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9/27 「芸宿試(私)論」を読みながら

以前、芸宿の取材をしに来てくださった 山本浩貴氏の記事が2020年10月号の美術手帳に掲載されました!

 その取材の時に私が横でメモしたものの完全版です、その時のメモはこちらの記事になります。

 私はnoteでちょっと前から芸宿のことを書いて推しているだけですので、その歴史にや成り立ちに関わっていることはないんですけど、全国で配布され多くの方に読まれている媒体に載るということは、とてもうれしいことです。自分の母校が新聞に出ているくらいうれしいです。

 山本 浩貴さんありがとうございます。

筆者について

  著者である山本 浩貴(やまもと ひろき)氏は現在、金沢美術工芸大学に教員として勤務されている方です、文化研究をしている方です。
 教員一覧でみると講師と位置付けられています、現在の金沢美術工芸大学の大学の教員としては若手の方です。

  そもそも講師とは何ぞやという方のために捕捉すると、”大学教育を担当する上でふさわしい能力を有する者”に与えられるもので、業務内容に差があるれど、その道のプロフェッショナルということで、将来的に教授になれるような人のことです。
 プロフィールの経歴に関しては最高の状態ですね。
 一般的な履歴書に書ききれないくらいです。

著作も発表されております。こちらです!


内容はマニアックで豊富な知識が詰め込まれた一冊となっています、この機会に私も彼を推していきたいと思いまして。布教用と保存用ということで、ノリで3冊もかっちゃいました。
 みなさんも、買いましょう。

記事の内容について

 芸宿試(私)論は先ほど紹介した著作「現代美術史」のあとがきに触れてから始まります。
 現代美術史が東京や大阪など大都市中心に語られ、地方の存在が空白化しているという問題を指摘し。
 それに対して、批判するだけじゃなくて自分でやってみればいいじゃんとほならね理論で返されたという経験から、金沢美術工芸大学の講師として金沢に移住したことをきっかけに、今回金沢での調査を始めた経緯が語られています。

 美術史というと美術の歴史のことですが、歴史にも授業で習うような、国レベルの大きな動き以外にもそれに呼応するように、地方の歴史を研究する分野があります。「郷土史研究」だったり「マイクロヒストリー」とか呼ばれています。細部から全体に接続する仕事というのも必要だと思います。
 郷土資料の研究って、無名の人物による日記とか、お店の帳簿の記録とか、そういう当時はさほど重要でないものでも、当時の事実確認のため、研究資料として重要視されているんですよ。


 脱線しまくりましたが、つまり、そういう研究の先駆けを金沢で行うにあたって、今回こうして芸宿にスポットを当てて、歴史を書くという事をしてみたというわけですね。




 次に芸宿の設立から現在に至るまでの歴史が書かれています。
 主に取材で話された内容がまとめられています、備忘録としてまとめた内容があらすじのようにさらっとまとめてあります。

羅列されるような形で、展覧会の名前や様々な人物の名前が登場していますが、知らない人が見たらもっと捕捉がないとわけがわからないですね、検索しても出てこない名前ばっかりですし、この項目だけでも登場人物の紹介や絵をたくさん入れて解像度を上げたら、芸宿の歴史みたいな本が作れそうですね。

 その次にオルタナティブスペースとしての「芸宿」の課題という章に突入します。
 その可視化されない地方のアート運動を適切に可視化し、個別具体的に記述するだけでなく、それを可能性と課題を含めて批判的に吟味するという筆者のスタンスが宣言されています。さらに大都市と周辺という二元論の超克するとあり。美術版の郷土史にはとどまらないという筆者の志が表明されています。

 芸宿メンバーが積極的に解決しようとしている課題として男性中心のホモソーシャルな空気の解消だという事です。
 筆者が指摘したと言わけではなく、そういったこと問題を芸宿の中では抱えているという事で、具体的にどういう所がホモなのか、詳しく教えていただきたいところですが、もう少し女性から抵抗感のない環境を目指そうという指摘は度々されていました。
 要は清潔感が欲しいという事ですね。
 思えば旧芸宿時代とか、オンボロの建物で前を通れば地元のおっちゃんとか交えて土間でよく宴会してるって印象があった場所なので、まぁ清潔感がないので女性からは選ばれなかったというか。
 その反動か、現在の芸宿は住人、環境のホスピタリティは向上しています、記事には活動の名前は伏せられていますけど、「ある人の休日」という住人の一人とその友人が得意料理のカレーとスイーツをみんなで食べようという企画を不定期に細々とやっています。

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「ある人の休日」で提供されるカレー


 コロナによって学生はビデオ通話での授業が当たり前、本来大学は人と会う場所みたいなところなのに、たまたまこのコロナ騒動の中で大学生になったがゆえに、そのぬくもりの伴ったさまざまな交流の機会を奪われています。
 物質的な隔たりの上でしか人と交流することができなくなった反動かは置いといて、「ある人の休日」には現役の金沢美大の学生が訪れ、会場である101号室は女性比率も比較的高いジェンダーニュートラルな空間になっています!たいへん姦しいです!
 けどおかげさまで、それが103ギャラリーの展覧につながったり、募金が集まったりと芸宿の安心・安全・サスティナビリティにつながっていきます!

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 芸宿101号室にはこのような募金箱が設置してあります。よりよい環境の向上や維持のための出費は、この募金箱や展示などの収入で賄われているので、お立ち寄りの際は是非、課金してください!

 とまた、話が脱線してしまったが、ホモソーシャルの側面が現れない仕掛けとしては、イケメン美大生の提供するスイーツ会という身も蓋もない強靭な一手が今のところはございます。(※あくまで個人の見解です)


次にあるのは、都市と地方の二項対立という章です。
 芸宿には国内外から多くの人が訪れています、それだけではなく芸宿から都市へと双方向的な交流が行われていますといった事が書かれています。
 「カタルシス岸辺」という東京で活動するグループには芸宿住人が特別移籍という形で、現在メンバーとして活動していたりと、インタラクティブな交流がなされています。
 この前も、「ストレンジャーによろしく」実行委員をはじめ東京の方々が芸宿を滞在拠点や展示会場として利用してくださいましたね。
 国外からもアメリカのアーティストが滞在してパフォーマンスをしてくださったこともあります、その方からは後日、アメリカのファミコンミニみたいなゲーム機を国際便でプレゼントしてただきました。

 次に現在と未来についてという章です。
 芸宿試(私)論のあとがきみたいなものですね、ジェンダーニュートラルな空間の課題については、さっき紹介したイケメンカフェのことがまた触れてあります。
 趣味の延長線上で行われている食堂、それによって女性の参加比率も高くジェンダーニュートラルな環境が開かれているという風にまとめられていますね。
 私は陰キャなので、そういう風に書かれるといろいろ困ります。

 最後に金沢には芸宿以外にも「キタイッサカの土間」さん、先日の記事でも紹介した「彗星倶楽部」さん、渋家の創始者の方が企画している「CORN」など筆者が注目しているスポットについて、取り上げられています。
 そして、今回は芸宿の前史ともみなしうる「拝借景」「問屋まちスタジオ」「金沢アートグミ」との関係性について、取材では触れられず、それは今後の課題という形で記事は締めくくられています。

 「拝借景」や「問屋町スタジオ」は主に創立メンバーの方々が深くかかわっている部分ですので是非、今後何かしらの形で切り込んでみてほしいなぁと思いますね!

さいごに

 今日の芸宿日記は記事が美術手帳に掲載された記事をネタにしたものになりますが、この機会に久しぶりに美術手帳を買いました。美術手帳つくりや装丁が頑丈なので、ちょっと高いなぁと思ってしまいます。
 今月の特集はアートの価値の解剖学というテーマで、アートの評価軸に多角的にコミットした論考が目白押しの大変有意義な特集となっています!
 そのなかの一つとして、今回の芸宿試(私)論は日本のアートシーンの評価が大都市中心的になりすぎているという問題定義から始まり、芸宿のことが書かれていましたね。
 「芸宿」の調査報告書です。

 読んでいて、アートシーンの評価がそもそも大都市中心になっているのってなんでだろうという疑問も浮かびました。
 東京の方がオーディエンスとなる鑑賞者がたくさんいて、アーティストとして活動や生活がしやすいからかもしれません。
 地方言えば、最近開催された奥能登芸術祭や大地の芸術祭など脱都市的な展覧会が近年増えていると思うのですが、著者のおもうところがそれらとは違うとなると、もっと小さなアートシーンへの興味があるのかもしれませんね!
 今回は芸宿というサンプルの調査結果という事で、今後サンプルが増えていくにつれて、民俗学者の柳田国男がカタツムリの言い方の違いを全国で調査した結果、文化中心地である京都から言い方が地方へと波紋的に広がりっていたことを発見し、方言周圏論を提唱できたように、おもしろい研究成果につながるかもしれませんね。








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