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左が前に出る

写真を見て、この人に親しみを感じてしまった。そう、わたしと同じ姿勢なのだ。クワをもって土を被せる姿勢が、左手と左足が前なのだ。この人の連れ合いは右が前だ。ふたりそろってバランスがとれてお似合いだ。

その人は、雅子皇后。1963年生まれというから、今年は古希。えっもう60歳なのだ。

写真は岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」がある会場だ。コロナで4年ぶりの植樹祭出席だという。ならびはお雛さんとおなじ。向かって左が天皇、右が雅子皇后。天皇は右手と右足が前。後ろから見ると天皇は右側で右手右足が前、雅子さんは左側で左手左足が前、シンメトリックな構図だ。

わたしは、物心ついてから右利きだ。鉛筆も、お箸も右手で持つ。だけど、先日右ヒザを痛めてリハビリに通うようになって気がついた。左足の太腿の方が右よりひと回り逞しいのだ。筋肉のつき方に差がある。左足をよく使っているのにちがいない。

スコップで畑の土を掘り返すのは左足で踏みこむ。クワをもつのは左手が前で左肩から振り下ろす。バスに乗りこむステップは左足、踏み出しも左足から。靴も左足から。そう、足は左利きなのだ。もしかすると、物心つく前に左から右に矯正されたのかもしれない。が、今となっては聞く人がいない。

左が前に出る。ただ、それだけのことなのだが、親しみを覚えた写真だった。


毎日新聞より