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〇ときどき旅に出るカフェ/近藤史恵

「苺のスープです」
円がキッチンから運んできたのは、
ガラスのボウルだった。
透き通った赤い液体が中に入っている。
ボウルまで冷やしてある。冷たいスープだ。
スプーンですくってそっと口に運ぶ。
甘くて、いい香りがする。
違和感はまったくない。
ジュースではなく、スープとしか言いようがないのは、
少しとろみがついているせいだ。
ジュースよりも苺を食べているという感覚が強い。

苺のスープ

「ロシア風ツップクーヘンって言うんです。
ココア生地をちぎって上にのせて焼くんです。」
きれいな焼き色とフォークを入れる。
濃厚なチーズケーキにココア風味がプラスされている。
これは、チーズケーキとチョコレートケーキが
好きな人にはたまらない。

ロシア風チーズケーキ

今年はもうひとつ、カフェ・ルーズのチェーが加わった。
ベトナムのスイーツだが、円が作るものは、
かき氷にココナツミルクや小豆、フルーツなどが入っている。
かき氷だが、グラスに層のように材料を入れて、
混ぜて食べるところは、少しパフェのような雰囲気もある。

月はどこに消えた?

バングラディッシュの大根カレーが目の前に置かれる。
大根と鶏肉の他には、ミキサーで細かくした玉葱と人参、
トマトなどが入っているらしい。
スパイシーだが、乳製品もココナッツミルクなども入っていない。
さらりとしたスープ状のカレーだ。
だからこそ、大根がとてもよく合う。
さっぱりとして、日本の煮物などにも通じるような優しさもあるカレーだ。

幾層にもなった心

「どうぞ、セドゥーラと言います。」
生クリームかアイスクリームと、
ベージュの粉のようなものが層になっている。
クッキーかビスケットを砕いたような感じだ。
添えられた小さなスプーンですくって食べてみた。
アイスクリームほどではないが、冷たい。
少し懐かしい味わいの生クリームと、砕いたビスケット。
シンプルだが、その分大人も子供も好きな味だと思う。

おがくずのスイーツ

円が持ってきたのは、パイのようなお菓子だった。
ぎっしりとトレイの上にのったものを切り分けて、
小さいのを一切れだけ皿に乗せる。
一口で食べてしまえるほどの大きさだ。
パイの中に入っているのはクルミだろうか。
パイはシロップで濡れていた。
噛むと甘いシロップがじゅわっと口の中に広がった。
なぜ、小さいサイズに切り分けられているのか、
即座に分かった。甘い。
頭が痛くなるような甘さだ。

思い出のバクラヴァ



聞いたことも見たこともないスイーツばかりだった。
どんな味だろうという探求心のが大きかった。
ロシア風のチーズケーキは食べてみたい・・・。




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