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パソコン繋いでエンジン起動し車の窃盗?大胆さとITスキルが用いられた事件の話(窃盗、覚醒剤取締法違反) 傍聴小景#91
窃盗と覚醒剤取締法違反という、刑事裁判の件数のツートップ。しかし、この2つが同じ裁判で並ぶことは決して多くはありません。
どちらも、自分の意思を止めらなかったことに起因しやすい犯行ですが、窃盗の欲と違法薬物の欲ってのは、また別なのでしょうね。しかし、この2つが重なり、かつ欲にまみれた犯行であれば、それはなかなかに強烈になるわけで。
はじめに ~裁判が10ヶ月にも及んだのは~
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罪名 :窃盗、覚醒剤取締法違反
被告人:40代の男性
傍聴席:平均4人(傍聴した6回)
裁判は約10ヶ月にも渡りました。傍聴したのは6回でしたが、見逃したのも何度かありました。長期化したのは何かを争っていたからではありません。むしろ、何一つ争っていませんでした。
ただ、ひたすらに審理の対象となる事件の数が多かったのです。
被告人は小柄なおじさん。悪そうな感じというより、「へい親分!」とか言いながら悪そうな人についていきそうなイメージ。最初に法廷で見たときは、こんな数多くやっている人には到底見えなかったのに。
事件の概要(起訴状の要約) ~缶ビールを段ボールごと~
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被告人は、
①共犯者らとスーパーなどで缶ビールを1ケース単位で複数ケース窃取
②共犯者らと各地の駐車場にて、車、ドライブレコーダーなどを窃取
③ホテルの部屋にて覚醒剤を注射
これら①、②を多数回実行
起訴された窃盗の事件数は合計で9件だったようです。
それにしても、盗るもののスケールがデカいっすよね。車そのものもいってますし、缶ビールをケースごといくって、なんかアメリカの強盗団みたいな大胆さです。共犯者の名前も多数出てきましたし、さらなる証拠が気になります。
採用された証拠類 ~新しい車が手に入ったから古いのは川に沈めた~
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検察官証拠
被告人は中学校を卒業後、職を転々とし、事件当時は単身で生活保護を受給していた。前科は6犯あり、直近でも覚醒剤や窃盗、道路交通法違反により2回の服役をしている。
被告人らは、共犯者の一人が上京してくることを歓迎しようとして、①の犯行を行った。店の防犯カメラの様子からは、買い物カートにビールケースを積み込む様子と、店の前で待機していた車に積み込む様子が映っていた。
最大で1度に8ケース盗むこともあった。
一人、もしくは共犯者と一緒に車上荒らしを繰り返していた。その移動手段として盗難車を使っていたが、キズが多くついて警察に怪しまれるかと思い、新しいのにしようと車を盗むことにした。
窓ガラスを割って侵入して、コンピュータ部分を取り換えてエンジンをかけて盗んだ。車の盗難後、古い車は川に沈めた。
複数の車上荒らしの中で、血痕が車内に付着しているのがあり、工具や血の付いたタオルも車内に残されていた。防犯カメラによると、ライトをつけて駐車場内を車で徘徊している姿が映っていて、偽造ナンバープレートをつけていた。
ホテルに滞在中の被告人に取調べに向かったら覚醒剤が発見された。
傍聴したときも思ったのですが、改めて書いてて「いやいやいやいやいや」って声を出してしまいましたよ。
何に、ってことでなく全体的にすごい話です。個人的には「コンピュータ部分を取り換えてエンジンをかけて盗んだ」ってとこの詳細が気になって仕方がないです。漫画とかだと、グループの中に太って眼鏡かけてて戦闘力はないけど、パソコンのことは任せておけ!みたいな人がいるけど、そんな人がいたんかな?
そして歓迎をするために、ビールを8箱も。転売目的もあるでしょうが。それをそのまま車に積み込んで持っていくなんて、日本でやる所業ではありません。防犯カメラを逆再生したら、業者が納品に来たように見えるのかな。
被害者は、処罰感情として「厳重に処罰してください」って言ってるみたいだけど、被害金額だけでなく、こんな舐めた犯行されたら「犯人をぶっ〇してください」って言いたかったんだろうな。
さて、こんだけたくさんのことがありましたが、起訴事実や請求された証拠に対しては一切の争いはなし。出す先が多過ぎるというのもあるかもだけど、反省文の類も一切なし。
証拠の精査や被告人との接見などに尽力されているはずなので、楽しているなどと言うつもりは毛頭ありません。でも「起訴状に争いはありません」「甲乙ともに同意します」「(スケジュールを)お受けします」以外の弁護人さんのお声を聞いたのは、初公判から9ヶ月経ったときのことでした。
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