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2022年7月25日の乾杯

2022年7月25日の乾杯。猛暑の毎日にコロナが再び息を吹き返し、演劇の世界でもいくつかの公演が中止に追い込まれる中、それでも良き舞台はたくさん上演されていて。

そんな夏の夜に交わされた、DUL-COLORED POPやとうきょうにこにこちゃん、プリエールプロデュース、さらには昔の演劇やテレビドラマのことも織りまぜながらの、おじさんとおねえさんの駄弁です。


👨演劇のおじさんと

👩おねえさんです。

👨よろしくお願いいたします。

👩よろしくお願いします。

👨しかしまたコロナが凄いですね。

👩ああ、そうですね、なんか。すでに東京も3万人とかですか?

👨そうそう、全国だと17~8万人だとか言っているから。

👩やっぱり人がでかけるとそれに付随してというか、比例して増えますね。

👨うん、そんな中で昔と違うのは、たとえば飲食店に営業の制限とか掛けたりはしていないからね。

👩やっぱりもう限界なんですよ。おうちにいなさいというであれば、補償をくださいですよ・

👨うん、そうだね。

👩というか、外に出なくてもちゃんとお金がもらえて、そして家にいなさいということであれば、「はい」となるのだけれど

👨うふふふ

👩そうではないからしょうがない。

👨でもやっぱり演劇の公演でも中止になってしまったものが出ていてね。

👩ああ、やっぱりそうなのですか。私もそれは聞こうと思っていました。演劇関係はどうなのですかということを。

👨まず、私が観る予定だったもののなかではタカハ劇団が中止になりました。

👩あら、タカハさんが・・。なんてこと。

👨観たかったんだけれどね。やしゃごとのセット券を発売したりもしていて、作演や俳優の方もショックだろうし、制作的な後処理も大変だろうなぁって思う。

👩そうか、せっかく出来るような形になって、新しいやり方も確立してきたと思ったらこれですかっていう感じですよね。

👨そう。

👩あの,実際に中止になっているというのは、罹患者が増えてきているというのもあるのだろうけれど、内部で罹ってしまう人もいるからということなのですかね。

👨結局内部で罹ってしまった人がでると、関係区に相談して、対策をして、それでも更に罹患者がでるともう中止になってしまうっていう感じだね。

👩ああ、まあそうでしょうね。

👨あの、前みたいに事前に世間や規則を忖度して中止にするということはもはやあまりない気がする。

👩まあそうですね。今できないから、今の状況を考えてやめますということにはならないでしょうしね。ならないし、できないし、それをやったら、もうやめるしかないし。劇団としては厳しいですよね。

👨そう。とはいえ、劇団もそんな感じではあっても中止二追い込まれるところは出ているし。歌舞伎も今月は一部中止になってしまったじゃない。

👩ええ、そうなんですか?

👨うん。

👩歌舞伎って。

👨七月大歌舞伎。

👩ええ、なくなったのですか?全部?

👨七月は観に行かないから私も正確なところはしらないのだけれど、なんか報道によると18日に第一部が中止になって、その後に全公演が中止になったらしいよ。

👩へぇ。

👨ひとりふたりではなく、主役の方を含め40人くらいの規模で患者が出たみたいなので。

👩うぅ。それはなぁ、それはもう無理ですよね。歌舞伎だしねぇ。

👨いうても歌舞伎なのでね。まして主役クラスの方が罹患するとね・

👩うん。

👨あと今日下北沢に芝居を観にいったら、ほら、劇小劇場の前に本多系の劇場のポスターが掲示されているじゃない。

👩ああ、ありますね。

👨あそこの燐光群のポスターにも一部公演中止のご案内が貼ってあった。

👩あららら。

👨初日から25日の公演までが中止になったみたいですけれどね。その後がどうなったかは知らないけれど。

👩はい。

👨まあ、状況は一時より厳しくなってきているかなぁって。もちろん、公演を行うことができている団体もたくさんあるのですけれどね。

👩そうですね。まあ、今はどの公演も中止みたいな、一番コロナの影響が凄かったときとはまた違うから。あの時はやりかたがまだ確立されていなかったけれど、今は作り手の間でもある程度のノウハウが共有されていますものね。

👨そうそう、業界として蓄積されているから。加えて観客も含めて細心の注意を払っているから。それでも出てしまったら、それはもうしょうががないし。

👩うーん。でもなんかあれみたいですよ、私の知り合いの方が濃厚接触者になって、私は直接会っていないのですけれど、抗原検査をしたけれど陰性だったがでも熱は出るみたいなことになって。で、PCR検査を受けたいのだけれど、今ってこんな風に増えているから全然予約がとれないらしくって。検査とかで病院にいこうにも。

👨だって、いま病院では発熱で来た人に自分でやってねって抗原検査キットを配るような指示に変ってきているんでしょ。

👩そんなことになっているんですか?

👨しかも、抗原検査で陽性になってもそのまま病院で隔離っていうことじゃないんだって。

👩ええっ?どこへ行くんですか?

👨なんか、センターがあって、そこに抗原検査の結果を写真で送って陽性ですって申告したら、じゃあ自宅療養してくださいねってそのやりかたを教えてくれるんだって。

👩えぇぇ。もう即日病院やホテルに隔離ではないんですね。

👨症状があまりなければね。まあ、インフルエンザの時だって、別に罹ったら必ず入院と言うことはないわけじゃない。

👩うーん、そうですけれど。

👨だから、コロナもそういう風に変ってきているのかなぁと。

👩でもどうなんでしょう。さすがにね。インフルエンザもね、もちろん、命に拘わる病気ですけれど。そんな・・。

👨まあ、ある意味では、欧州や米国のように変ってきているということだとは思うんだけれどね。

👩うーん。

👨まあ、現状はそんな感じみたいですよ。

👩はぁ。

👨実は私、八月に歌舞伎を観に行く予定があってね。それがどうなるかが、今から心配でしょうがないんだけれど。

👩いやぁ、どうなるかわかりませんね、本当に。

👨うん。

👩歌舞伎だって、コロナの第一波のころはね、あのころの話を以前にしていたじゃないですか。

👨はいはい。

👩もう、せっかく出来るようになったのに。せっかく出来るようになったのにというか、こういう状況下でいろんな公演があったり、劇場ではなくても外にところにお出かけをしていらっしゃる方もとても多いと思うので、まあ罹患者が増えるというのは当然と言えば当然だとはおもうのですよ。さっきも言ったけれど、外に出ても凄く人がいるから、最近。

👨そうですね。でもそんな中でも劇場は開いているところがたんとあるので。ただ、歌舞伎はねぇ、やられる方にも観客にもご高齢の方がけっこう多いから。

👩ああ、そうですね。命の危険が・・。

👨そうそう。普通の公演より更に気を遣うのではと思う。でもそんななかでも私は気をつけながら劇場通いを続けていますけれどね。

👩うんうん。

👨そういえば、前に東京にこにこちゃんの話をしたのって覚えています?

シアター711

👩東京にこにこちゃん?えーと。どんな話だったっけ。

👨あの、以前東京にこにこちゃんという団体が、恋愛シミュレーションのビデオゲームの世界を舞台に持ち込んで、

👩ああ、はいはい。

👨赤猫座ちこさんがゲームのヒロインとしてめっちゃぞんざいに扱われていて思わず吹いてしまったとか、もうとにかくいろいろに面白くて2度観をしてしまったという団体なのだけれど。その次の舞台を今やっていて。

👩はい。

👨でも、今日までだったかな。それもすごく面白かったですよ。

👩へぇ。

👨もう、コロナを忘れて笑いました。

👩ああ、いいですね。そういうのは。

👨前回みたおもしろさが決してまぐれではないということがわかった。改めてだけど主宰の萩田頌豊与さんって才能があるよね。

👩それは前もおっしゃっていましたね。

👨笑いに対する引き出しをとてもたくさん持っているのだと思う、彼は。しかもその一つずつを雑にならず高い精度で引けるというか。

👩うん。

👨今回の舞台のベースにはロミオとジュリエットがあってね。二人は最後死んじゃうじゃないですか。

👩はいはい。

👨それが死なないで幸せになったらどうなるかという話なのだけど。

👩へえぇ。

👨『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!』というタイトルでね。昔々バルコニーでということで、あの時二人が手を繋げればという、二人がもし死ぬことなく幸せになればという話なのだけれどね。

👩オリジナルだと一回あれですよね、仮死状態になって、ロミオがえぇってなって・・・、この説明じゃシリアスなお話の説明なのにちょっと雑すぎまるけれど。

👨いえいえ、で、ジュリエットがかりそめの毒を飲んで仮死状態になっているのをロミオが事情を知らずに本当に死んだと思って自分も自殺してしまって。

👩いろいろとスレ違いがあるんですよね。目が覚めたジュリエットは仮死状態になった自分に絶望して毒をあおったロミオが死んでいるのを見つけて、彼女も短剣を旨に突き立てて自殺してしまうのですよね。その誤解がなくてということですか?

👨そもそも最初のシーンで、物わかりが悪いロミオに対してジュリエットが仮死薬を片手に計画を説明しようとするのだけれど、そこからもう面白くて。あげくの果てには役割分担を理解しないロミオが仮死薬をいっしょに飲もうとか言い出して。

👩ええ、なに、よくわからないなぁ。

👨まあ、シェークスピアの作った手順はそれなりに複雑じゃないですか。

👩まあ、そうですね。

👨それをロミオが良く理解できないというところからすでにもうギャグなんですよ。

👩うふふふ。

👨で、ふたりで仮死薬を飲もうとかパニクったロミオが言い出して、二人とも仮死状態になったら、そのまま埋められてしまうでしょみたいにジュリエットが半ギレになりながら諭して。

👩うふふふ。

👨で、場面が変ると、どこか和風な家庭劇みたいになってしまって。舞台には前後を隔てる白幕があって前後が隔てられていてスクリーンにもなっているのだけれど、その幕を上げたり下ろしたりしながらシーンを切り替えていくので、舞台に滞りがなくノンストップでシーンが続いていく。勢いが舞台にあって、しかもそのシーンのひとつずつがもれなく面白いというかハズレがないの。しかもシーン感の掛かりも幾重にも上手く作られていて。

👩・・・、ああ、ハズレがないって言ったのね。

👨そう。ああ、ちょっと滑舌が悪くてごめんなさい。

👩いいえ、全然大丈夫ですよ。

👨そうそう、冒頭の映像もタイトルやクレジットの映像が朝ドラのパロディになっているのだけれど、それもなにげに完成度が高くて。でね、、キャスティングもよくて、ジュリエットがナイロン100℃の木乃江祐希さんだし、そうすると、ジュリエットが良い妻というかおかあさんになったときにはこんな感じかなというのがちゃんと舞台上にあるのね。あと、ナカゴーの俳優もご出演なのですよ。

👩おおっ。

👨高畑遊さん。

👩はいはい。

👨ものすごくパワーのある女優さんで、彼女だからこそ醸せる強さとか色合いもあって。

👩そうですね。あの方は凄いなって。

👨で、あの方がナカゴーの語り口でパワーをしっかり持ったお芝居が、しっかりと作品になじむの。

👩へぇ。

👨作品が懐が彼女のお芝居を取り込んじゃうんですよ。かと思えば、やみ・あがりシアターの加藤睦月さんも出演されていたのですけれどね。彼女の繊細で硬質なお芝居も、全編方言を話させたりもしながら笑いの要素としてあざとさを感じさせること無く取り込むのね。

👩うーん、それは懐の大きい劇団というか団体さんですね。受け入れる懐がでかい。

👨やっぱり、さっきも言ったように彼の引き出しがそういう俳優達の個性を使いこなすくらいに多いし、その笑いを物語に編み上げるの作劇のセンスやフレキシビリティをしっかりと持っているのだと思うのね。

👩おいくつぐらいの方でしたっけ。

👨ああ、知らないんですけれど、多分30前くらいじゃないかなぁ。

👩ふーん。

👨今日も観た平日の昼の回も満席で。

👩満席ですか。満席だと観客はどのくらいなのですか?劇場はどこでしたっけ。

👨711。

👩711?ああ、シアター711。どのくらい入るのでしたっけ。

👨えーと、70~80は入るんじゃないかなぁ。そこが満席で、12月には駅前劇場進出みたいですよ。

👩あらあら。凄い、駅前。

👨最後の客出しの挨拶の時に、主宰の方が下北沢の劇場すごろくを歩んでいますみたいなことをお話しされていたし。

👩下北沢の劇場すごろく。もちろん段々劇場がおおきくなっていくっていうのを意識していらっしゃる方もたくさんいるのかもしれないけれど、なかなかそれを実現できる方って多くないから。凄い。

👨まあ、711からいきなり駅前劇場というのはそれなりにインパクトがあるし。

👩凄いですね。

👨でもね、ここはお客を取れるよ。駅前とかのもっと大きな箱でも、きっと。

👩どんどん大きくなりますね。今のうちに観ておかないと。

👨そう、だから次回公演はおねえさんにも是非観て頂きたいところなのですけれどね。

👩配信とかはやってらっしゃるのですか?

👨やっていなかったとおもう。というか、ちょっと配信とかはやりにくいのかも。けっこうきついところもある気がする。

👩ああ、そうなんですね。どのあたりが。

👨まあ、ちょっとばらまきにくいネタも稀にあったりするので。

👩どういうところがですか?

👨まあ、大丈夫なのかも知れないけれど、配信と言うことで作劇上いろんなことに気を遣うと、やっぱり生で観る面白さが丸まってしまうかもしれないし。

👩そういうことか、なるほど。

👨昔立川談志師匠の高座をテレビでやるときに、今ではなんということもない枕のふらを当時のTV局のかたがドキドキしながらみていたっていうのをどこかで読んだことがあるのだけれど、それとおんなじ感じかも。でも、そうやって配信を意識してつくったとしても、きっと面白いだろうなとは思うけれど、それは今の緻密な雑さに支えられたライブ感とはちがってくるのかなぁとも思う。

👩そうなったらそうなったで、それにあわせた作りにしていくのでしょうしね。まあ、今の劇場で観ることができるのは彼らと観客の今しかできないことかもしれないし。

👨地蔵中毒とかここの可笑しさはね、もしろん映像に乗せてもおもしろいかもしれないけれど、やっぱり生で観た方がいいとも思う。

👩地蔵中毒、そうですね。地蔵中毒さんはなんというか団体名を言っただけでわらってしまう。

👨主宰の大谷皿屋敷さんの才能にも、地蔵中毒の公演ではなかったのだけれど、このあいだコンプソンズの公演を観て改めて感嘆してね。なんだろ、彼らには中身は全然違っているのだけれど、同じような研がれ方の切れ味を感じたりもするのね。

👩へぇ。お互いがそれぞれの団体や活動をどこまで知っているのかはわからないですけれど

👨まあ、同じ業界だからね。

👩まったく知らないということはないのでしょうから、互いがどう思っているのかというのは聞いてみたい気もしますね。

👨うん、ちょっと興味があるよね。あとね、面白いというか興味を惹かれるものほかにも多く観ていて。そうそうDULL-COLORED POPの『岸田國士戦争劇集』もすごく良い舞台だった。

アトリエ春風舎

👩うん。

👨改めてだけれど谷賢一さんという人はものすごく端正に引き締まった舞台をつくるよね。

👩ああ、そうですね。昔から。頭が良い。

👨そう、頭が良いって言うか。

👩頭が良いんですよ。

👨うん。頭の良さに加えて演劇への探究心の深さや信念のようなものを感じる。で、今回はふたつのチームがそれぞれに同じ戯曲を演じたのだけれど、それぞれの端正さがあって、でもそこには端正につくられているからこそわかる違いのみたいはものもあって。

👩ふんふん。

👨白チームと紅チームなのだけれどね、白チームの方は俳優の力が緻密に作っていくことで醸される色への閉じ込められ感があるし、紅組の方は俳優の解像度という意味ではすこし落ちて感じられる部分もあるのだけれど、だからこその瑞々しさや生々しさがあるという。そんなふたつのバージョンを両方とも拝見したのだけれどね。

👩うん。

👨座組というか俳優に合わせて、それは優劣とかいうことではなくて、でもやっぱりそれぞれに表れてくるものの感覚が違っていて、それに抗うのではなくそれおぞれの良さを生かして違いを生かすみたいに舞台を作りわけることができるというのは。やっぱり谷さんの力なのだろうなぁと思いながらみていましたけれど。

👩映像には残していないのですか、その公演は。

👨配信はあったように思うけれど。

👩観たいなぁ、それは。

👨私は、岸田國士さんのお名前は知っていたし、上演されたものをいくつも観たけれど、

👩私もそうだなぁ。でも有名なものしか知らない。

👨私もそうで。『紙風船』とか『葉桜』とか『屋上庭園』とかね。あと『命を弄ぶ二人』なんかも何度か観たけれど。でも彼が時代や戦争と拘わってどんな作品を書いていたかというのはあまり知らなかったのね。『動員挿話』は昔別の団体で観たことはあるけれど、そのときはもっと滑稽な作品に思えたし。今回、それぞれの作品に紡がれた物語に留まらず、岸田國士と世情や演劇の戦争との関わりをバックグラウンドに置いて、そうやって時代の移ろいを描き出していくことも演劇にはできるのだなぁって観終わって思った。

👩あれかなぁ、『紙風船』というのは知っているじゃないですか。有名だから。

👨有名だしね。それこそ、二桁くらい観ていますからね、私は多分。うふふ、いろんなところでやっているから。

👩『紙風船』は私もやっていますね。

👨へぇ、ほんとに?

👩やっていますよ、でも外向けにやったということではなくて、お勉強の一環として。

👨あれは、心の機微や移ろいが細かく編まれている戯曲だから、俳優の方も演じるのが大変なのではないかと思うのですけれどね。

👩うん、大変。大変だけれど、大変だからこそ、やっぱり勉強になりますよね。

👨なるほどね。

👩いつだって思うのですけれど。今やれたらなって思うのですよね。あまりにもね、まあわかる方は若い頃からわかるのかも知れないけれど、私は理解することが、いろいろと理解するとことがとても遅いので。ああ、あの時言われていたのがそういうことだったのかと気づくのがだいぶ遅いのですよね。もうだから、全然その、同じ作品だったりとかでも。まあ当たり前だけれど公演は終わっているし、気づいたことを見せることもなくというか。別のところで生かせはしたと思いますけど。うーん、今やりたいと思います、『紙風船』は。

👨まあ、『紙風船』の解釈や演出もいろいろあるからね。前にも話したけれど、ナカゴーの鎌田さんが作ったように、舞台の中央に便座をおいて、妻がそこに手をつっこんで抜けなくなったという態で夫婦の機微を表していくというような『紙風船』もあるわけだしね。

👩うふふ、なんでもありだ。

👨でもね、ひとつには、ほんとうに若い頃のことには年齢をかさねないとわからないとかその姿が見えてこないこともあるんだよね。

👩うん、そうですね。

👨なんかこの間たまたま、いろんなものを整理していたら、そのなかに昔NHKの芸術劇場で放送した、西村雅彦さんと近藤芳正さんの『笑の大学』を録画したビデオテープがあって。

👩知っていますよ。というかあれじゃないですか。その、ビデオテープをDVDにする業者さんとかがあったらすぐに頼んで保存したほうが。

👨それはうちでもできるのだけれどね、

👩ああ、できるのですか。ではすぐしてください。テープが駄目にならないうちに。

👨うん、そうしたし。私にとっては貴重なものだし。

👩西村さんと近藤さんの『笑の大学』はめちゃめちゃ面白かったですよね。

👨まあ、そのあと役所広司さんと稲垣吾郎さんで映画にもなっていたりするのだけれど。

👩いや、あれは二人の舞台版が一番良かったと思いますよ。

👨うん、今は無き青山円形劇場での公演だったしね。

👩ああ、もうないんだよね、青山円形劇場。というか、青山円形劇場だったんですか、あれをやっていたの。

👨そう。

👩ああ、そうなんだ。『笑の大学』、映像でしか観ていないのだけれど。

👨うん、20世紀の舞台だしね。

👩20世紀の話・・・。それでも私は映像で観て、なんで観ることが出来たのかは覚えていないのですが、めちゃくちゃ面白いなぁと思いましたもの。西村さんが本当に、なんかおどけた役をやることが多いですけれど、ちょっと狂気めいたものももっていらっしゃるじゃないですか。やっぱ出せるから。

👨その、検閲する人の崩れ方ね。

👩うん。なんかこう、検閲官のめちゃくちゃ硬くて、それがその、なんていうのでしょう、崩れ方って言ってよいのかわからないけれど、泣いちゃう。あんなの泣いちゃう。

👨私ね、実はあのお芝居、青山円形劇場で生でも観ているんですよ。

👩生で観ているんですか、うらやましい。

👨あれを最初に観たとき、まあそれまでも東京サンシャインボーイズの舞台は何本もみていたのだけれど、三谷幸喜さんの。

👩もちろん、存じ上げております。

👨でも、あの舞台はまた一つ違った研がれ方だなぁという印象を持ったのを凄くよく覚えているの。まあ、演出は三谷さんじゃなかったしね。

👩うんうん。

👨いうても、もう30年近く前の舞台じゃない。

👩もうそんなになりますか。

👨でも、それが昨日のことのように思い出される。それだけ印象が強い舞台だったのだと思う。でも一方で、当時生で観たときには多分気がついていなかった面白さもたくさんあって。その中には、私があのあと腐るほどたくさんの舞台をみたことで気づけたこともあるような気もする。

👩いま、あれとかで観ることはできないのですかね。サブスクというか映像配信なんかで。とってもみたい。

👨うん、わからないけれど、あれだけの名作だからどこかで公開されているかも知れない。でもビデオにあの舞台の放送を取っていたのは我ながらでかしたとは思う。あとね、そのころのビデオを更に再生していくと『男女七人秋物語』の再放送なんかも入っていてね。

👩うん?それはわからない。

👨まあ、そうだろうね。あの、明石家さんまさんと大竹しのぶさんが、その共演がご縁で結婚したというテレビドラマがあるんですよ。

👩ふーん。

👨それはオリジナルが1986年から87年ぐらいに放送されたもので。凄いよぅ、まず携帯電話が全く出てこないの。

👩ああ、なるほど。

👨コミュニケーションは全部固定電話か公衆電話なの。

👩固定電話・・、もしもしなになにですが、なになにさんいますか・・。

👨そう、待ち合わせとかがあったときに、携帯で今どこどこにいるみたいな話ってあるじゃないですか。

👩ありますね。

👨それができないから、平気ですれ違うみたいなエピソードがいくらでも出てくるの。

👩そう考えると、そういう風に便利になった代償になんか日々の大変な中に生まれるドラマみたいなものを描けなくはなったのですね。出会えちゃいますものね。

👨そう。当時って実は大小いろんなことが今とは違っていて、たとえば缶ビールを飲むときのリングプルってあるじゃないですか。

👩あぁ、はいはい。

👨もう忘れてしまっているけれど、開けるときに今はブシュっと押し込んでいるけれど、当時はまだ引張って外していたんですよ。

👩うんうん。

👨あとね、みんなやたらと、ところ構わずタバコを吸うの。

👩なぜだ・。

👨当時はそれが当たり前だったんですよ。だからドラマの中での会話の間を作るのにも使われていた。

👩そうか、吸えるからか。

👨考えてみれば、オフィスにもパソコンなんてないからヤニを心配する必要はなかったし。でも観光バスとかタクシーなんかでも当たり前に自然に吸っているのは、知っていたはずなのにちょっと奇異にすら思えた。

👩バスとか、電車とか、タクシー・・。でも私は出身が田舎だったから、そういう時期が長かったんだとは思いますよ。

👨とはいっても、今ではあり得ない話じゃない。まあ、時代が全国的にそのころとはかわってしまったのだろうなぁっていうね。

👩でも、やさしい世界になったとは思います。やな人はぜったいいるじゃないですか。

👨うん、そうだね。

👩その人たちが逃げられない状態になっているのはおかしいから。

👨まあ、その世界があまりにも面白かったから、この間から1ヶ月間だけと思って、サブスクというかParaviに入って。で、Paraviだとそのドラマをぶっ続けで観ることが出来るんですよ。あと『パパはニュースキャスター』とかね。あれも私大好きだったから。

👩なるほど、それはよい宝物を発券されましたね。

👨ええ、ビデオの方はまだ何本もあったから、きっとまだいろいろ出てくるよ、きっと。

👩うふふ。

👨なんか、おじさんの回顧趣味かもしれないけれど、昔を懐かしむ面白さっていうのはあってね。そうそう、桑原裕子さんっていらっしゃるじゃないですか。KAKUTAの。

👩ああ、いらっしゃいますね。

👨彼女が脚本を書いて演出をした プリエールプロデュース『サンセットメン』というお芝居を観たのですけれど、これも面白かった。

東京芸術劇場シアターウエスト

👩いやぁ、良いものに出会えていますね。今のうちに観ておかないと感染が更に広がればまた、なかなか舞台ができなくなるかもしれませんからね。

👨そうそう。俳優さんもしっかりした方が多くて、デビット伊東さんとかモロ師岡さん、川野太郎さんなんかもご出演でね。細々とでもずっと続いていたキャバレーがいよいよ最後の日を迎えるので、昔そこでショーをしていた男性達がもう一度舞台に立つっていう話なんだけれどね。そういえば昔はキャバレーというものもあったなぁって。

👩ふーん、そういうことか。

👨その最後の一日を描いていくのだけれど、それをただ描いていくのではなく、なんどもなんども夢を繰り返す感じに時間をループさせながら、そのキャバレーの歴史や人間関係を描き出していくんですよ。ほんと桑原さんって、エピソードの繰り出し方や物語の紡ぎ方や時間の見せ方というのが上手い。

👩そうですね。

👨観ているうちにそのお店や登場人物達にまつわることが観る側の頭の中にどんどん入り込んででくるし、その描き方に俳優達の個性とか骨太さも取り込まれていて。その三人やほかのエピソードの人物も含めて舞台上でショーをやるのだけれど、もう客席は大盛り上がり。

👩うふふ、それはそう、それはそうだよ。そのシーンは最後の方ですか。

👨ラストのシーン。客席に自発的に手拍子が広がっていくの。

👩あの、キャバレーとかは今でもあっても良かったんじゃないかと思いますけれど。私は観たいんですけれどね。あって欲しい。

👨私が社会人になったというか会社にはいったころは、最盛期はとっくにすぎていたのだろうけれどキャバレーってまだあった。まだ入社したてのころ、先輩に無理矢理連れて行かれて、そこでの接待のしかたとか教えてもらいましたけれどね。

👩ふーん。もうさ、観光のものでいいから、私。

👨ああ、なんかキャバレーのショーだからこそのきらびやかさってありますよね。

👩あります、あります。なんかちょっと昭和の匂いのするような。

👨なんかちょっと安っぽいジンの匂いがするような。

👩あははは。ジンの匂いは確かにしそう。また、やってほしいなぁ、そういうショーは。あの、浅草に、キャバレーと言って良いのかはわからないけれど、なんかあるらしい。キャバレーのような営業をしているのかどうかはわからないですけれど。なんかそういう場所にいくだけでもね、ちょっと昭和な、古めいた、

👨レトロというのとはまた違うのだけれどね、昭和の豪華さみたいなものが。

👩はい。まあね、観ることができたらいいのだけれど。

👨まあ、キャバレーは今どうなっているかわからないけれど、そんなこんなで、コロナの中でも良いお芝居は目白押しで。

👩近くには何をご覧になるんですか?

👨もう9月の予定まで埋まり始めていて・・、色々観るんだけれど。

👩じゃあ、一番期待しているのはどこですか?

👨一番かぁ。8月だけでもたんとあって、芸劇の『気づかいルーシー』とかこまばアゴラ劇場でのトリコ・A『へそで、嗅ぐ』とか、シアターアルファでのアガリスクエンターティメント『SHINE SHOW』なんかもすごく楽しみだけれど、一番気になっているのはその先の肋骨蜜柑同好会『田瓶奇譚集』かなぁ。

👩ああ、いいですね。それはいつですか。それは私も観たいなあ。

👨えーと、9月16日から25日だね

👩もう予約はできるんですか?

👨もう始まっているよ。

👩じゃあ、私も調べて予約をしたいと思います。

👨2バージョンあるからね。AURYNとMrs.fictionsが奇チームで、たすいちと日本のラジオが譚チーム。肋骨蜜柑同好会は両方のチームに入っているみたいな。

👩どちらも観たいなぁ。田瓶市のお話はいいですよね。会場はどこですか。

👨駅前劇場だったとおもう。

👩うん。楽しみが増えました。まあ、今コロナが爆発的に増えてますけれど、中止にならないようにどうか気をつけて。

👨これはもう、お祈りをするしかないのですけれどね。でも、そんな中でもみんながひとつひとつ、そうやって公演を重ねていくということはとても素晴らしいことでね。

👩そうですね。

👨なにかあるかもって恐れてやらないというのはもうやめにしたいなって。まあ、やめにしたいって観客の立場で言うことではないのだけれど。

👩でも、多分、僧だと思いますよ、みんな。こんなに大変な中を生き抜いてきた団体のみなさまですから。

👨ほんと、生き抜いているというのはものすごく感じるけれど。

👩はい。

👨だから、観客としても、なんとかコロナに負けないように、細心の注意を払って観にいきたいとは思いますけれども。

👩私も観に行きたいと思います。肋骨蜜柑同好会を。

👨はい。さてと、まだいくつか観たお芝居のお話もあるのですが、今日はこのくらいにしましょうか。

👩そうですね。

👨それでは演劇のおじさんと

👩おねえさんでした。

👨コロナが早く収まりますように。

👩おやすみなさい。

東京芸術劇場シアターウエストロビー


(ご参考)

・東京にこにこちゃん
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!』
2022年7月21日~7月24日@シアター711
脚本・演出:萩田頌豊与
出演:インコさん(実弾生活)、尾形悟(マグネットホテル)、
加藤睦望(やみ・あがりシアター)、木乃江祐希(ナイロン100℃)、
澁川智代(右マパターン)、髙畑遊(ナカゴー)、
てっぺい右利き、細井じゅん(コンプソンズ)、
モリィ(NATUREDANGERGANG)、四柳智惟

・DULL-COLORED POP『岸田國士戦争劇集』
2022年7月5日~19日@アトリエ春風舎
作:岸田國士 作品:
構成・演出:谷賢一(DULL-COLORED POP)
出演:
紅チーム=阿久津京介、東谷英人(以上DULL-COLORED POP)
越前屋由隆、齊藤由佳、原田理央(柿喰う客)
ふじおあつや、松戸デイモン、渡辺菜花
白チーム=倉橋愛実(DULL-COLORED POP)、荒川大三朗、
石川湖太朗(サルメカンパニー)、石田迪子、伊藤麗
函波窓(ヒノカサの虜)、國崎史人、古河耕史
声の出演:石井泉、小野耀大、小幡貴史、
勝沼優、椎名一浩、田中リュウ、
服部大成、間瀬英正、溝渕俊介、
宮部大駿

・パルコプロデュース『笑の大学』
1996年10月25日~11月6日@青山円形劇場
作:三谷幸喜
演出:山田和也
出演:西村雅彦・近藤芳正

・TBS『男女七人秋物語』
1987年制作 全11話
脚本:鎌田敏夫
出演: 明石家さんま、大竹しのぶ、岩崎宏美、
山下真司、片岡鶴太郎、手塚理美、
岡安由美子、柳葉敏郎、麻生祐未、ほか

・プリエールプロデュース『サンセットメン』
2022年7月16日~7月24日@東京芸術劇場シアターウエスト
脚本・演出:桑原裕子(KAKUTA)
出演:山本芳樹(StudioLife)、モロ師岡、川野太郎、
デビット伊東、三津谷亮、松村泰一郎、
小飯塚貴世江(キヨエコーポレーション)、岩橋道子(ラッパ屋)
山野海(ふくふくや)、山口森広(ONEOR8)、吉田紗也美

(今後上演となる舞台―おすすめー)

・東京芸術劇場プロデュース『気づかいルーシー』
2022年08月04日 (木) ~08月14日 (日) 
※8月3日(水)プレビュー公演
@東京芸術劇場シアターイースト
原作:松尾スズキ
脚本・演出:ノゾエ征爾
出演:岸井ゆきの 栗原類 川上友里
山口航太 ノゾエ征爾 大鶴佐助 小野寺修
演奏:田中馨 森ゆに
(8月2日時点で8月7日までの公演中止が決まっています)

・トリコ・A『へそで・嗅ぐ』
2022年8月20日~8月23日@こまばアゴラ劇場
上演台本・演出:山口茜
ドラマトゥルク:ウォルフィー佐野
出演:豊島由香、福角幸子、高杉征司、
芦谷康介、達矢、佐々木ヤス子、
中筋和調、温井茜

・アガリスクエンターテイメント『SHINE SHOW』
2022年8月31日~9月4日@シアターアルファ東京
脚本・演出:冨坂友 ドラマターグ:中田顕史郎
出演:熊谷有芳、淺越岳人、前田友里子、
伊藤圭太、鹿島ゆきこ、榎並夕起、矢吹ジャンプ(ファルスシアター)、
(以上アガリスクエンターテイメント)、
古谷蓮(CRAPER)、鍛治本大樹(演劇集団キャラメルボックス)、
ハマカワフミエ 笹井雄吾(guizillen)、大和田あずさ、美里朝希、三原一太(はらぺこペンギン!)、平田純哉(MELT)、
斉藤コータ(コメディユニット磯川家)、山下雷舞、北川竜二、
中田顕史郎、
歌唱出演:伊藤靖浩


・肋骨蜜柑同好会『田瓶奇譚集』
2022年9月16日~25日@駅前劇場
参加団体:
**チーム「奇」
=AURYN『ゴーシュ』
脚本・演出:窪寺奈々瀬(AURYN)
出演:あおのゆきか アンディ本山 藤田雄気
三森みち
=Mrs.fictions『そして誰もいなくなるまで待って』
脚本・演出:中嶋康太(Mrs.fictions)
出演:岡野康弘(Mrs.fictions) 小見美幸(青年座映画放送)
高橋義和(FUKAIPRODUCE 羽衣) 髙畑遊(ナカゴー)
辻響平(かわいいコンビニ店員飯田さん)
=劇団肋骨蜜柑同好会『もっけの幸い』
脚本・演出:フジタタイセイ
出演:小島望、室田渓人、赤星雨(八角家/やさしい味わい)
兒林美沙紀(劇団砦)、佑木つぐみ(火遊び)、フジタタイセイ
**チーム「譚」
=たすいち『隣は猫をする人ぞ』
脚本・演出:目崎剛
出演:大森さつき、小太刀賢、中田暁良 ※Wキャスト(21~24日)
中村桃子、星澤美緒、細田こはる
目崎剛 ※Wキャスト(16~19日) (以上、たすいち)
波多野伶奈
=日本のラジオ『くるくるさん』
脚本・演出:屋代秀樹(日本のラジオ)
出演:安東信助(日本のラジオ) 館山サリ 永田佑衣
星秀美 沈ゆうこ(日本のラジオ) 屋代秀樹(日本のラジオ)
=肋骨蜜柑同好会『腸詰と極楽』
脚本:ホトンドケイ素
演出:フジタタイセイ
出演:藤本悠希 澤原剛生 村山新(しあわせ学級崩壊)


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