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第4回寄稿 あくびがうつる「膨らんだ夢の萎ませ方」 

見本市2024「しばいぞめ」では、活動最初期にあたる9団体を選出し、ショーケース型の公演を行います。

【公演詳細】
見本市2024「しばいぞめ」
2024年1月5日(木)ー9日(日)@王子小劇場

インタビュー企画に続いて"団体からの寄稿"を集めました!
公演に先駆けて、団体さんの個性を知っていただく機会になれば嬉しいです。
第1回目の寄稿は”あくびがうつる”の森田諒一さんからお寄せいただきました。

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あくびがうつるは、見本市2024では『シアターで夕食を』という作品を上演します。食に関する演劇です。よろしくお願いいたします。今回は、あくびがうつるを代表して、森田諒一が寄稿いたします。「しばいぞめ」というテーマについてです。「しばいぞめ」は芝居を始める、ということと、演劇を始める、ということがあります。その二つを区別しています。それに関することを書きます。

1「演劇をはじめる」

芝居を始める、ということがどういうことなのか、考えるととても難しい、という感じがします。たぶん幼稚園のおままごとが、うまれてはじめての芝居、なのでは?当時のぼくは主に飼い犬という役を与えられ、家族のなかまにうまく受け入れてもらえませんでした。なかなか他人に馴染めない、うまく話せない、友達になれない、そういう思いを抱えていました。それはぼくの幼少期を常に貫く感覚でした。芝居というのはともかく難しい、「あの子のようになりたい」と思っても、それはぜんぜん不可能なのでした。こちらの芝居はぼくはすぐに諦め、とりあえず素直に活きていこうと思うようになりました。
演劇を始めたのは、高校生のころです。演劇部に入学して、はじめて舞台に立ちました。部活の先輩が書いた創作戯曲で、ぼくはとあるホームレスのグループの長(おさ)という役を演じたのだと思います。もう10年以上前です。演劇をするのは楽しかったし、演劇の稽古というのが面白かった。いまでもそうですが、演劇を目的に集まればそれなりに話せる気がする。なかなか他人とうまく話せないという感覚も、練習の中では消えていきます。実生活では友達にはなれないけれど、舞台上では家族であったりするわけです。変だな、と思いました。
芝居、というのが、なにかに馴染んでいったり、あの子のようになりたいと思うことなら、しばいぞめしてすぐにおわらせました。一方で、演劇をはじめたあと、終わらせる道筋はあまり見えていません。

 (演劇をするというのは、恵まれた、贅沢な営みです。ぼくは、ずっと、演劇に関わらずに生活しているひとは、とても偉いし、頭が上がらないと思う。どこかで、やりたい、という気持ちだけでは続けられなくなるだろう、という恐怖が常にあります。)

2「演劇を続けていく」

あくびがうつるは、いつから始まったのか、ということを書きます。これは明確にぼくが始めた演劇のひとつです。大学のサークルでも演劇をやりました。演劇をやめたくなくて、大学を卒業したあと劇場創造アカデミーという演劇の学校に通いました。2年間の勉強期間で、一緒にやりたいと思ったメンバーに、卒業したら演劇チームを作ろうと相談しました。それがあくびがうつるの始まりです。あくびがうつるは、これからどんな演劇をはじめられるのか、ちょっとまだよくわからない。これからもっとみんなで話し合っていかないといけないので、未来は本当に見えない。2023年の3月に集まって、それから大小の演劇を3つほどやりました。それはちゃんと始まったものです。それぞれ一応終わっているはずで、でも再演はしたいから、まだ続いているといえば続いているかもしれない。

演劇なんてひどいものだ、演劇なんてくだらないものだ、演劇なんてやってる人間はみんなだめなのだ、と言われるのは、わかります。ぼくは、演劇のハラスメントが嫌いです。あくびがうつるでも、他の現場でも、加害者にも、被害者にもなりたくないと思っています。だから本当は、演劇なんてやるべきではない、というのはわかります。ハラスメントを起こしたくないのならば、演劇はやめるべきだ。劇団なんてやるんじゃない。そういうこともわかります。でも、想像するのは、ぼくは演劇がなかったら生きていけるのだろうか、純粋な観客としてそこに参加するだけで、満足できるのだろうか、ということです。あくびがうつるというチームの仲間と出会えたこと、演劇を続ける意思を持てたことが、救いでした。

3「演劇を終わらせる」

ぼくにとって、演劇というのは、どちらかというと、生きていくために必要不可欠なことです。演劇の末端で、なにか小さい演劇をつくり続けていきたい。それは、とても贅沢で、恥ずかしい願望です。はじめることはできるけれど、終わることは難しい。いい感じで終わる、というのは、これからの演劇の課題なのではないか、と思います。ぼくたちが、もう終わらせよう、と言うのは、いつになるのでしょう。
あくびがうつるは、10年はやりたい。膨らんでいく夢はたくさんあるけれど、膨らんでばかりでは破裂する。どこかで抜かないと、いけない。どう抜くか?けれど、完全に萎んでしまっては困る。破裂しない程度に萎ませて、またふくらませる。それが続けるということなのではないか?こうしたことを考えないといけないと思っています。膨らんだ夢を、ドカンと破裂させる必要はまったくないのです。あくびがうつるくらいの距離感でなるべく安心できるようにしたい。よく終わらせるための一歩目として、常にこれからの演劇をはじめられたら良いと思います。

稽古の様子
稽古の様子

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「シアターで夕食を」フライヤー

◎作品情報◎
あくびがうつる「シアターで夕食を」

~あらすじ~
「食」をテーマにした作品です。この劇は、30分を通して「料理」になっています。買い物にいき、食品を調理し、みんなでご飯を食べるまでの演劇です。俳優が三人登場し、最終的には舞台に投影される映像も含めて五人でご飯を食べられないだろうか、と思っています。ご飯を食べること、誰かと一緒にいること、を考えていきます。

~演出~
あくびがうつる

~出演者~
清水詩央璃、三谷亮太郎、薄田澄子

~参加チーム・タイムテーブル~
Cチーム
(渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない、山口綾子のいる砦と同時上演)

2024年1月
6日(土)11:30(C)
7日(日)15:30(C)
8日(月)19:00(C)
9日(火)17:00(C)
受付開始・開場は開演の30分前。
上演時間は約100分予定(1団体につき約30分の上演)。

〜ご予約(あくびがうつる扱い)〜
https://shibai-engine.net/prism/pc/webform.php?o=v64psal9

※次回は明日、演劇ユニットタイダンさんからの寄稿です。次回もまたお会いしましょう!


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