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【書評】浦出善文『英語屋さん――ソニー創業者・井深大に仕えた四年半』(集英社新書、二〇〇〇)
浦出善文『英語屋さん――ソニー創業者・井深大に仕えた四年半』(集英社新書、二〇〇〇)は、早稲田大学政治経済学部出身の著者が、ソニー株式会社入社二年目の一九八六年六月に本社の人事部長に引き抜かれる形でソニー創業者にして当時は取締役名誉会長であった井深大の「英語屋」(通訳兼カバン持ち)を任ぜられた際の経験をつづった一冊です。
著者は入社初年に会社の負担でサイマルアカデミーの夜間の通訳養成コース(普通
【書評】渡邉大輔、相澤真一、森直人、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター編『総中流の始まり 団地と生活時間の戦後史』(青弓社、二〇一九)
渡邉大輔、相澤真一、森直人、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター編『総中流の始まり 団地と生活時間の戦後史』(青弓社、二〇一九)は一九六五年に神奈川県の六つの団地を対象として行われた統計「団地居住者生活実態調査」のデータを分析する一書です。一九七〇年代からしばしば言われるようになる「総中流」の生活様式が萌芽した時代において、団地という空間で人々がどのような時間を生きたの
もっとみる国語で習った三浦哲郎「盆土産」を十数年ぶりに再読して、あの頃見落としていた描写に気づいた話
三浦哲郎「盆土産」について書いてみようと思う。中学校の国語で読んで以来それきりの人たちのために。
(0)ことの発端中学二年生の家庭教師をやっている大学生と話していたら、いま国語で三浦哲郎の「盆土産」をやっていると聞いた。私が中学生だった時分も習ったので現代小説ながらもいわゆる定番教材となっているのだろう。なにせまだ当時は書いた本人が生きていた。うっかりしていたが中学を出てからもう十年が過ぎている
古本で買った源氏鶏太の前の持ち主の行動を考える日常系ミステリ(大噓)
源氏鶏太を読む面白さ、というのは改めてどこかに書いてみたいと思っているが、それとは別に、源氏鶏太を買う面白さ、というものがある。そもそも源氏鶏太に関心を持っている人などほとんどいないらしい昨今、そんな面白さを説いたところでどうしようもないのだが、面白いのだから仕方がない。せめていわゆる「日常の謎」のテイストで紹介して、『氷菓』の折木奉太郎くんに憧れている層の需要を惹起できればと思うが、それにしたっ
もっとみるQuizKnockが着火した空前の角田浩々歌客ブーム(?)にテンション爆上がりした件
QuizKnockのYouTubeチャンネルが昨日(二〇二〇・七・二六)公開した「【あたまいい】インテリ東大ワード流行らせ選手権」を見ていたら、角田浩々歌客の名前が出てきて椅子から転げ落ちました。
(一)概要QuizKnockというのは同名のWebメディアを運営するクイズプレイヤーたちからなるYouTuberです。彼らは動画の中でなぜかしばしば探検家の白瀬矗をいじっており、ここ数年、視聴者たちの
【昭和4年】エッケナー博士の話聴かんとてラヂオ屋の前にわれも立ちたり/加藤雪畝
エッケナー博士の話聴かんとてラヂオ屋の前にわれも立ちたり
加藤雪畝「報知新聞」昭和4年9月21日
『昭和萬葉集』第一巻(昭和55年)所収の一首です。加藤雪畝という作者の情報は現在全く確認できません。新聞歌壇に投稿するのを旨とした人物だったのではないでしょうか。
掲出歌、「エッケナー博士」とは、ドイツの航空技術者ヒューゴー・エッケナー(Eckener, Hugo、1868.8.10~1954.8
【昭和3年】聡明に、全体があかるくなつて来た、銀座を歩く女の姿。/花岡謙二
聡明に、全体があかるくなつて来た、銀座を歩く女の姿。
花岡謙二(明治20年-昭和43年)『歪められた顔』(昭和3年)
『昭和萬葉集』第一巻(昭和55年)所収の一首です。「モダン・ニッポン」の節に収められています。同書に載る原田勝正氏の解説によると、〈近代化の一つの到達点〉となったこの時期、〈関東大震災以後の都市近代化、女性の職業進出〉にともなって、〈明治の「ハイカラ」がすたれ、「モダン」「スマー
【書評】福間良明『「勤労青年」の教養文化史』(岩波新書、2020)
福間良明『「勤労青年」の教養文化史』(岩波新書、二〇二〇)は、立命館大学産業社会学部教授で歴史社会学・メディア史を専攻する著者の新著です。氏は先に『「働く青年」と教養の戦後史―「人生雑誌」と読者のゆくえ』(筑摩選書、2017年)でサントリー学芸賞を受けています。表題にある「勤労青年」とは中卒の労働者の謂いです。本書は、主として敗戦から1960年代末において勤労青年たちに共有されていた教養主義を歴史
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