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9/28 芸宿103ギャラリー「roundabout/scale back」展

9/27(月)~10/5(木)は芸宿103号室のギャラリーでは朝倉毅による「roundabout/scale back」展が開催されています、自宅から30秒ので行ける展覧会なので見てきました!
 一見すると、風景を取り扱った作品が多数展示されています!
 本日はそれだけではなく、「ある人の休日」が開催されてます、芸宿の住人が趣味の延長で行っているイベントなどで、ホームパーティ的なものですけど、交流の場多くの人が訪れたことでしょう。ちなみに今日振舞われたカレーライスには大根が入っていました!

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「roundabout/scale back」展

 今回の展覧会は金沢美術工芸大学の修士課程に在籍する朝倉毅さんプレゼンツでお送りされています。
 絵画専攻の方ですが風景画の他に、映像やインスタレーションなど立体作品が会場の半分を占めており、いろんな作品があります!

 展覧会のタイトルにある roundabout は回りくどいとか湾曲という意味です。
 roundabout approach だと遠回しに言うみたいな意味ですし。
 roundabout wayだと迂回道といった意味ですね。

scale back は~削減、要素を削るといった意味の英語で。
 scale back the ~~ といった使い方をするそうです。

 展示されている作品タイトルには風景という単語の他に背景という単語が多く付けられています。
 背景というとアニメやデジタルイラストなどのを制作する上で何枚もレイヤーという透明なフィルターを重ねて絵を作るのですが、その最下層に位置するオブジェクトですね。

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Temp 景 /背景的沈まり made my memory
2021

 この作品の前面には透明なレイヤーあり、レイヤーには青空のような絵が描かれていて、その奥にはモニターが置いてあり映像が流されています。
 映像に映っている人は自分の体をどんどん消して背景と同化しようとしていますね。
 これはクロマキー透過という特定の色(クロマ)のみを切り抜く映像編集機能が使われていまして。
 背景と同化しようとしている人は、スタジオで単色の布を背景に同じ色の絵具をシャツに塗っていている映像を撮影し、それを編集でクロマキー透過処理をして背景となる映像と重ねると、このような絵が出来上がります。
 空に溶け込んでしまいたいというより、同じ一枚の絵の中でも、メイキング上では人物と背景には空間的な隔たりがあることでしょうか。
 手前にわざわざレイヤーのようなモノが配置されているのは、映像を一枚の背景レイヤーとしての意味を強調しようという狙いがあったのではないでしょうか? 

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移動(仮)
2021

 この作品はグーグルマップに合わせて実際にその場所を歩いた景色の映像が合成された作品です。

 グーグルマップはカーナビみたいなものですね。
 実際に移動すると、それに連動して地図の中の現在地も移動するので、自分が地図の中を移動しているような気にさせてくれますね。
 右上にマップが常に表示されているといいなぁを実現してくれた夢の技術ですね。

 グーグルマップで思い出したのですが、日本の巻物って全部人間の視点ではなく、鳥が見下ろしたような視点になっていますね?
 絵巻と呼ばれる絵は、どちらかと言えば何が起こったかを伝えるために、その情景やら雰囲気は排除して、文章のように情報を伝えるための用途があってつくられたと考えると、合理的だったのかもしれません。
 グーグルマップ、もとい地図も、道を読むことに特化するため、衛星写真のような視点でありのままに見えるような景色から、作画すべきものの取捨選択が行われ、抽象的な図にまで落とし込んだ合理的な風景とも考えられますね。


 左に移りこんでいるのは家庭用のクロマキー透過用グリーンバックですね、自宅でゲーム実況動画配信を行う人が増えてきて、自分は映したいけど自分の部屋を映したくないときに重宝します。

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matter(景)
2020

 こちらは構造的な作品となっていますね、タイトルも物質という意味です。目を引くのは視点の高さにある流木や武骨な単管でしょうか。風景の写真が印刷されて、敷物のように配置されています。

 3Dゲームなどをやったことがあるとわかるのですが、ゲーム上の空間を構成する上で、一番目にする主人公などは、情報量が多く手間をかけてつくられまますが、ゲーム上必要のないものなど、たとえば背景にある机やその上の日用品などプレイヤーが関与しないモノほど作りが簡単な、情報量が少なくなるように作られます。
 見えないところは手を抜くというよりも、画面上のすべてのものが目を引くような作りになると、全体のバランスが取れなくなり見るに堪えない状態になります。ゲームだと処理の問題もありますので、この見えないところをいかに処理的に手を抜くかに関しては並々ならぬ工夫を凝らしているそうです。
 その中で青空など一番遠く位置する背景は、舞台となるマップをぐるっと囲む一枚の大きな画像で表現されています。
 この作品もすべての構造体の下敷きになるように大きな写真が置かれていますね。見ることの優先順位や距離感を手前から奥ではなく上から下とへと表しているかもしれません。
 上に置かれているものほど、関心を引くように手間がかかったキャンパスなどで構成され、下のものほど、簡素な既製品で構成されています。
 この作品は視点を集める優先順位など、構造的に考えた作品なのかもしれません。

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背景のための絵
(2021)

 絵画専攻の方ですので普通の絵!風景画もあります!
 中心には民家の壁ですね、配電盤などいろいろついています細かいです。
カーブミラーの映り込みも鮮明で写実的な上手な絵ですね。

 でもよく見ると、カーブミラーに映っている景色はその街とは全然違うロケーションですし、横断歩道は変なパースになっています。
 カーブミラーもよく見ると変なところに立っています、道の真ん中に室外機が鎮座しています。よく見るとめちゃくちゃな存在しない風景画です。
 逆によく見ないと違和感を感じなかったりします。

 普段私たちは物事を実は大雑把に観ていて、目につきやすい、視線を集めやすい部分だけを見て判断していることを注意喚起している絵ですね。
 この絵だと中心に書き込みが多くて情報量が多いです、無意識に横断歩道のところなどは背景として扱ってしまい、あまり見てなかったりしていました。だまされましたね!良い作品だと思います!タイポグリセミア現象の絵画版みたいです。

最後に

 今回の展覧会は、絵画専攻の方によるもので、一見すると風景を主題にした作品が展示されていますが、作家の関心は、ありのままに見ることの困難さなのか、見ることで起きる意識的な現象なのかもしれませんね。
 とてもインテリジェンスな展示だと思いました。

 遠回り/削るといった英単語をタイトル据えて展開され展示でした。
 情報社会の到来により、人が一生に得る情報量ってここ数十年前と比べて急激に増えているので、一つ一つをちゃんと見る時間が惜しい時代にもなってきました。その状況に適応するために私たちは見るべき事に優先順位をつけてみたいことだけを見るようになっていたのかもしれません。
 SNSとかでも、ニュース記事をTwitterでリツイートしようとすると、ちゃんと記事を読みましたか?と言われるくらい、目に入りやすい部分だけで全体を見た気になっていることが問題視されていたことがありましたね、木を見て森を見ずってやつですね。

 関係ないですが、今回の展示作家である朝倉君は棚を作るのが上手です。
 101に棚の増設してくれたのも彼ですね。

 展示会期中に投稿できた記事という事で、お時間のある方は是非、見に来てください!作家もなるべく在廊してそうなので、質問などしてみるのもいいですね!


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