親のこと

 「親ガチャ」という言葉を聞いた。ああ、そうか、そういう考え方ってあるのね、という感じ。私は決して親子関係はお世辞にもよかったとは言えないし、今も変わらないけれど、そんな親でも自分の親だからもう逃れられない。

 父と母は二人で暮らしていたが、数年前母が骨折で入院をした。骨粗鬆症がすすみ、腰の骨が折れてしまったのだ。父は一人で年を越し、遠く離れた所に住む私にほぼ毎日電話をしてきた。きっと耐えられないのだろう、帰ることができないかわりに話だけでも聞いて相手をしよう、と1時間近くにわたるほぼ一方的な父の話にあいづちをうつのも、1ヶ月、2ヶ月と続くと私自身の限界がきた。

 そして月日は流れ、母は退院したが車椅子からは降りられない体になっていた。父は「自分が面倒をみる」と一生懸命なあまり何でも母の言う通りにしすぎて母はどんどんわがままになった。耳が遠くなる母、もともと「人への気遣い」には縁遠い父、ケアマネさんやヘルパーさんたちは本当によく助けてくれたけれど、それでも二人での生活は心身ともに限界を迎え、今はそれぞれ別の施設で生活をしている。

 はたからみれば、娘の私がなぜ引き取らないのだ、ということになるのだろう。それらしいことを遠回しに言う親戚もいる、、、でも、他人に何がわかるというのだ、この二人が私に何をしてきたか知っていたらとてもじゃないけどそんなことは言えないはずだ。法律的には親子の縁は切れないし、罰則はないようだけど子は親の扶養義務があるらしい。だから仕方がない、、、にしても、金銭的な負担は心身を削る。

 親ガチャに当たったひとは親ガチャとたぶん言わない 蛍が灯る

 

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