窓から山を観る
右の窓側の席。羽田から西に向かう飛行機はここに限る、と思うようになったのはここ数年だ。それまでは、前方通路側の席をとってギリギリに飛び乗り真っ先に出る、座ったら眠るというのが機内のパターンだった。
羽田は曇っていた。飛び立って雲の上に出れば視界は広がる。雪をまとった富士山、南アルプスが巻物の絵のように左から右へと動く。遠くには乗鞍、北アルプス白い山並みが望める。もったいなかったなあ、今までも数えきれないくらい乗ったのに。見惚れる景色の横で後悔がよぎる。
パノラマが終わって座席の機内誌を手にとると見た顔があった。髙田明さん、ジャパネットの前社長だ。
「伝えることの大切さ」を「伝える」のをライフワークにしているという。
家業のカメラ店を継いでテレビショッピングを始めた。「伝える」ことの面白さにはまったという。伝わればそれがお金になる、スコア化できるのだ。
ソニーのビデオカメラ、ハンディカムは小型でだれでもよく撮れる。メーカーはその機能、使いやすさを全面に出して売ろうとするが、彼は違った。「お孫さんは今日からスターです」とじいさん、ばあさんに語りかけた。運動会、学芸会に欠かせない道具になった。ユーチューバー、インフルエンサーの先駆けだ。
もったいなかったなあ。情報は目から入るのに自ら塞いでた、とこれまでのことを後悔しきりの機内だった。