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爽やか、「丸刈り」甲子園

中学生になって、部活は野球を選んだ。ほかに運動部は、バレーやバスケット、テニス、卓球、そして器械体操もあった。なぜ、野球を選んだのか。今思うと、やっぱり甲子園かなあ。となり町の下駄屋(そう呼んでいた)の息子が甲子園に出た、それが大きく影響しているのは間違いない。

当時は、スポーツの華といえば野球だった。でも、皆が皆、野球部を選んだのじゃない。走るのが速いヤツは体操部に入った。運動神経の抜群の男子はテニス部、背が高くて体格のいい友だちは卓球部だった。

小学生の頃は草野球で一緒に遊んでいたから、野球が嫌いなわけじゃないし、上手だった。一緒に野球やろうよと誘ったけれど、彼らの返事は同じだった。

「練習がきつい」
「丸刈りにしないといけない」

とくに「丸刈り」は抵抗があるようだった。これは自分も同じだった。

近所の散髪屋のおばさんに刈ってもらった。額の上、真ん中からバリカンを入れ、そのまま後頭部へ。次はその両隣を刈る。鏡で見ると、お侍の月代(さかやき)みたいだ。見てられなくなって目をつぶった。

「さっぱりして、爽やかになったよ」
おばさんの声で目をあけた。たしかに、さっぱり、頭が軽い。帽子を忘れたのを後悔したことを覚えている。

今夏の甲子園は終わった。

高校野球連盟のアンケート(今年6月)によると、「頭髪の取り決め」について「丸刈り」は約26%だという。5年前の77%から激減、令和の時代は「丸刈り」が少数派なのだ。

力いっぱい戦ったが及ばず、汗がしたたり、涙をこらえてベンチ前の「土」をかき集め、持ち帰る「丸刈り」の選手たち。これが昭和の世代から見た、爽やかな甲子園のイメージだ。

優勝した慶應、帽子をとって並んでいる選手たちは「丸刈り」じゃないけれど、皆、爽やかな顔だった。

どちらも、爽やか甲子園だ。