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身近な黒幕は作品の中だけでいい(ストーカー規制法違反) 傍聴小景#48

全くもって感心するというのとは違うのですが、裁判を傍聴していて、よくこんなこと思いつくよなという犯罪内容に出会うことがあります。執念ともいえる、失敗したら命を落とすやもというのもありますし、単純にそんなこと想像したこともないよというものまで。

今回は、事件内容そのものを聞いて、思わず「うえっ」と思ってしまった事案を紹介します。


はじめに ~ストーカーってイメージはあるけど~

罪名 :
・ストーカー行為等の規制等に関する法律違反
・脅迫
被告人:20代の男性
傍聴席:18人(2回)

ストーカーという言葉が出てきたのは20年くらい前からでしょうか、昔ほど大きな話題を生むことは減りましたが、裁判ではぼちぼちやっています。でも、やはり新件があると傍聴席は人気ですね。

一般にストーカーと聞いたら、家に押し掛けるとか、無言電話をたくさんかけるといった態様が頭に浮かぶと思います。見た目はやや弱々しく感じますが、どこにでもいそうなこの20代の男性は、いったいどのような犯行を行ったのでしょうか。


事件の概要(起訴状の要約)~疑問深まる事件内容~

被告人は知り合いである女性に対する恋愛感情が成就しなかったことに恨みを持つようになり、その女性のメールアドレスをメルマガに登録することで、約45回にわたり、その女性のメール宛に監視しているような文言や、乱暴、性的な文面を送り、不穏を感じさせた。

これ、意味分かりますかね?僕は最初、全然意味わかんなかったんですよね。メルマガに登録して監視しているようにさせるとはどういうことなのでしょう。

ちょっと話それますが、メルマガって文化も長いですよね。私もサービス登録のついでに、メルマガ登録することありますが、まず読むことがないので、どういうニーズに応えているのか、いまいちピンと来ていません。

このnoteも自分でやっておきながら、ブログとの差がよくわかっていません。mixiも一瞬復活したりしましたし、こういうサービスの上がり下がりって面白いですよね。一度認知度が下がったサービスが再度向上したなんてニュースを聞くと少しテンション上がります。

上の話は、後の話になにもかかってこないので、忘れてもらって結構です。


検察官が証拠として提出した資料や供述など

・被告人は大学院を卒業していて、情報系の会社に勤めている
・両親と同居中
・被害者とは大学のゼミで一緒になり、好意を抱いた。被害者は後輩にあたる
・思いを伝えるが断られたが、頼られたい思いがあった

・被害者のメールアドレスをメルマガに登録して、
その名前欄に「君のこと見てるよ」「処女」など、都度名前欄を変えるなどして、被害者にその文面を確認させた

・被害者は、急に変なメールが来るようになり、パソコンに詳しい被告人に相談した
・しかし次第にメールは卑猥な文言などになった
・いくら携帯やメールアドレスを変えてもメールは届き、どこで見ているかわからない犯人に殺されるのではないかと不安に思った

えーーーーーーーーーーーーーーーー!なに、その方法。何をどうしたら思いつくんだよ。

確かに、ゲームの主人公の名前を「どうでもいい」にすると、流れるキャラクターのセリフが面白いんで困ったらやってるんだけど(オススメ)、それのストーカー版ってことか。

最初聞いたときは、その回りくどい方法って何?と思ったんだけど、いくらアドレスを変えても追いかけてくる状況に被害女性はかなり参ってしまったようなので被害結果は甚大のようです。

まさか、相談をしていた先輩が犯人と知ったときはどんな思いだったのでしょうか。なんか、そっちの方が想像したくない。身近にいた人が黒幕って、最近の作品では定番ですが、やっぱり実際にあると衝撃度も違うのだと思います。


証人尋問 ~え、それに気づかなかったの?~

証人尋問では被告人の父が出廷しました。
子どもを理系の院にまで進められるような親ですから、見た感じも受け答えも割としっかりしている人だったので大部分は割愛しますが、一部驚きの証言が出てきました。

弁「今回、息子さんが行った犯行というのは認識していますか」
証「警察の方からも、本人からも確認し、大変なことをしてしまったと思っております」

弁「被告人の人柄は」
証「大人しく真面目だと思っています」

弁「普段、どういう生活を送っていましたか」
証「社会人なので、朝は早く出て、夜は9~10時に帰っていました」

ありきたりな質問が続きますが、まぁ普通に過ごしている被告人がそんなことをしていると、全く思うことはなかったのでしょう。
しかし、この普通の答弁にも実は結構な闇が潜んでいたことに後で気付くのですが。

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