長者坂

人の鼻が四つ見えるような気がして、正面から見ると真っ暗。
ブロンズ色になり、その青白い顔で、誰彼となくくぐる小石川石庵の門。

チラチラする姿を見下ろし、振り返った坂道、
人の背後に回ってみても、その夜のうちの一瞬の出来事。

テルですか? テルでした。
私の手から缶が飛び出し、氏の男、彼の男、私は私の後ろ姿が中途半端でどうしようもなく、私は星のように有名なナミダズシカワケがテルを通って錆びついて行くのを遠くから眺めるばかり。
怯えるしかない、長者坂。

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