やせれません その4 貧乏人は痩せない

 自他共に認める貧乏人なのだけど、たまに「そのわりに痩せてないやんけ」などと言い放つ無礼な輩がいる。
 やかましいわ。
 ダイエット方面の意識高い系の人たちはみな、口を揃えて「炭水化物は摂っちゃダメ」などとおっしゃる。炭水化物というと「ごはん」や「パン」「麺」など、いわゆる「主食」と呼ばれるものとほぼ同じと考えていい。
 「炭水化物をやめれば、ステーキとかどんどん食べても太らないから」という、ちょっと目眩く魅惑的な説を唱える人もいる。
 しかし、しかしだ。その食生活はあなた、とてもコストが高いのであるよ。
 そもそも「主食」というものは「おなかを一杯にする」という重大な任務を帯びている。ご飯というとR田中一郎氏だが、彼も「ご飯を食べないとお腹がすくじゃないか」と語っている。
 比較的安価に満腹感を得られる食べ物、それが主食だ。むかし友達にY子という人がいた。彼女は僕に勝るとも劣らない貧乏人だった。そして、若くして真理に辿り着いて、その真髄をぼくに話してくれた。
「あのなあ、世の中で一番コスパが高い食べ物はなあ、食パンやで」と。
 日本を代表する主食「ご飯」は通常「おかず」と一緒に食べるもので、これは言い方を変えれば「おかずの味でご飯を食べる」のだ。よく味の濃いおかずなど「これ一切れでご飯三杯はいけますね」なんていうフレーズで表現されることもあるので多分間違いではない。純粋に「ご飯だけ」を食べる人は、前出のR田中一郎さんのような特殊な事情がある人以外そうそう居ない。
 塩ご飯、醤油ご飯、マヨネーズご飯など、何らかの味をつけて食べるのが現代の文化的な生活というものだろう。
 おかずというものは総じて主食よりも量当たりの値段が高い。例えばとんかつ屋さんなどで「ご飯おかわり自由」というところはたまにあるが、「とんかつおかわり自由」というのはほぼない。
 炭水化物はコスパがいい。貧乏人は炭水化物でおなかを一杯にするしかないのである。言い換えると、貧乏人は痩せない。
 そう、やはりぼくはやせれません。

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