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2022年8月29日の乾杯

2022年8月29日の乾杯。暑い中にもどこか秋の気配を感じる毎日。東京のコロナは若干収まってきたみたい。そんな中、新たに様々に歩み始めた演劇のおはなしをおじさんとおねえさんで語り合います。

👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。よろしくお願いします。
👨よろしくお願いします。コロナがやっとちょっと収まってきたみたいで。
👩そうなんですかねぇ。なんかそういう感じはあまりないですけれど。
👨なんか地域によるみたいなんですよ。東京は、もう1日3万人ということはなくなってきたみたい。
👩うーん。
👨昨日だったかな、1日の感染者数が1万人を切ったという話もあって。
👩1万人を切ったと言っても1万人近くいるというのは凄いことだと思いますよ。
👨そう、まだまだ凄いことではあるのだけれどね。それでも一時の3分の1にはなったという話でもあるので。
👩いやぁ、でもね。
👨相変わらず注意は怠りませんけれどね。
👩うーん。
👨あと、だいぶ涼しくなりましたよね、ここ数日。
👩ああ、そうですね。
👨こう言う風にして季節がかわっていくのかなぁって。
👩いやぁ、ちょっと寒いですよ。
👨ええっ、寒くなってきましたか。
👩寒い。
👨私も外には出たのですが車で移動だったのでよくわからなくて。
👩寒かったですよ、今日は。
👨体が猛暑に慣れてしまっていますからねぇ。でも暑いよりは良いかとも思うのですが。
👩うーんでも、体調を崩しやすいですからね。みなさんにも気をつけていただきたいですけれどね。
👨それは確かにそうですね。
👩うん。
👨そんななか、ここのところ、ちょっと毛色のかわった舞台をいくつか観ておりまして。
👩へぇ。
👨うーん、毛色が変ったというとチョット違うというか語弊があるのだけれど、あの、キラリ☆ふじみってあるじゃないですか。
👩はいはい。
👨あそこって今、白神ももこさんが芸術監督をされているのね。あのダンスパフォーマンス的グループ、モモンガ・コンプレックス主宰の。
👩ああ、はいはい。
👨そのキラリふじみ芸術監督企画として彼女が総合演出をされた、『モガ惑星』という公演を観に行って。ほんと、ものすごくよかった。楽しくて貪り観た。

キラリ☆ふじみ

👩どんな公演だったのですか?
👨ほんとうにいろんなアーティストが招かれていて。たとえば音楽にしても。和太鼓、太棹三味線、笛の和楽器トリオが出てきたり、ストリングラフィというらしいのだけれど舞台に糸を張り巡らせて音を生む楽器があったり。それって私も初めて見たけれど。あとバリトンとソプラノの歌手の方とか、ハモニカ、フィドル、ギター、パーカッションのバンドとか。モモンガ・コンプレックスはもちろん、ダンサーや舞踏家の方、語り部の方がいらしたり、手話がはいったりもして。でもそうやって様々なパフォーマンスがあっても根幹の部分はこふく劇場という宮崎県主宰をされている永山智行さんのテキストや白神さんの演出がしっかりと束ねていて、いろんなことがてんこもりなんだけれどしっかりとまとまっているのですよ。
👩へぇ、どんなふうに。
👨天王星、木星、土星、海王星というふうにパートわけされていて、それぞれのテーマがあって、多彩な表現が舞台を満たしていく感じ。サブタイトル的なものが「宇宙は遠い記憶の音楽会」ってなっていてさらには「ドーシてもソラミミ編」というふうになっている。
👩ふーん、なんかいいタイトルですね。
👨その下にはさらには「ドーシてもソラミミ編」という実際に観ないと実感できないようなタイトルがついていたりもするのですけれど。
👩うふふ。
👨あの、白神ももこさんって、モモンガ・コンプレックスの公演にしてもそうなのだけれど、彼女の世界観みたいなものがあって。それが芸術監督という立場にたってものをつくるというか創作をリードしていくとものすごくひろがるんだよね。
👩うんうん。
👨今までにないものが生まれていて。で、しかも、キラリ☆ふじみって公共の劇場じゃないですか。そうすると、個人でやるのと比べるとお金の面でも場所の面でも制約が少なくのびのびと創作ができるような感じもして。
👩なるほどね。
👨で、なによりよいなぁと思ったのは、観に来ているのが多分尖った作品がお好きな観客ばかりでなく、近隣のかたとおぼしき方も多くしていて。客席がいい感じのあたたかさなの。 お客様も尖った感じ方ばっかりとかいう客席もあるじゃないですか。
👩うん。ありますね。
👨そうではなくて、いろんな方たちが観に来られて終演後にはおもしろかったねとか楽しかったねと言いながらにこにこと帰って行くという。
👩それはいいなぁ。
👨キラリ☆ふじみのような素晴らしい環境を背負って、そこに新たに斬新なコンテンツをつくっていけるというのは素晴らしいなぁとおもって。
👩そういうところにしか出来ないものってありますしね。
👨そうそう。間違いなくある。私も観ていて本当にたくさんもらったような気持ちになって楽しかったし。あの、観終わってただ研がれただけの舞台じゃなかったのですよね。ほくほくと作品に満たされた感じもして。
👩うふふ。
👨作品の中に手話が自然に織り込まれたり、いろんな専門性をもったアーティストが作品を一緒に紡いでいたりと、表現の間口がひろいというかダイバーシティな感覚もあって、やっぱり白神さんが作るものっていうのはそういう温度というかぬくもりを大切にしているなぁっていうのも凄く思いましたけれどね。
👩ああ、そうですね。白神さんにはそういう印象がありますね。
👨最後は白神さんが永山さんや作曲家の宮内康乃さんと舞台に出てきて、とても嬉しそうにステージの全員に拍手をしていたのも印象的だった。それは、バレエとかコンサートのやりかたを踏襲しているようでもあって。舞台の良さを観客も再度実感することができる。ほんと、こういう舞台に巡り会えると私はそれだけで幸せな気分になれます。
👩うふふ。良い舞台を観ることが出来てよかったですね。
👨うん。得がたい体験だった。そうそう、ちょっと話はちがうのだけれど得がたい体験と言えば・・。チェルフィッチュって言う団体があるじゃないですか。
👩ありますね。
👨そのチェルフィッチュが、王子小劇場で映像演劇といわれるものを上演したのですよ。


王子小劇場


👩へぇ。
👨本当に文字通り映像演劇でね。劇場の中にはいると2段で20人くらいの客席、前には縦長のスクリーンが真ん中に間をあけて2枚置かれていて、その後ろに舞台の空間があってね。
👩うん。
👨で、本当に映像で男女の会話とか仕草とかが、音を動かしたりしながら舞台にあるがごとくそのスクリーンに映し出されていくだけなのですよ。あとその後ろで時々音を奏でるもうひとりも映し出されたりしてね。で、その中でシチュエーションも語られる。ここは今はもう何も無い劇場ですよ、だけど、昨日はここには椅子や机や様々な大道具がならんでいたのですよって。そしてその大道具というのは彼らが暮らしていた場所とまったく同じに作られていたのですということで、そこから観る側の想像力が引き出され話が膨らんでいくのね。。
👩うんうん。
👨台詞とか身体での表現にはチェルフィッチュのメソッドが取り入れられて物語が進んでいくわけですよ。でね、最初のうちはなんじゃこれはと思いながら観ていたのだけれど、確かに映像の中に人がいてロールを演じていると、観る側にはそこに生まれるもの渡されるじゃない。
👩うん。
👨実際に彼らの過去の記憶、それが昨日まではあったという、いわばそこにあったことの記憶を反芻する昨日のことを語るという態の演劇が観る側のうちに広がっていくように思えてきて、そうすると劇場に空間が存在しているということが語るものがあって、それもものすごくリアルなのね。
👩うーん、なるほど。
👨タイトルは『ニュー・イリュージョン』とつけられているのだけれど、それは観る側の映像を観ての創造力だけなのですよ、そこにあるものは。だけど、映像があってそそういう定義をされて、そこに実際の人もなにも実存しないということでしっかりとした輪郭をもって浮かび上がってくるものがあるの。
👩うん。
👨まあ、演劇というものは、ものすごく具象のものから際だって抽象的なものまであるけれど、それぞれにどこかにイリュージョンというものはあるわけじゃない。空想というか観る側の想像というものがないと演劇はとてもうすっぺらいものなわけで。
👩そうですね。それはよい見方ですね。そうかも。
👨それが、ある意味極限まで詰められるというか磨かれるとああいう風になるのだなというか。
👩あぁ、うん。
👨あと、もうひとつ興味深かったのは、いうてもそれは映像だから、冷静に考えると生身の俳優での演劇に比べて再現性というのはあるわけじゃない。一日5回や6回の興業をやっても俳優が疲れるわけでも作品が劣化するわけでもないし、逆に舞台のクオリティがあがるわけでもないわけで、でも同じことを普通の俳優でやったらその再現性というかクオリティは当然にブレてくるわけじゃないですか。
👩はい。
👨それは、観ている途中から、あるいは観終わった段階でなんとなくは気づいているわけで。一方で演劇には一期一会みたいな感覚って観る側の無意識に自然と生まれるじゃないですか。同じ演目であっても、その回の舞台がどうだったかということ揺らいで受け取るみたいな、その臨場感というか。
👩うんうん。
👨それが、映像演劇だと妙に欠落しているのよ。その感覚というのは演じる側だけではなく観る側にも訪れる要因があるものだとは思うのだけれど。今回の作品についても、もしろん失恋の一週間後に観るのと幸せな日々の中で観るのでは違った作品に感じられるとは思うのだけれど、でもそれを作品から受け取る際の呼吸のなさというか。その、なにかが妙にすっと欠落している不思議な後味が残る。ちゃんとそこに象は結ぶし受け取ったものはあるのだけれど、私が日々体験している演劇のよきにつけ悪しきにつけのあやふやさを持ったとは舞台とはちょっと違う。
👩ああ、なるほど。
👨なんというかそれは違和感でもあると同時に、そこに岡田利規さんの挑戦のさらなる領域があるかもしれないなぁと感じたりもしたのですけれどね。
👩いや、面白いなぁ、それは。
👨思えば私たちは劇場でなにを受け取っているのだろうかって、日頃客席に座る自分を見直す機会にもなった。
👩うんうん、なるほど。
👨観終わって暫く、手のひらにはなにも残っていないのだけれど、なにかが残っているような感覚もあって。
👩うん。
👨帰り道もほんとうにいろんなことを考えて、考えて飢えを感じて、なんかふらふらと銀だこでたこ焼きを買って帰りましたけれどね。
👩あははは。聞きながら、どんどんと、どうなのだろうなぁと考えてしまいましたけれど。
👨まあ、最後のたこ焼きの話は余計だったけど。
👩いや、別にいいですよ。たこ焼きのことまで追いかけて考えたわけではないので。
👨あの、観客と俳優のいる劇場では必ずお互いの思惑が交わる空間というのが生まれているじゃないですか。なんだろ、それとは違うものなのかもしれないけれど、でもこんかいの仕掛けのなかにもそれみたいなものはちゃんとあったぞみたいな。勝手に想像で言ってはいけないのだけれど、岡田さんは多分これで終わりにするつもりはたぶんないと思うので。
👩うふふふ。はい。
👨最近、こういう方向にチャレンジしていますみたいなことを書かれているのを見た記憶もあるので。
👩うんうん。
👨今回の作品の先が、今回映像の中に訪れたものが。どこに向かいどこに到達するのかというのはものすごく楽しみですよね。
👩ふふふ。
👨しかも、それがぽっとでた思いつきの果実ではなく、それを支える彼がチェルフィッチュで培ってきたメソッドというか身体から発する表現での語り口に裏打ちされたものだから、それは彼にとっての積み重ねの向こうにあるものだとも思うから。
👩はい。
👨こちらも気合いを入れて、軟らかく広く開いた感性を持って追いかけていきたいなぁと思いました。
👩うん。
👨なんかね、今年の夏は、チェルフィッチュに限らずなにか自分が演劇に触れてなにを観たり受け取ったりしているのかを考えさせてくれる舞台というのがいくつかあってね。
👩ほう。
👨あの、屋根裏ハイツという団体という団体があってね。
👩うん。
👨彼らが俳優達を集めてワークインプログレスみたいなことをやったのね。
👩うんうん。


STスポット


👨で、3日稽古して、最後の日にその成果発表会みたいなことを公開したのですよ。STスポットでね、予約だけさせて木戸銭は無料という形で。
👩ああ、なるほどね。
👨私はそんなに勉強熱心な観客ではないので、予備知識もあまりなしに足を運んで。松田正隆さんの『父の死と夜ノ森』の一部を試演するということであっても、事前にその戯曲を読むこともなく、ただ団体の方で閲覧できる環境を作っておいて頂いたので後で読んだりはしたのだけれど。
👩うん。
👨だから、シーンが何を意味しているかということを舞台以外から知る由もなく、その由来というか背景もわからず。でも、だからつまらなかったということは1mmもなくて。舞台には俳優たちがいて動きというか編み上げていくものはあるのね。
👩うふふふ。
👨動きがあって、そこから生まれるニュアンスがあって、 なにかが起こっているということはわかるのよ。しかも、良い俳優が集まっているので精度をもってそれを伝えてくれるのよ。だけど、そこからストーリーを拾う準備も力というのは私にはなかったのね。
👩うんうん。
👨ある空間で起こっていることを傍観者として観ているような感覚というか。だけど、その一方で何かが起こっていて何かをもらえているという曖昧な感覚に縛られてもいて、舞台から目が離せずずっとみていたのね。で、ふたつのシーンが上演されたのだけれど、ひとつのシーンはひとつのチームとして作り上げていていたのだけれど、もうひとつのシーンには同じものを二つのチームに分かれてそれぞれが作るという試みもされていて。
👩ふーん。
👨そうすると、人をかけることによってのシーンの解像度みたいなものを感じたり、同じシーンでもチームによって話す言語が違うようにかなり印象が違ったりもして。そうやっていろんなものを受け取っているうちに、演劇というか俳優たちが演じるものに対して観客が観ているものって何なのだろうって漠然と考えたりもするわけよ。
👩うん。
👨その企画自体は、もちろん俳優たちにとっての研究だったりもするのだろうけれど、一方で観る側の思索や鍛錬にもなっているようにも感じて。
👩うーん、そうね。
👨まあ、修行?
👩うふ。
👨そうして俳優たちと観客の間にできるものってなのなのだろうなぁって考えたりもして。それはチェルフィッチュに見せてもらったものもそうなのだけれど、なんかここのところ考える機会が多くて。
👩うふ。
👨まあ、楽しいのだけれどね。それは小説を読んだりとかでは描きえない、もちろん小説でなければ表現しえない世界もあるとおもうのだけれど、演劇という網目でなければ捕まええないなにかのようにもおもえるのね。映画にしたって、なんだろ、同じ映像であっても映像演劇とは本質的に違うものに思えるし。なんかね、そうやって考える機会が訪れるのは、さっきも言ったように、私にとっては今、演劇に観るということを考える修行の時期なのかなと思ったりもして。
👩へぇ。おじさんでもやっぱり修行は要るんですか。。
👨それは要りますよ。
👩たくさん観てきたけれど?
👨いやぁ、人生、生涯修行ですよ。
👩うふふふ。
👨あの瀬戸内寂聴先生だって悟るということはずっと考え続けることだともおっしゃっているわけで、ましてやそんな私如きの若輩者が悟っただとか極めたとかいう境地に至れるわけがないじゃないですか。
👩極めたなんて言っていないですよ。それは、おこがましいですよ。
👨はい、もちろん。そんなことを言えるわけは絶対にないし、一回一回、普通に演劇をみることだって毎回発見だしね。ほら、芸人さんがベテランであっても自分の出番がおわって「勉強させていただきました」とあいさつして劇場を出るっていう話があるじゃないですか。観客だっておなじなのだろうなとも思うし。それが楽しいし。
👩なるほどね、なるほど。
👨おねえさんは相変わらずお忙しいのですよね。
👩そうですね。まだ全然余裕がないですね。なかなか舞台も観ることができませんし。まあ、観ようとおもっているのはあるのですけれど。観ることが出来るかどうかわからないので観てからという感じはしますけれどね。
👨そうか・・・。じゃあ私の方からもう少し。最近とても心を惹かれた舞台としては、トリコ・Aという団体もあるのですよ。


こまばアゴラ劇場


👩トリコ・Aですか。
👨はい。なにかきっちりとはわかっていないのだけれど、同じ運営会社の中にサファリ・Pとトリコ・Aという名義があって、トリコ・Aは山口茜さんの戯曲を上演する団体ということらしい。サファリ・Pは今年『透き間』という作品を観ていて、身体で表現する部分の秀逸さをたくさんに感じたりもしたのだけれど。
👩はい。
👨そのトリコ・Aがこまばアゴラ劇場で『へそで・嗅ぐ』という舞台を上演したんですね。それはお寺の縁側と庭先が舞台になっていて、しっかりとせりふで紡がれるお芝居なのだけれど、そうであっても俳優たちが身体をしっかりと使って演じているという印象の強い作品でもあって。たとえば、立っているだけの場面でも俳優が身体でちゃんと存在感を作ってぼーっとしているみたいな印象が残るの。
👩うんうん。
👨たとえば、少ない言葉であっても、その中に人物が抱く緊張感とか弛緩が俳優たちの身体で細やかに伝わってくるのね。また、今回は障害を持たれている俳優の方もいらっしゃったのだけれど、彼女が表現しうる筋肉を凛として使われていて、だからこそ伝わるものがあって。物語もおもしろいし、どこか人生を俯瞰しているようなところもあって納得してしまったり、更には生きる膨らみみたいなものが観る側に残ったりもしてね、良いお芝居だなぁとおもった。
👩へぇ。
👨あの、今回そのサファリ・Pという劇団の佐々木ヤス子さんという俳優がご出演なのですよ。
👩うん。
👨旦那様はたしか壱劇屋の主宰さんだったとおもうのだけれど。京都で続いている『GEAR』という舞台をご存知ですか?
👩さあ。
👨多分もう10年くらい前から、京都三条のART COMPLEX 1928という劇場でロングランが続いている舞台というかパフォーマンスでね、ノンバーバルで1時間半くらいの凄くよく研がれたエンターテイメントなんですよ。5つのロール、えーとマイム、ジャグリング、マジック、ドール、それからブレイクダンスだったかな、ぞれぞれにスペシャリストの俳優さんが何人かいらっしゃってランダムに交代で出演されるのですけれど、何年か前にそれを私が京都にいってそれを観たときにたまたま彼女がドールをされている回で、当然にせりふはないのだけれどその身体の使い方や紡ぎ出すものの美しさに目を奪われて、キャスト表をみて彼女のお名前が記憶に残っていて。
👩はい。
👨でね、今年の3月にサファリ・Pの『透き間』という公演を東京芸術劇場で観たときに、彼女の身体から訪れる表現の確かさに圧倒されて、ググって記憶が繋がって「あぁ、あの時の」って思って。で、今回トリコ・Aにご出演の彼女を観たときに、また違った、会話劇での彼女の表現力にも驚いて。
👩へぇ。
👨セリフに絶妙な間があって、徒に尖らず、想いがわかりやすい圧をもってすっと入ってくる。また場で弛緩するときもテンションに支えられた身体のゆるやかさをもってしっかりと弛緩するのね。そうして受け取ったもので彼女の存在が舞台にあることや想いの出しいれが自然に観る側の意識に置かれるというか、ベーストーンのように観る側の意識に残るようなお芝居をされていたのですよ。そんななかで舞台のテーマを支え歩ませたりもする。
👩うんうん。
👨関西弁のコミカルな部分を持ったお芝居でもあったのだけれど、そこに芝居の緩慢さはなくて、とても高い解像度でのお芝居を観た感じがしてね、それは圧をもった強い表現で伝わってくるものとはまた違う良さというか完成度があって、ああ、面白いなぁと思った。そういう俳優さんの舞台を観ていると、セリフ以上のものがたくさん残るしね。
👩はい。
👨そういうものを観るとやっぱり楽しいなぁってほくほくする。
👩うふふふ。
👨そうやって振り返ってみると、コロナの大変な時に、なんか前回お話ししたときから良いものをたくさん観ることができているんですよ、私。
👩ふーん。
👨池袋ポップ劇場なんかもおもしろかった。観劇三昧が今人気の小劇場4団体を集めて20分くらいの短編を上演するという企画をやっていて。生の舞台を観ることもできるし、配信あって。


Mixalive TOKYO


👩ああ、そんなことをやっているんですか。
👨チケットもね、さすが観劇三昧で、観劇だけのチケットというのがなくて、というか観劇のチケットにはもれなく配信がついてくる。
👩うふふ。
👨もう何度も開催されているみたいなのですが、私が観た回は「エリア51」、「あサルとピストル」、「小松台東」、「しあわせ学級崩壊」の4団体でね、それぞれに個性があって。
👩ふんふん。
👨エリア51の『かつてのJ』はちょっと作意が拾い切れなかったのだけれど演者大奮闘の一人芝居でね。
👩うん。
👨「あサルとピストル」の『3人でもないし、姉妹でもない4人(仮)』はいろんなことにがっつりストレスをためてぶちまける女性3人が出てきて、それぞれの個性をもった強さがあるのだけれど、聴いているうちに気が付けば舞台にはチェーホフの3人姉妹が浮かんでくるというお芝居でね。
👩へぇ。
👨小松台東『ハンバーガー』は一人席で男がハンバーガーを食べているところに、それを挟むように同じ会社の3人連れが座って、男が次第に彼らの所業に居心地の悪さやフラストを感じていくという。短編であっても、小松台東ならではのストレスの積もり方があて、最後にそれがあふれ出す切っ先も見事でね。だんだん観る方もドキドキしてくるし、最後に一瞬聞こえたカッターナイフの刃をずらす音にもゾクっときたし。
👩うふふ
👨あと、しあわせ学級崩壊『この朝を墓標として』は、彼らが取り組んでいるEDM楽曲に台詞をのせるというメソッドの作品で、神楽坂のライブハウスでも観たのだけれど、その時と違うのは、前回の楽曲と台詞にさらに映像が重ねられていて、それは観る側に異なる感覚での時間のテイストを渡してくれるというか新たな風景に色が生まれるというか、その広がりに取り込まれてしまうのね。
👩うん。
👨それにしても、あのインパクトのあるルーティンにセリフが乗ったときの風景や感覚の膨らみってすごいよね。
👩うんうん。そうですね。稽古も大変だしね、ああいうのって。
👨ああ、そうかもしれない。それは俳優さんだからこそわかるのかもしれないけれど。
👩うん、パートごとに合わせなければいけないからね。
👨ああ、なるほど。
👩体に沁み込ませるまでやらないとなかなかできないだろうし。並みのことではない。
👨素人目にも思うのは、かんじゃったらたいへんだろうしねって。
👩そういうことではないんだよ。違う違う。
👨まあ、そうなのだろうけれど。でも、少なくとも私は先日観た幸せ学級崩壊の公演でかんだところって一度も観なかったんだよね。
👩まあ、噛んだらぶち壊しになってしまうところもありますからね。
👨そうだし、ただ噛まないということを超えて、リズムに導かれたり留まったりしながらスムーズに台詞がのっていくようなところにまでつくりこまれているのね。最初に噛まないのかなぁって観ていた不安がたちまちに霧散していくような感じってすごいなぁって思って。
👩うん。
👨しあわせ学級崩壊はこの夏に、リーディング短編集と称して、4編の近代文学作品を彼らのメソッドで読むという公演と、曲を4人の劇作家に提供して短編作品を書いてもらい上演するという公演をしていたのだけれど、秋にはその新作が出来てくるみたいですよ。シーズン2ということで。
👩いろんなことが、いろんな舞台が、いろんなものが動いているなぁという感じですね。
👨前回同様、おなじ作品をしあわせ学級崩壊の俳優さんが読む回と、客演の方が読む回もあって。たとえば劇団ホチキスの小玉久仁子さんが参戦されたりとかね。
👩へぇ。でもなんかね、本当に、ほんとうにちょっとまだ、まじでお芝居って考えれば考えるほど力が沸いていないというか。今はまだ受け取ることすらできない、それだけのパワーで観客に向けて、向かっていくものだから、受け取る側もそれだけのパワーがないと上手くいかないのだなぁと、観ることも難しいのだなぁとは思いますけれどね。
👨それは確かにそうですね。
👩知ってはいるけれどね。観たい、観たいと思いながら、ほんとう。。
👨でもやっぱり欲するということって大事ですよね。
👩うん、私は、今はもう少し時間がいるなぁっていう感じですけれど。日々面白いものがうまれているというのはやっぱり希望だなぁと思います。そんな感じかなぁ。
👨特にここ暫らくはコロナの中でも進化が目に付くというかいろんなものができてきているしね、たまたま私がたくさんにめぐりあっているだけかもしれないけれど。9月とか10月にはまた楽しみなお芝居がたくさんありますしね。
👩うん。
👨あの、中野茂樹+フランケンズってご存知ですか?
👩はい。
👨あそこが久しぶりに公演をやるみたいだし。久しぶりというか夏にも公演があったのですがそれを私ミスっているので。私が演劇をたくさんに観はじめたころに、演劇の新たな姿を教えてくれた団体でね。良い俳優もたくさんにいらっしゃって。それが自分たちのペースの中で新たに表現を進めていくみたいな感じがして、そういうところもとても魅力的な公演にも思えて。9月は二日間、10月にもあるとのこと。
👩へぇ。
👨あと、柴幸男さんの『あゆみ』っていう作品があるじゃないですか。あれも果報プロデュースが今旬の女優をあつめて、柴さんの演出で上演するみたいで。それもすごく楽しみ。作品自体はもう10年以上も前になるのだけれど、toiという団体がシアタートラムで2日間上演した『四色の色鉛筆があれば』という短編集の中で観たのが最初で、その時の衝撃が本当に大きくて。で、そのあと何度かいろんな団体でも上演も観て、そのたびに同じフォーマットのなかでいろんな人生の風景の色合いを感じることができるのが面白くて。だから今回もすごく楽しみ。
👩うん。
👨あとさっきもいったけれどしあわせ学級崩壊の『リーディング短編集 #2』もあるし、それからことり会議のアゴラでの公演もあって。あとこの間言った無名劇団に加えて関西からのことり会議はほんと楽しみ。
👩まあまあ、そんなに全部言わなくても。
👨いや、それだけわくわくしているっていうことよ。
👩はいはい。
👨ということで、そろそろ私が9月にどれだけときめいているかということをお話したところで終わりましょうか。
👩うふふふ。
👨なんかだらだらと、申し訳ありません。
👩いえいえ、ときめくことは大切なことなので。
👨ありがとうございます。ということで、コロナも少しおさまる気配はあるみたいだけれど、日々注意を怠らず、気持ちよく9月を過ごしたいですね。
👩そうですね。
👨それでは、演劇のおしさんと
👩おねえさんでした。
👨次回もお楽しみに。

キラリ☆ふじみ

(ご参考)

・モガ惑星 宇宙は遠い記憶のおんがくかい[ドーシてもソラミミ編]
2022年8月22日~23日@きらり☆ふじみ メインホール
【テキスト】
テキスト:永山智行
総合演出 :白神ももこ(キラリふじみ芸術監督)
作曲・出演:鈴木モモ<ストリングラフィ> 
服部美千代<語り部>
つむぎね(浦畠晶子、尾形直子、八幡麻美、横手ありさ)
-木星-
作曲:宮内康乃(つむぎね)
出演:神田さやか<ソプラノ> 佐藤季敦<バリトン> 八幡麻美<パーカッション>
-土星-
作曲・出演 :やまみちやえ<太棹三味線>
出演 :望月左太助<囃子> 迎田優香<笛> 
齊藤コン<ダンサー> 花上直人<舞踏家>
-天王星-
出演 :ハモニカクリームズ
(清野美土<ハモニカ>、大渕愛子<フィドル>、長尾晃司<ギター>、
渡辺庸介<パーカッション>)
モモンガ・コンプレックス
(加藤典子、北川結、仁科幸、塙睦美)

-海王星-
河合祐三子<サインポエム>
キラリ☆かげき団
(秋元節子、上杉尚子、小野田大介、雁谷みどり、清水理恵、橋本末子、細川紀子、古沢繁、山本はるみ、梁舜姫、横井潔)

・チェルフィッチュ『ニュー・イリュージョン』
2022年8月21日~28日@王子小劇場
作・演出 岡田利規
映像 山田晋平
出演 足立智充、椎橋綾那、 Jeong Jung-yeop

・屋根裏ハイツ 「戯曲を遊びたおす研究室」成果発表
2022年8月17日@STスポット
参加者(五十音順):
朝比奈竜生、大上久美子、加賀田玲、
小池舞、鈴木睦海、中野志保実、
新田佑梨、塗塀一海、南風盛もえ、
村岡佳奈

・トリコ・A『へそで、嗅ぐ』
2022年8月20日~23日@こまばアゴラ劇場
上演台本・演出 :山口茜
出演:山口茜、福角幸子、高杉征司、
芦谷康介、達矢、佐々木ヤス子、
中筋和調、温井茜

・『GEAR』
ギア専用劇場(ART COMPLEX 1928)にてロングラン上演中
詳細は
.https://www.gear.ac/
(URLの貼り付けに問題があるようでしたらお知らせください。)

・『池袋ポップアップ劇場 season2』Vol.7
2022年8月24日@Mixalive TOKYO HALL MIXA
参加団体:エリア51、あサルとピストル、小松台東、
しあわせ学級崩壊

(今後のおすすめ)
・しあわせ学級崩壊 『リーディング短編集 #2』
2022年㋈25日、10月2日、8日、9日、15日、22日
@神楽坂 神楽音
演目、出演者の詳細は下記URLを参照のこと
https://ha-ppy-cla-ss.net/stage/reading-02/
(URLの貼り付けに問題があるようでしたらお知らせください

・中野茂樹+フランケンズ 
ナカフラ2022(新作)『EP1(ゆめみたい)』
2022年9月11日、23日(金・祝)
@Sunlight Studio Shibuya
※ 10-11月も1-2回実施予定
原作:シェイクスピア『ハムレット』より(1幕5場まで)
作・演出:中野成樹
出演:
(日替わりで8名出演)
福田毅、竹田英司、田中佑弥、
洪雄大、野島真理、石橋志保、
小泉まき、斎藤淳子、北川麗、
佐々木愛、新藤みなみ
(9月度ゲスト)
端田 新菜(ままごと)[9/11 , 23]、
宮ヶ原 萌(譜面絵画)[9/11 , 23]、
森 唯人 [9/11]、
林 美月(演劇ユニットにもじ)[9/23]

・果報プロデュース『あゆみ』
2022年9月28 日 ~ 10月2日@すみだパークシアター倉
脚本・演出:柴幸男
出演:石森美咲(演劇集団キャラメルボックス)、稲田ひかる、
井上みなみ(青年団)、小口ふみか、
田久保柚香、橘花梨、山本沙羅(演劇集団キャラメルボックス)、
前田綾(演劇集団キャラメルボックス)

・コトリ会議『全部あったかいものは』
2022年9月14日〜21日@こまばアゴラ劇場
作:山本正典
演出:山本正典とコトリ会議
出演:大石丈太郎、川端真奈、三ヶ日晩、
花屋敷鴨、原竹志、山本正典

よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートは我々の会話をより多岐に豊かにするために使用いたします。よろしくお願いいたします。