やせれません その3 24時間御神輿中

 ぼくにはおよそ0.1トンの体重がある。
 筋肉はあまりない。身長もそれほどない。つまりその重さの半分近くは贅肉だ。
 わたくしの半分は贅肉で出来ています(重量比)。いや、バファリンやないねんから。
 贅肉は筋肉ではないので、己の意思で動かすことができない。いわば意思の通じない不気味な存在だ。そういう不穏分子に身体の半分が乗っ取られているというのはわりと由々しき事態である。出来れば早々に立ち去っていただきたい。
 しかしこいつらは皮膚の下、あるいは内臓の隙間といった、外部からは普段直接アクセスしにくいところにいるのでなかなか手が出せない。ひどい話である。
 日本三大祭の一つ、大阪の天神祭の御神輿は、重さが2トンほどあるといわれている。これは御神輿というより、ちょっと小ぶりな地車に近い。その昔、船大工がこしらえたもので、「これは人が担ぐものだ」という事をあまり意識しないで丈夫に仕上げてしまったらしい。
 その重い御神輿をだいたい70人で担ぐ。一人当たり30kgくらいの負担だ。毎年7月25日、一年で一番暑い時期にこれを担いで陸渡御をする。担ぎ手の人の体力はとにかくものすごい。リスペクトしまくりだ。
 ぼくはカメラマンとして、ここ何年かこの御神輿の撮影をしている。もちろん御神輿を担いでいるわけではない。カメラを持ってるだけだ。なのに、毎年体力が限界に近いと感じる。
 何も担いでいないのに。何も担いで・・・、いや、担いではいないけど、しかし「身体の中の自分ではない部分」が重量ハンデになっている!御神輿よりも重い荷物が、デフォルトで!
 お祭の日もそうでない日も、年中およそ50kgを担ぎ続けるストイックな生活。なのにぼくはやせれません。なぜだ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?