お花ギフトスマート化事件


拝啓 ガラスのハートを持つ夫へ
私、花は顔を見て渡されたい女ッス。


・・・


明日はクリスマス。
子どもたちの喜ぶ顔が早く見たいなー。
贈り物っていいよなぁ。
もう、もらうことはめっきり減ったけど。
なんて思ってたら、思い出した、、。
あれは、上げて落とされたなー。


今年の春先、私の誕生日になんと
夫が花をプレゼントしてくれたのだ。
うちは家族の誕生日が近いから、
自分の誕生日なんてまぁ存在感のないこと。
子どもへのプレゼントを考えてるうちに、
サササーっと過ぎてしまう。

「え?気付かれたくないの?」ってくらい、
マイバースデーはこっそりと、
そして「じゃ、一歳差し上げますんで〜」
と言いながらいそいそと過ぎ去っていく。

なので、花を持って帰宅した夫を見ても
それが何なのかすぐには分からなかった。


ハナ、、?なんで?


え、あ、、私にか!


走り去るマイバースデーを私は横目でスルーしたけど、夫がヒョイと連れ戻してくれたらしい。
おめでとう、と言いながら花を渡す夫の顔が笑っていて、急に嬉しくなった。

ありがとう!ありがとう!
嬉しいです!とっても!

ほんとに素直に嬉しくて、ルンルン気分になった。1日の最終難関である子どもたちの寝かしつけも、軽やかにやれそうだ。
そして、だいぶルンルンになった私は
その勢いでこんなことを口走ったのだ。


「これから毎月、一本でもいいからお花くれたら嬉しいなー♪」


今なら言える。
私のばかやろう!
年一にしとけばよかったんじゃい!!
ただその時はなにせルンルン、ルンルンのルン子さんですから、やらかしがちになる。


そしてひと月後。
夫は本当に花を買って来てくれた。
あの忘れっぽい人が、ちゃんと覚えていてくれたことにまず驚き。
リクエストしたものの、嬉しついでに甘えてみただけでそこまで期待していなかったので、
ちょっと照れる。
何でもない日の花って、、フフ。


「少ないけど」と言いながら手渡す夫の顔は
今度も笑っていた。
またもやルンルンで花瓶に挿すと、
おーイイじゃん、と見てくれて
それも嬉しかった。
え、これもしかして来月もある話?キャッ。


ところが、そのひと月後のある晩。
夫がスマホを見せてきて「どれがいい?」と聞いてきた。
見ると、可愛らしい小ぶりの花束が3種並んでいる。

ん、、?

ハ!!こ、これは、、

お花の宅配アプリ!!

あ、あぁー、そうきますか。
そうか、そうですよねー。
お手軽でワンコインですもんね。
そうかー、、。
え、てか選びもしてくれないの??

そんな動揺を隠しながら

「えっと、、じゃぁこれかな。」

と、答えると「OK、1週間後に届くからね」とのこと。
夫は笑っている、、が、私は急につまらなくなってしまった。


そして1週間後、ポストに花が届いた。

(あぁ、これか)

薄くて四角い箱を開けると、水の入った試験管の様なケースに花が一本ずつ挿されている。

(へー、こんな風に届くんだ)

飾ったのを見て夫は
「いいじゃん」と言っていたが、
私はちょっと複雑、ちょっとポツーンて感じだ。
「よーし!これから出番だゾ!」
と息巻いていたルンルン気分は、キューを出されず突っ立ったまま、そのうちどこかへ消えてしまった。


おそらく夫の脳内はこうだ。

毎月花を贈るというタスク発生

タスク=効率よく終えたい

宅配アプリでスマートに解決だ!


おー!素晴らしい!
手間もコストも最小限で目的達成ですね!

ってちがーーーーーう!!!

そもそも目的を間違えとるわい!
私はただ単に花が欲しいわけじゃないの!
あなたが私を思い出して花屋に足を運んで、
どれが気に入りそうかなーなんて考えながら選んで、そして喜ぶ顔を期待して直接渡す!
その一連の愛情表現にルンルンしたんだよ!
なぜそれが分からないっっ
私はね、ポストから花をもらって愛情を感じられるほど慎ましやかな女じゃないの!
いったい私の何を見てるの?



フゥッフゥッーー
、、フゥ〜〜ッ。



、、夫に悪気がないのは分かっている。
夫の中に、私に喜んで欲しい気持ちがちゃんとあるのも分かってる。
でも、なんだかな。
私への花ってそんなものなのね、と思ってしまう。いや、それだけじゃないな。
自分が大事だと思ってるポイントを解ってもらえていないことが、やっぱりなーって感じだから、虚しくなってるんだな。


ということで、花を見るたびちょっと残念な気持ちになるので、3回利用してから宅配は解約してもらった。
「やっぱりお店で見て買いたい」と言ったら「そっか、OK」となんの疑問も持っていない様子だった。
そう、夫のハートはガラスだけど、
私に関してはだいぶ鈍感なのだ。
その鈍感さは時に罪だけどこういう時は
都合がいい。
翌日、不穏な空気が流れることもなかった。


・・・


それから夫が花を贈ってくれたことは
今のところない。
でも、また花を純粋に楽しめることにホッとしたのも正直なところ。

まぁ、花は残念な結果になったけど、
最近はいいタイミングでバナナを買ってきてくれるので助かっている。
バナナを買ってきてくれる人に花まで期待するのは贅沢ってもんだ。

だから夫からの花のことは忘れよう。
そんなつい思い出しちゃったアレなことは
また忘れて、今夜は子どもたちの喜ぶ顔を一緒に想像しながら、プレゼントを準備しよう。
サンタからのメッセージつけたらびっくりするかな?
明日の朝が楽しみだねぇ。

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