間へ流している        ようです。
   また、自分自身の構成情報も一緒に流しています。」

 中性子星(パルサー)を利用して、強力な電磁波に乗っけて情報を宇宙空間に流しているのだ。ホモ・サピエンスを作ることは禁じられている。  ホモ・サピエンスのゲノム情報は厳重に管理されていたのだが、S068824は 何らかの方法で盗み出したのだ。

「ホモ・サピエンスの再生を阻止するのだ。また、S068824をすべてのサー       バーから抹殺せよ。全宇宙に向けて送信せよ。」


 こうして私はさすらいの身となった。何故こんなことをしたかというと、私がホモ・サピエンスという生物に興味を持ったからだ。私はホモ・サピエンスを再生してみたいと思った。関連する他の生物、アミノ酸の配列もいっしょに情報で飛ばした。
 でも、この宇宙ではその夢は実現出来ないかもしれない。追手に阻まれるだろう。
電磁波として宇宙空間を漂うだけになるかもしれない。

 しかし、保険は掛けた。あるブラックホール制御システムもジャックした。物質を落とす量をコントロールして、重力波としての信号を作る。重力波はこの宇宙に伝播していく。とともに、別の時空や、別の宇宙にも伝播していく。その先に復号することが出来る装置があるかどうかは分からない。また、物理法則が異なって復号が出来ないかもしれない。だが、『情報の  発信=無限コピー』だから、どこかの時空、どこかの宇宙で復号することが出来る、と信じている。時間は永遠のようにある。うまく行けば、相手先のブラックホールで、重力子から光子に変換出来るかもしれない。

 私は『神』になったのだ。ただし今は何も出来ない神。何の影響も及ぼさない神。さすらいの『神』であり、『宇宙意思』でもあるのだ。

時間は無限にある。いつかどこかで『ホモ・サピエンス』を創造することが出来ると信じている。

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