#214『ティッピ 野生のことば』ティッピ・ドゥグレ
この本は、実物を取ってもらわないことには魅力が絶対に伝わらない本である。が、一応、感想文を書く習慣として、思ったことを書く。
著者、というか本書の書かれている文章の語り手は白人の少女なのだが、アフリカで生まれ、10歳くらいまでを過ごした。この少女は動物と心を通わせ、会話をすることが出来るのである。それを彼女は特別な才能だと自覚している。
素晴らしい写真の数々の中に、少女と動物が共に遊ぶ姿が写されている。思うのはただ一言「なんて人間は素晴らしいんだろう」。ただし()付きで(本当は)が、必要だが。
人類は万物の霊長、という言葉は言い古されている。実際の人類を観察すると、まあそうには違いないが、ろくな支配者ではない、と思う。「霊長」というからには、その力や知恵によって、あらゆるものに友愛の心を向けなければならないと思う。人類にはそれが出来ない。だから時々やってくるエホバの証人のパンフレットの中で、人間と動物が仲良く暮らしている絵を見るしかない。彼らはそれを「天国」と言っている。
本書の写真は、まさにその「天国」なのである。人間が我がもの顔で動物の圏内に入ろうとするのではない。動物と少女の間に心が通っていることは見ればはっきり分かるのだ。美しい、の一言である。
癒やされたい方、疲れている方、人間の良い面を見たい方、奇跡や平和や可能性ということを改めて確認したい方にはお勧めである。それに加えて写真そのものも作品単独として素晴らしい。とにかく、この閉塞した社会に閉じ込められた私たちの精神をひと時でも解放してくれることは間違いない。
少女の言葉も本当に素晴らしいものばかりで、自分を見つめ直す良いきっかけとなる。
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