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3月29日 さかさまのシナリオフック

今日は『日本現代怪異辞典』から「与田惣(よだそう)」を紹介する。

愛知県のとある小学校に現れる怪異。白いマスクに野球帽を被ったおじさんという姿をしており、放課後に一人残っている児童の肩を叩き、児童が振り向くと「俺は与田惣だ!さかさまだ!」と怒鳴って鎌を振り上げ、児童を連れ去ってしまうという。これを回避するためにはなまえの「よだそう」を逆さまに読み、正体を暴くしかない。

『日本現代怪異辞典』

導入

オカルト掲示板にこのような投稿があった。
「然山(しかやま)に現れるという怪物の噂を突き止めるミステリーツアーを開催。同士よ、集まれ。日時は△月✕日、場所は○○駅」
投稿と一緒に謎の生物が写っている1枚の写真が貼られている。
事前に「然山」を調べても怪奇現象の1つもヒットしない、ただ田舎にある何の変哲も無い山だ。
暇と好奇心を持て余した探索者は、遊び半分で指定された場所へ足を運ぶ。
そこには投稿者を語る覆面を被った男性と、虫かごを持った陰気な小学生、気さくに話しかけてくるゴスロリ服の女性が待っていた。
「与田惣様を探しに行こう」
男はマスク越しでもわかるほどニタニタとした含み笑いを浮かべながら音頭をとった。

探索

与田惣様について男に聞くと、この周辺の村で畏怖されている神様らしい。与田惣様は深緑の中でじっとこちらを見つめており、普通の人間では感知出来ないようだ。なぜ村人から恐怖の対象になっているかは分からない。
この神に面するためには特殊な条件を揃える必要があるが、その手がかりが山奥の祠にあるとされている。
小学生は何を話しかけても全く応答せず、手に持った空の虫かごを見つめている。ゴスロリ女は参加理由をはぐらかす。
山を登っていくにつれて、厚い雲が空を覆い灰色になっていく。
祠につくと探索者は違和感を感じる。妙に新しい。古い本が1冊石の下に置かれていた。与田惣様の祟りと鎮めるための生贄など、おどろおどろしい村の歴史が記載されている。

話の展開

大雨に降られ、帰りの電車が運休になったため、この村に宿泊することになる。村人からも与田惣様の祟りの話や、近々鎮めの儀式が執り行われる事を聞いた。なぜかと言えば、ここ数日村人の変死体が山から発見され、祟りだと大騒ぎになっている。
探索者の身にも不思議な現象が起き続けて、この土地は本当に神様が宿っているのではないかと感じるだろう。
そんな中、村で新たな死体が発見される。村人や覆面男が異様なほど動揺している。山からは地鳴りが響き、村人が痛ましいほど泣き叫びながら山に向かって土下座をし始める。
「本当になってしまった。与田惣様は本当にいたんだ。」
どんどん狂っていく村人と、村を包む不快な空気感から逃げるために探索者はこの村と与田惣様の真実を知らなければ成らない。

真相

探索者の調査結果によると、実はこの村で起きた変死事件は超常現象ではなく、殺人であった。過去からの血塗られた犯罪歴史を隠すために、然山(しかやま)の与田惣様という架空の存在をでっち上げた。
覆面の男はこの村出身であり、オカルト掲示板に投稿し興味を持った外部の人間を招待して、村人によって仕込まれた怪奇現象を経験させることで、与田惣様の噂を本物にしようとしている。
虚構の存在だったはずの与田惣様に目をつけた神話生物が、この神を利用し、人間を陥れようとしている。
探索者は、与田惣様が虚構だという真実を暴き、生き延びられるのか。

シナリオフックのポイント

人間が不都合な真実を隠すために作り出した虚構の存在に、神話生物が目をつけて実物になってしまうという、昔ながらの怪談っぽさを演出し、探索者には探偵のようにその過程と真実を暴いてもらいたい。
登場するNPCは謎解きのヒントになるような性質にすると良いかもしれない。実はこの村人に殺された人間の弟など。

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