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すでに高崎にないものを書くことにより、高崎の輪郭を再確認できる稀有なzine /『Neverland Dinerーー二度と行けない高崎のあの店で』

もう行けない店、味わえない味、酔っ払えないカウンター。都築響一氏による編集で、様々なライターや編集者、ミュージシャンや小説家や歌人やなど100人がそれぞれの「二度と行けない店」について書き綴った638ページの分厚さになる『Neverland Dinerーー二度と行けないあの店で』はとんでもない名著だった。

時代と共にあった離島の漁師屋台、生涯忘れらないほどまずいカキフライを出す定食屋、浮気した旦那から離脱すべく靴もなく駆け込んだ台湾料理屋、ウーロンハイで25万円請求される新宿のぼったくりバーetc..これは本当に実話なのか?という人生悲喜交々なエッセイが続く。

「幸せや楽しさは外に向かい人ぞれぞれに違うから共感はしにくいが、悲しさや寂しさは内に向かい人それぞれの差が小さいから共感しやすい」と言ったのは誰だったろうか・・『Neverland Diner』の面白さは、そんな「あなたのおすすめの名店を教えて!」というポジティブなまとめではなく、「二度と行けない店」という個々が内面に向き合いざるを得ない文章を大切に集めた事にあるように思う。

都築響一氏はこの書籍の「全国各地の意思が通じる書店の協力のもと、その土地その土地で別冊を作る」という試みを行っており、高崎・「REBEL BOOKS」がその1店となった。「REBEL BOOKS」には僕が作ったzineも置いてもらっていて、今回「高崎の二度と行けない店について書いてみない?」とお誘いいただいた。はじめは、高崎在住でもない僕が・・とも思ったが、色々思い返してみたら、「あの店はそうだ、高崎にあった!」という事を思い出し「まだ何者でもない者のらーめん」という一編を書かせていただいた。

ちなみにそれは今はない高崎の「らーめん屋」についての話で、書きながらSNSで情報も集めようと思ったが(google検索では何ひとつ情報が出てこないので)辞めた。もし『Neverland Dinerーー二度と行けない高崎のあの店で』を読んでいただき、僕が書いたらーめん屋について知っている人がいたら、こっそり教えてほしい。よほどのラーオタでも知らない自信はあるが。

たまたまにはなるが、「REBEL BOOKS」のみで買える(のネット販売でも買える)高崎版は、尊敬する顔見知りばかりが執筆する1冊となった。読者としてのいちファンである『高崎ビジネスホテル探検記』著者の茂木さんの話を読んで、ごはんにしょうゆをかけたくもなったり(僕、もともと好きなんです)。

校正段階で一通り読ませてもらって、ああこれは執筆者個々の物語を提示すると同時に、高崎、という場所を指定し編集することによって「すでに高崎にないものを書くことにより、高崎の輪郭を再確認する」行為でもあったのだなと思った。とはいえガイドブックとしては活用性0の本なので(笑)高崎在住以外の方にも、ぜひ手に取っていただきたい。

※写真は『Neverland Dinerーー二度と行けないあの店で』

REBEL BOOKS web
https://rebelbooks.theshop.jp/

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