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Noと言えない日本人ならどう断る? 傍聴小景 #33

裁判を傍聴した結果、このnoteであったり、YouTubeに投稿するものに採用させてもらっている確率ってだいたい5件に1件くらいの割合です。
傍聴している最中に、絶対採用!と思いながら傍聴しているものもあれば、ノートを見返して渋いけど意外とよかったんじゃないのと思うものもあります。
今回の話は後者の例になるのですが、そういう感想を持つものの方が、自身の特性や弱いと自覚しているところをほじられているようで、むず痒くなったりします。

はじめに

罪名 :組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
被告人:40代男性
傍聴席:5人

この「組織的な犯罪の…」という罪名について、恐らくこのnoteでは取り扱ったことはないのですが、実際の公判の数としてはそれなりに多いです。刑事裁判の中で20番以内くらい?(罪名の多さで帰れま10をやりたい僕調べ
あんまり僕自身傍聴することは多くない罪名なんですけど、「詐欺」罪と一緒になることが多い印象です。ここに書かれてる犯罪収益云々というのが、組織的な詐欺行為に紐づくことが多いので、その詐欺行為とセットになることが多いんです。
でも、今回詐欺罪がついていない、この罪単独というのはどういう罪状なのか気になります。

事件の概要(起訴状の内容)

・被告人は、ボウリング場のトイレにて、不正に入手されたお金であることを知りながら、そこで氏名不詳者から180万円を受け取った
・同じく不正に入手されたお金であることを知りながら、コンビニのトイレにて氏名不詳者から40万円を受け取った

どうやら詐欺行為には関わってなく、本当にお金の運搬役としてのみ関わったようです。というか、こういういたって普通のところでやりとりされているのは僕も意外でした。
今回の事例はいわゆる振り込め詐欺での収益移転だったのですが、こういう運搬を必要とする詐欺行為は振り込め詐欺であったり、キャッシュカードのすり替えの詐欺だったりで得られたお金のことが多いです。
報道などでは大々的に取り上げられるこういう特殊詐欺と呼ばれる事案ですが、実は結構多くの人が関わります。まず振り込む先で身元がバレることもありますので、架空の口座を作らされる人であったり、実際に電話などする人、振り込まれたお金を引き出す人、それらを束ねる美味しい汁だけ吸う人、これらなかなか一人で完結することは聞いたことがありません。
それほど分担しないと、警察にすぐ見つかってしまうということなんですね。逆にまんまと逃げおおせている人がどれほどいるのかわかりませんが。それほど検挙率も高い犯罪なので、自身はもちろん、周囲でそんなことに手を出していそうな知人がいたらきちんと諫めてあげてくださいね。

検察官から提出された証拠類

・今回知人から指示を受けて実施した。その知人が何かしらの犯罪行為に関与していることは知っていた。
・顔も名前も知らない人物が現金の引き出し役で、トイレに籠る被告人に暗号を伝え、受け渡しをした
・受け取ったお金を自身は知らない人物の名義の銀行口座に振り込んでいた

トイレで知らない人間からお金を受け取って、知らない人の口座に入れる。それだけと言えばそれだけかもしれませんが、そんな怪しい話を受けるなよと思ってしまいます。
被告人はそんな話を受けなければならないほど、なにかに困っていたということでしょうか。

被告人質問で確認していきます。

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