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色褪せない地域資源の磨き方

今回は中山間地のはなし。
知る人ぞ知る新潟県柏崎市にある北条コミュニティ。

ここは俺の知っている限りでは、
四半世紀以上前から公民館を中心に地域づくりを行ってきた。
地域の歴史を学び、
地域資源を磨いて誇りづくりや観光につなげるのはもちろん、
歳時記から郷土料理を掘り起こし、
そこから特産品の野菜を作ってみて、
東京の高級割烹に売ってみたり、
とにかく学習だけで終わらないのが特徴だった。

それだけではない。

地区の中でお互い顔を見える関係をつくるため、
市民劇場を立ち上げたり、
暮らしを支える人材バンクもいち早く作り、
2000年代はじめにはNPO法人化までしている。
過疎化や人口減少が進むことを予測し、
予め備えることを実践してきた。
さらには、
中越地震の経験を活かして、
震源が近かった中越沖地震の際には、
地震の一時間後には全員の安否を確認してた。
この自主防災組織が筑波の防災研究所のモデルになったり、
防災にちょっとうるさい神奈川県藤沢市のコミュニティがずーっと学びにきたりと、
とにかく新潟県内では村上の高根や山熊田と並び、
住民自治の先進地でもあった。
一時期は自分たちでお店もつくっていたり・・・。

そんな北条地区の住民が磨き上げてきた地域資源の一つに、
集落を囲う山々の整備がある。
よくありがちなパターンとして、
ちょっとだけ草刈りをして、
大きめの案内看板を設置する。
良くて分岐に道導を置いたり、
まぁその程度かと思っていた。
そんなことはない。
あちらこちらの木々に名札が付けられているだけではなく、
ほぼ登山口から頂上までしっかりとした手作りの階段が続き、
至る所にベンチと、
急登手前には巻道まできれいに整備されている。
これだけのハイキングコースを切り拓き、
またそれを整備し続けることだけでも大変なのに、
頂上には避難小屋やトイレまでつくってしまった。
「救急セットあります」の文字が優しい。
大人から子どもたちまで300人規模で毎年資材を運び、
何年もかけて作ってきたと聞いていた。
ハイカーや登山者だけをターゲットにしていない。
整備する過程から大勢の地域住民を巻き込んでいるから、
そこで「何が必要か」をしっかりわかっている。
その一つがストックのフリーレンタルだ。
「お年寄りから子どもさんまで誰もが登れるように」と願った当時のリーダー。
心配りがニクいね。
標高が500m以上あるから、
その大変さがわかるからこその配慮だと思う。

山へスムーズに向かってもらうために、
里側の民家の壁にも「登山道や花の案内パンフレットあります」と大きく提示してあるどころか、
訪れた人たちに周辺の魅力を知ってもらおうと、
登山口には様々な周辺の観光案内まで準備する周到さ。
そこに置かれているチラシはどれも折れたり色褪せたりしているものはなく、
下手な観光案内所や道の駅、
いや、行政施設より心配りがなされているという感じ。
しかも屋外だよ。

学びの積み重ねはどんなに過疎化や高齢化が進んだって、
地域の真の魅力を引き出す。
それは決して色褪せない。

俺はもう10年近く北条コミュニティに通っていたけど、
山に登ったのは実は一昨日が初めてだった。
正直びっくりした。
登っててすごく気持ちいい山だった。
守っている、磨いている方々、
北条コミュニティの方の気持ちが伝わってくる山だった。
ヤマップやっていて丁度77座目の山だった。
ここでよかった。


・・・最後になるが、
ハイキングコースにはもう一つ、
まちづくりの素敵な仕組みが仕込まれていた。
よく、頂上に水を運ぶ「歩荷ボランティア」というものがあるけど、
ここでは砕石(RC45)を運ぶボランティアがあった。
頂上まで運ぶ決まりはなく、
なんとなんと、
「あなたの滑りやすいと思ったところに撒いてください」と。
住民だけでなく、
他所から訪れた人みんなが山を守れる仕組み、
そこまで生み出していた。
脱帽。
すごいでしょ?

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