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裁判の判決ばっか集めちゃいました(12月版) 傍聴小景 #52

刑事裁判の進行には大きく分けて以下の3種類あります。

新件→一回目の裁判。事件内容などが分かる。
審理→前の回で終わらなかった裁判の続きの実施。
判決→その名の通り、判決を宣告する回。

つまりは、裁判の途中の様子は全然わからないけど、「判決」の部分だけ傍聴するのことができるのです。多くの裁判が判決だけなら5分~10分程度で終了します。
そこだけ見ても…とお思いかもしれませんが、どうしてその判決を下すにいたったかの理由を説明するに際し、事件の内容はおおまかに説明するので(裁判官によっては割愛しますが)、短期間で事件内容に多く触れるという意味では結構勉強になるのです。

という訳で、「なんで?」という疑問は残るものもありますが、判決のみ裁判特集です。

No.16 風俗店で贖罪する男

罪名 :横領
被告人:20代の男性

業務上横領という罪名は割とメジャーなのですが、横領のみとなると割とマイナー罪名。
「自己が占有している他人の物を横領」する罪なので、確かに業務とかでないと他者のもの(お金とか)を預かる機会も少ないでしょうし、預ける人がわかっている以上やったらすぐバレるから少ないのかな。
ちなみに、路上に落とした財布を拾って、その中のICカードを使って電車に乗ったりすると「占有離脱物横領」というまた別の罪になります。

今回の罪は、勤め先から店の公共料金の支払い用として41万円を預かっていたものの、自身の株式投資や生活費に使ってしまったという内容。バレると思ってか、犯行後2年10ヶ月もの間、逃走していたようです。

判決
主文 懲役1年6月 未決勾留日数中10日間算入 執行猶予4年保護観察付

被告人のお父さんが50万円を支払って示談していることや、被告人が逃走中の2年10ヶ月で全国の風俗店で働いていたことが、被害回復をするためと評価されたらしい。だったら逃げずに目の前で働けやと思うのですが…。

No.17 コンビニ店長の権限を誤った男

罪名 :電子計算機使用詐欺
被告人:20代の男性

被告人はコンビニの店長という立場を悪用して、電子マネーの所有権を不正に利用して50万円の不法な利益を得ました。犯行動機は店舗の使い込みをごまかすためであったとのこと。
これ聞いて、まず思うのが、コンビニの店長だったら電子マネーをちょろまかすことってできるの?ってこと。自分は電子マネーを操作する側に立った経験がないのでわからないんですが、確かにあの手の決済って、お金の流れがちょっとわかりにくいので、悪どい人はなんか思いついちゃうのかもしれませんね。
とは言え発覚していますので、さらに上の管理する人には丸わかりだったのかもしれませんね。店の使い込みをごまかすために、さらに別の物に手をつけるという泥沼具合がなんとも裁判っぽいです。

判決
主文 懲役2年 執行猶予3年

返済の意思を見せているということで、執行猶予は3年とやや短め。
今年は山口県阿武町の件で話題となった電子計算機使用詐欺罪。人でなく機械を騙す行為なので、なかなかテクニカルな犯罪態様に出会うこともあるので、開廷表に記載があると、ついつい気になってしまったりします。

No.18 一発アウトな男

罪名 :詐欺
被告人:40代の男性

被告人は生活保護を受給していたものの、4年間で555万円の収入があったことを隠していた。そのため、396万円の生活保護費に関しては不正受給とされたという事件。
私もフリーランスとなり、まだまだわからないことだらけですが、収入や税金について勉強することとなり、この手の事件はつい気になってしまいます。自分くらいの額なら気付かれることはないだろうと、やってしまうんでしょうね。
フリーランスに向けた変なセミナーとか行くと、割とグレーなこと言う奴らもいるんで、こういう風にちゃんと裁かれるぞというのは発信せねばと思っています。

判決
主文 懲役2年6月 未決勾留中40日算入

前科はなかったですが、一発実刑でした。かなり長期間に及んだ犯行でしたからね、悪質性も相当と判断されたのだと思います。
こういうのってどうやってバレるんでしょうね。また、被告人はバレなかったらずっと続けていたのでしょうか。もうすぐ確定申告の季節がやってきますが、今年はあまり職員さんの手を煩わせないようにして、少しでも不正に目が行き届くようになって欲しいと願ったりするものです。

No.19 何言っても「なら警察行けよ」に勝てない男

罪名 :詐欺、詐欺未遂
被告人:30代の男性

被告人は親族になりすまして至急現金が必要であるとして、電話でそれぞれ76歳の被害者2名に対して、200万円、1,000万円を用意するように伝え、路上にて上司になりすました被告人に現金を受け渡させたというもの。3件目には嘘を見破られ、待ち伏せしていた警察に捕まりました。
オレオレ詐欺の一種と言うべきなのか、最近は振込をさせるとそのための口座が必要であったり、ATMに注意喚起が流れるからか、直接手渡しさせる事案が増えている気がします。
それにしても1,000万円を現金で用意できるなんてすごいです。被告人は受け取ったときに、その重みをどう感じたのか、今一度思い出して欲しいものです。

判決
主文 懲役3年6月 未決勾留数110日算入

まぁ当然実刑ですよね。
被告人自身は組織の末端で、かつ個人情報を組織に握られ断ることができなかったという一定の事情は考慮されつつも、犯行に必須の立場である点や、そもそも自分で裏バイトを検索している点、警察に相談すればよかった点などから責任は非常に大きいと認定されました。

被告人が悪いのは当然なのですが、この手の犯罪はその首謀者がなかなか捕まらないんですよね。なので末端が入れ替わるだけで、なかなか被害は減らないのが現状かなと。
で、あるならば、こういった犯罪があるということを少しでも周知して、被害に遭わない知恵作りをしていく必要があると思うんです。

そんな訳で、今月の判決特集でした。
今回の記事の内容は動画にもしていますので、こちらも併せてご覧ください。


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