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【元祖美文字】美味しい水が湧いた!石碑を建てよう!『九成宮醴泉銘』

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さて、あまり書道書道した話を意図的に避けがち?なお字書き道TALKSでありますが。

だって書道をやらない人にとっては、書道って「達筆、読めない、すごそう、へー・・・」となってしまいがちだから・・・。

今回は王道書道の話!書道人であれば誰もが必ず通る道、「九成宮醴泉銘」について取り上げてみたいと思います。
何それ?と思う方も大丈夫、うにゃあっとした行書や草書のものではありません。漢文の意味は分からなくとも、読めます

さらに言えば、私たちが小中学校で文字を学ぶ際の基本書風は、この「九成宮醴泉銘」を元にしているのです。言わば「美文字の素」!

ここから何回か、超有名書道古典について取り扱っていきます。
第一弾!超有名書道古典シリーズ「九成宮醴泉銘」

この話のYouTube動画はこちら↓↓




「九成宮醴泉銘」プロファイル


「九成宮醴泉銘」出だし部分
「九成宮醴泉銘」整拓本(清末)

文字を書いた人:欧陽詢(おうようじゅん 557-641年(632年,76歳の作))
文章を書いた人:魏徴(ぎちょう 580-643年)
文字を彫った人:不明

時代:唐(618-907年)、あるいは初唐 ※日本は飛鳥時代頃
皇帝:太宗(第2代皇帝 598-649年)文化好きで「貞観の治」を作った名君
形態:石碑(258.0x95.0cm、一文字は3cmほど)
文字数:1108字(1行50字、24行)最上部は篆書で「九成宮醴泉銘」
書体:楷書体

この石碑が作られた背景:
「九成宮」は唐の時代の離宮で、避暑地として親しまれていた。水に乏しい地であったが、太宗が散歩中に地面に潤いを見つけ、杖で突いてみるときれいな湧き水が出てきた。そのめでたきことを喜び、太宗の命令で作られた。

書かれている内容:
湧き水を発見した経緯や、唐の統治がすぐれていること、太宗皇帝の徳を称える内容が書かれている。
※湧水は、その清らかさは鏡のよう、味の良さは醴(あまざけ)のようであった、という描写もある。(其清若鏡,味甘如醴)

石碑の今:
石碑の役目は、後世の人の学びのための手本を写し取ることでもある(拓本、言うなれば昔の印刷技術)。「九成宮醴泉銘」はおびただしい数の拓本を取られ、石は摩耗し、潰れてしまった字もいくつか。てかてかになってしまった石碑は現在ではガラスケースに収められているのだとか。


欧陽詢という人

生まれつき容貌が醜かったと伝えられている。しかし聡明さでは群を抜いていて、本は数行を一気に理解し、経書や史書に通じていた。数々の功績を残し、85歳まで生きた。
欧陽詢は楷書体の表現を極め、確立したひとりであり、1500年をも後の現代においても最高峰の逸品として学ばれ続けている。

▼初唐の三大家
欧陽詢(おうようじゅん、557-641年)
虞世南(ぐせいなん、558-638年)
褚遂良(ちょすいりょう、596-658年)

ちなみに、欧陽詢の代表作は、以下のようなものがある。
・皇甫誕碑(こうほたんひ)
・化度寺邕禅師塔銘(けどじようぜんじとうめい)
・九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)
・温彦博碑(おんげんはくひ) 

どれも端正な楷書体ではあるが、やはり「九成宮醴泉銘」が最もピリッと鋭い。

書に精通した書道家・石川九楊氏に言わせれば、「この書は中国の最高峰に位置する表現であり、また、当時の全世界の全分野の表現の中で最高の表現であったことを意味する」。


「九成宮醴泉銘」書体の特徴


~シルクハットをかぶった懐の広い紳士~

「楷書の極則」なんて言われる「九成宮醴泉銘」ですが、その特徴を単語で挙げてみましょう。

▼全体的な特徴
・厳しい
・引き締まっている
・引き締まっているのにゆったりしている
・端正
・縦長字形
・背勢(⇔向勢)(はいせい/こうせい)
・右上がり(やや左に傾いている)
・刀で彫り付けたかのような鋭さ
・飾り気は極力控えられている

▼漢字のパーツの特徴
・縦画は基本バシっとまっすぐ
・戈法(かほう)部分が長い
・縦画後のハネは直角
・「九」「也」などの最終画のハネは鈍角、外へ出て行く
・右払いは刀のように重く鋭く
・点の方向、大きさ、形は一つひとつ変える
・接筆(点画の接し方)は工夫されているが、基本は離し気味


76歳の矜持と、刻するという偉業


寸分のズレも許さない、そんな書を書きあげた欧陽詢。「九成宮醴泉銘」を書いたお年はなんと76歳。手も震えず、体幹もぶれず、視界も揺るがず、1108文字の渾身の「ビシッ」っとをキメた欧陽詢先生。恐れ入ります。

しかしまた一方で気になるのは、石に彫り付けた彫り師のこと。この時代のものは石に彫り付けられていたわけですが、その技術たるや・・・。偉業中の偉業。恐れ入ります。


現代の書道家にとっての「九成宮醴泉銘」


小中学校の文字の習得の基本書法となり、また高校の書道の教科書には必ずと言っていいほど掲載されている「九成宮醴泉銘」。高校生でも書けると言えばその通りですし、大人になって改めて書道を習う場合も序盤に出てきます。がしかし、その難しさは侮るなかれ。

「九成宮醴泉銘」は書道家と名乗る人が、30歳になっても、40歳になっても、80歳になっても、臨書(書き写す)するような代物です。書いて、書いて、また新しいことが見えて、書いて、書いて・・・。

今でも、書道の楷書体の基礎基本であり、さらに最高峰として書き続けられているのが「九成宮醴泉銘」。

未だかつて、「九成宮得意なんだよね」という言葉は書道家の口から聞いたことはありません。素人でも判断しやすい楷書体であり、やればやるほど難しさを感じることは書道家を名乗る人であれば身に染みる思いがあるからでしょう。

筆者は「九成宮本気でやろうと思ったら命が足りない・・・のである程度にしておこう」なんて思った覚えがあります。


そんな手書き文字の「美」の塊、「九成宮醴泉銘」。気になった方は是非検索してみたり、拓本の本(法帖)を手に取ってみてください^^


参考文献:「書家101」石川九楊・加藤堆繁、「九成宮醴泉銘」二玄社


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