人間の顔を忘れてしまうその前に

人間の顔を一生忘れてしまう、その前に。

はいつくばった三日月型の口の中からだと、後ろも見える。
音の無い声も聞こえる。
そればかりか、前後が同時に見える。
そのうち三人はその顔ではなく、後ろの顔がそれでした。
長いあいだ笑った後足も、機械のような、世にも気味のわるい仮面ではないだろうか。
彼ら三人の作り物の顔。
目の玉がなくて、たがいを見分けることはできない。

頭の毛はひどく縮れ、たくさんの懐中時計が埋まっている。
おいッ、待てッ。
人間の顔がこんなだったとは。

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