Ojisango!

少しずつ投稿していきたいと思います。よろしくお願いします。

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最近の記事

言うべき答えを間違える私

「明日、島田さんを誘って学校へ来てくれないかな」 二年生の二学期が始まって間もなく、担任の石橋先生は下校前の私を呼び止めてそう言った。 「島田さん、最近よく休んでるでしょ。病気ってわけじゃないんだけど、朝起きれないらしいの」 先生は、ちょっと困った顔で事情を説明する。 島田さんは一学期の途中に転校してきた。クラスに仲のいい友達はまだいないらしく、休み時間には一人でぼんやり窓の外を眺めている。 「お家の人には、八時に行くって電話しとくからね」 石橋先生はそう言い残し、教室をあと

    • 言いたいことが言えない私

      私が通っていた小学校では、週に一時間だけ、五・六年生を対象にした部活動があった。 参加する部を決める五年生最初の学級会で、私は迷わず人気のソフトボール部に手を挙げた。ソフトボールが好きだったし、得意でもあったのだ。だが各部には定員があり、ジャンケンで負け続けた私は、クラスに入部希望者が一人もいない演劇部に入ることになった。 二十名弱いる演劇部員のなかで、男子は私と同じ学年の中村君だけ。 ずっと違うクラスなので、中村君と話したことは無い。 「中村君はどうして演劇部に入った

      • パンダには敵わない

        シャク、シャク、シャク、シャク……。 静寂に包まれた動物園に、目の前のジャイアントパンダがニンジンを咀嚼する音だけが響く。 木に背中をもたせかけ、白い息を吐きながら、七本の指でわしづかみにしたニンジンを一心不乱に食べている。 咀嚼音の合間に、ハッ、ハッと息遣いが聞こえる。 広い園内にはいま、私と彼しかいない。 私たちは柵を挟んで、約二メートルの至近距離で対峙している。 一本目を食べ終わると、かたわらに置かれたニンジンが盛られたバケツから次の一本をつかみ出し、また食べ始める。

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