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EV充電設備のエアビー「Renault - Plug-Inn」

Summary

EV推進のリーディングブランドとして、EVの普及に力を入れているフランスの自動車メーカーRenaultは、フランス国内の充電ステーションの不足がEV普及の障害となっている問題に注目した。

この問題の背景には、「充電ステーション不足による、航続距離の短さや、遠隔地での孤立への不安」という、EV購入を検討している層の認識がある。

しかし、その認識の奥には、「望んでいることはインフラではなく、いつでもどこでも充電できる便利さ」というインサイトが隠れている。このインサイトに応えるため、Renaultは「充電ステーションがない遠隔地でも、EVオーナーの住居には充電設備がある」という事実に着目。遠隔地でのEVオーナーの充電設備を一般EVユーザーでも利用できる仕組みを生み出すことで、充電ステーション不足の問題を解決できるのではないかと考えた。

そこで、EVドライバーと個人住宅のチャージスポットを有料でマッチングさせるP2Pの予約サイトを開発した。訪れたEVドライバーと、旅先でのEVオーナー自宅充電器を結びつけ、充電ステーションのネットワークを拡大する。充電器の所有者は貸し出しによって収益を得ることができ、EVドライバーはより多くの充電オプションを手に入れることができる。

このアプローチにより、「住居の充電設備は、個人専用ではなく、ユーザー間で共有する設備である」という気づきを通じて、ルノーはEVの充電ステーション不足の問題の解決を進めるとともに、EV推進のリーディングブランドとしての地位を強化した。



Deconstruction


Brand

Renault - EV推進のリーディングブランドとして、EVの普及に力を入れているフランスの自動車メーカー。

Target
EV購入を検討している層。

Objective
フランス国内の充電ステーションの不足がEV普及の障害となっている → EVを推進させる。

Barrier
充電ステーション不足による、航続距離の短さや、遠隔地での孤立への不安。

Insight
充電ステーションというインフラではなく、充電できることを望んでいる。

Thought Starter
「充電ステーションがない遠隔地でも、EVオーナーの住居には充電設備がある」という事実に着目。EVオーナーの充電設備を一般ユーザーでも利用できる仕組みを生み出すことで、充電ステーション不足の問題を解決に繋げる。

Execution
"Renault - Plug-Inn"
EVドライバーが旅行先でも、個人住宅の中にあるチャージスポットを有料で使用できるP2Pの予約サイト。訪れたEVドライバーと現地のEVオーナー自宅充電器を結びつけ、充電ステーションのネットワークを拡大する。充電器の所有者は貸し出しによって収益を得ることができ、EVドライバーはより多くの充電オプションを手に入れることができる。

Transformation
住居の充電設備の価値変容
個人専用設備→ユーザー間で共有する設備

Result
ルノーはEVの充電ステーション不足の問題の解決を進めるとともに、EV推進のリーディングブランドとしての地位を強化した。


補足

このアイデアは特に革新的でないのではなのでは?という疑問を誰もが持つと思います。おそらく「充電している長い時間を、旅先の交流や発見に変える」という、充電時間の価値変容まで評価されたのではと推測されます。なぜかというと、ケースムービーの1分15秒あたりに「充電時間1時間42分」という表記が見られます。旅先の充電時間として長すぎます。家庭の充電器を使用する以上、充電時間が長くなることはしょうがない。しかし、この充電時間の長さを、エアビーのように旅先での人との交流や発見のチャンスと捉えることで、単なるP2Pサービス以上の価値が見出されたことが評価に繋がったのではないでしょうか。タイトルの「Inn」は宿泊施設の意味なので、元々その意図を込めていたことも推測できます。

※この解釈は、アドタイの渡邉 寧さんの記事から拝借してます。


この解釈を裏付ける映像が、エージェンシー(Publicis Conseil)から1年以上前に公開されてます。


しかし、少なくともカンヌでGrand Prixを受賞したCreative Strategyでは、この文脈は強調されてませんでした。他の受賞カテゴリーはCreative Business Transformation(Gold)、Mobile(Gold)。受賞カテゴリーから推測しても、エントリー文脈は単なるP2Pサービスとしてだった可能性は高いです。ですので、何が受賞に繋がった本当の評価ポイントなのか、はブラックボックスです。

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