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偽造したのは人の死に関わる書類。しかし被告人らはその重大さにあまりピンと来ておらず... 傍聴小景 #96(公文書偽造、詐欺)

感心してちゃいけないんですが、よくもまぁこんなこと思いつくよなという犯罪ってあります。特に今回のような詐欺事件に多い気がします。

今回、会社が絡む詐欺の話なんですけど、違法性のチェックをしっかりできる体制がある会社ってあんまないんでしょうかね。やっぱどこも苦しいから、そこに人をかけるくらいならという思いがあるのでしょうかね。
でも、その人手をかけないせいで、大きな事態になることも当然あるわけで。


はじめに ~マスコミも注目の事件とは~

罪名:有印公文書偽造・同行使、詐欺
被告人:50代の男性2名(以降、A、Bと呼ぶ)
傍聴席:平均17人(全4回)

被告人はスーツを着た2名。
社会人としての雰囲気を感じる2人ですが、1人は1回目の裁判当時は無職でした。この事件後に退職したようです。
マスコミの方も多く傍聴席にいたので、裁判が始まる前から緊張感が走ります。

この「有印公文書偽造・同行使」という罪名、一般の方には聞き覚えはそんなないかもですが、内容は字を見ての通りで、公文書を偽造しそれを使ったというものです。
だいたい、偽造する理由というのは、それを使って本来できないことをすることなので、「詐欺罪」とセットになることが多いです。

恐らくこの罪名で最も多いのが、免許証の偽造
それによって、架空の人物になりすまして、キャッシュカードを使って、それが特殊詐欺グループの入金先になるみたいなのはよくあります。
あとは、無免許の人がそれとバレないために使うとか。

しかし、この文書が偽造されるなんて、後にも先にも聞いたことありませんでした。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人Aは葬儀、保険、不動産関係の会社(この辺り不明瞭)のXに勤め、被告人BはAとは異なる保険会社Yに勤めていた。

両名は借用居室内で借主が死亡して、30日以内に死亡届が出されなかった場合に、清掃費用などとして発生する借家人賠償補償金を騙し取る目的で、

実際は屋外で死亡した人物であるものの、Aが過去に居室内で死亡した死体検案書の別の人物の名前を偽造し、Y社に対し、保険金請求を行い、事情を知ったBがその審査を通し、Y社からX社に対して100万円の支給をさせた。

実際は死亡すらしていない人物なのに、Aが死体検案書の別の人物の名前を偽造し死亡したこととし、Y社に対し、保険金請求を行い、事情を知った別の人物Cにその審査を通させ、Y社からX社に対して約100万円の支給をさせた。

今回の公文書というのは、死体検案書のことでした。
死体解剖保存法という恐ろしい名前の法律の観点に基づき、公文書であるという話などもありました。いろんな法律があるものだと、本当に思い知らされます。今後知識として使う機会はあるのでしょうか…。

さて、事件内容ですが、ざっくり言えば、家で長く死亡が確認されなかったことによる清掃費を嘘で求めた詐欺事件なのですが、支払ったのはBが勤めるY社
自分の会社が損に合うことではありますが、自分自身の懐が痛まなければいいってことなんですかね。

ちなみに②の事件については、Bは関与していません。Y社の別の人間Cが関与してのことなのですが、その人物はこの法廷に立っていません。この謎はすぐに解明されます。


採用された証拠類 ~会社を潰してやろうと~

Aは自身でX社を立ち上げ、Y社と接点を持っていた。その中でCとともに、今回の計画を立て、②をはじめとした詐欺行為を行っていた。
しかし、その後Cが死亡したことで、その犯行をBが引き継ぐこととなった。

BはY社において審査を通す役割を果たし、詐取金は折半していた。
Y社内で不正行為が発覚し、社内調査を実施したところ、X社への案件が多発していることがわかり、事件が発覚した。

Aの供述
実家にて、親や息子らと住んでいる。
Cから話を持ち掛けられたのがきっかけ。画像編集ソフトのIllustratorを使い、一旦該当部分を白く塗り、その上に同じフォントで上書きする形で偽造をした。

Bの供述
交際相手と同居中。400万円ほどの消費者金融による借金がある。
Y社の仕事量と給料が合っていないと感じていた。会社で社員が死亡した際(Cのことかな?)、社長がふと口にした言葉を聞き「潰してやろうと思った」。敵討ちの気持ちがあった。

もともとはCが言い出した事っぽいですね。まぁ、すでに亡くなっているので、どこまで本当かはわかりませんが。

なんとなく偽造文書って、その印影の偽造のイメージがあったのですが、文字の偽造だったようですね。イラレで出来るくらいのことなのだとしたら、割とハードルは低く感じていたのかもしれません。
先に例で挙げた免許書の偽造事案でも、コンビニでカラーコピーしたものが使われるケースも多く、ソフトにしても印刷機器にしても精巧になるのも考えものです。

ちなみに、カラーコピーくらいだったら、警官に見せた際は光度合いとか、手触りで一瞬で看破されるという話もよく聞きます。


被告人質問 ~みんなしてるんだろうなと~

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