〇ランチ酒/原田ひ香 2 おいしい人 2024年1月7日 08:52 先に、味噌汁と小皿が運ばれてきた。さらにはぽっちりの香の物、のりの佃煮、小さな冷奴が盛られている。薄味の佃煮をなめながら飲んでいるところに、肉丼がやってきた。花開いている。薄切りの牛肉が丼の上に隙間なく敷き詰められて、薔薇のように花開いている。その上にガリリと黒コショウがたっぷり。武蔵小山の肉丼牛肉といっても、ピンク色のローストビーフ丼的なものではない。薔薇色のタタキだった。まずは真ん中の黒コショウのたっぷりかかった一切れを口に入れ、芋焼酎を飲む。かなりしっかりと噛み応えのあるタタキは、肉の旨さをダイレクトに感じさせる。そして、それがまた、焼酎によく合う。肉の下には、キャベツの千切りが薄く敷いてある。それとご飯を箸でつまんで肉でくるんだ。その甘めのたれも肉とご飯に合っていい。武蔵小山の肉丼普段、こういう本格ハンバーガー屋では、アボカドバーガーを頼むのだが。けれど、メニューには定番のクラシックの他に、ジンジャーポークやらパインやら、さまざまなハンバーガーがあって、目移りする。クラシックと一口に言っても、店によってさまざまだ。ここのはグリルオニオン入りで、グリルドクラシックバーガーになると、トマトが入ってくるらしい。クラシックバーガーが一番シンプルなのかと思ったら、その下にただのハンバーガーがあって、こちらはオニオン抜きのトマト入り。その下のエッグバーガーというのは、目玉焼きが入っているのかな。とるすると、ちょっと佐世保バーガー風なのかもしれない。ピリ辛チリもある。ベーコンチーズバーガーも。中目黒 ラムチーズバーガー紙の袋を開いて、一口目をかぶりつく。味の濃い、力強いバーガー。羊特有の臭みはほのかに、でも、確実にラムの味がする。尋常じゃない量の肉汁が落ちた。しばらくは、息もつかず、ハンバーガー、ビール、ハンバーガー、ビール、時々ポテト、ビールの反復運動を繰り返した。半分まで食べ進めた頃に、テーブルの上に黄色い容器が置いてあるのに気付いた。ハインツのマスタードだった。さて、アメリカのマスタードは?とハンバーガーに注意深くたらす。酸味が強くて辛みがほとんどない。中目黒 ラムチーズバーガーイカ耳、ゆず塩だって。日本酒に合いそうだ。おお、花咲蟹の味噌汁。花咲蟹は根室で水揚げされ、地元にしか出回らない、めずらしい蟹である。「すみません。イカ耳のゆず塩、サーモン、花咲蟹の味噌汁、お願いします。」サーモンはどこでにでもあるけれど、北海道発祥の寿司屋で食べるのはまた格別な気がする。寿司の注文とほぼ同時に、冷酒が来た。いい酒だ。さわやかだけど、しっかりしたうまみもあって、寿司に合う。何より量が多い。丸の内 回転寿司てらてらと光る、鯖の半身。ふっくらと焼き上がっているのが見ただけでわかる。添えられた大根おろしに醤油をかけて、祥子も箸を取った。鯖とご飯を口に含んで、思わず声が出てしまう。焼き魚はなんでもうまいが、炭火で焼き上げたこの店のは格別だ。脂っこい鯖とごはんを一緒に食べる。そしてビールを飲む。中野 焼き魚定食大きな皿に刺身が四種、それとは別に紅葉おろしとポン酢が添えられた白身の刺身、煮魚、野菜と魚の天ぷら、白菜の漬物、お汁、そしてご飯。トレーに入らず、はみ出すほどの品数だ。升入りの冷えたグラスも届いて、とくとくと一升瓶から注がれる。グラスのみならず下の升からもあふれそうなほどたっぷりと。阿倍野 刺身定食目の前にあるのは牛タンだ。こんがりと焼かれて、つやつやと光っている。その横の小椀にとろろ、小皿に辛味噌と刻んだ野沢菜、透き通って長ネギのいっぱい入ったスープ、そしてどんぶりの麦飯。祥子は箸で牛タンを一切れ取り上げる。肉厚で軟らかく、でもこりこりとした歯触り。左手に丼を持って麦飯を口いっぱい頬張る。牛タンと麦飯は最高の相性だ。いったい誰が考えたのだろう。辛味噌をほんの少し箸でつまむ。牛骨とタンでダシを取った優しい汁。底に小さな肉の塊が転がっているのはネギをかき分けなくてもわかっている。半分ほどかじる。焼いたタンとはまた違ううまさ。祥子はここでやっとビールのジョッキを取り上げてごくごくと飲んだ。御茶ノ水 牛タンまず、黒ビールを飲む。日本産のビールだから、強い癖はない。だからか、ここには樽のギネスもあるし、レバーのパテにはパンとクラッカー、オニオンスライスが添えられていた。一見、硬そうに見える細いフランスパンの斜め切りが二枚。口にすると、適度に噛み応えがあって、中はやわらかい。パテはもちろんのこと、パンが美味しい。クラッカーの方にもパテをつけた。薄切りにして水にさらした新鮮なタマネギのスライスものせてみる。ああ、こすると、タマネギがアクセントになって、また味わいが変わる。辛みや臭みのないタマネギなのに、こんなに変化するんだ。ビールにも合う。新宿 ソーセージ&クラウトそうしているうちに、ソーセージが届いた。長めで白っぽいソーセージにたっぷりのザワークラウトがついている。まず、ソーセージを一口。皮はぱりぱりと歯ごたえがあって、中身は軟らかい。これは意外。全体に硬めのあらびきウインナーのようなものかと思っていたのに。でも、中の軟らかいところ、おいしい。ちょっと上質なパテみたいな感じ。次にザワークラウトを食べる。酸味の少ないタイプなんだ。これだと、サラダの代わりにたくさん食べられそう。だから、量が多めなのかも。新宿 ソーセージ&クラウト「肉骨茶(バクテー)は豚のスペアリブを煮込んだスープなんですけど、肉の量で値段が変わります。」メニューは他に、肉骨茶を使ったカレーや、スープへのトッピングがあるだけで、ほぼ肉骨茶だけの店のようだった。「バクテーとご飯のセット、トッピングは油条(ヨウテイヤオ)、それから、タイガービール、ください。」ここは生ビールだけではなくて、シンガポールタイプのタイガーなのだろう。油条は中国圏特有の揚げパンと油揚げの間のような食べ物だ。スープに浸して食べる。ビールとそれをちびちびやっている所に、肉骨茶が運ばれてきた。濃い茶色のスープの中に、大きな骨付き肉が二本入っている。たっぷりと肉が付いている。他に白いご飯と油条の入った小鉢、小さな野菜サラダ。十条 肉骨茶(バクテー)しっかりした豚のスープに、漢方薬の匂いがある。同じスペアリブのスープでも漢方薬で煮込むのがマレーシア流。肉のスープそのものを楽しむのがシンガポール流だ。それから、油条をスープに沈めた。オニオングラタンスープに浮かべるパンのように、スープを吸ったところを食べるのだ。十条 肉骨茶(バクテー)真っ白な洋皿に大きな黄色のオムライス。しっかりと焼かれた卵焼きに、チキンライスがくるまっている。ぷりんと太った形状も好ましい。真っ赤なトマトケチャップが一筋すーっとたらされている。脇にはこれまた真っ赤な福神漬け。中野坂上 オムライスランチ酒シリーズが始まってしまった。これは、私がいちばん読み込んでメモを取った一冊だと思う。日本にこんなにたくさんの美味しい物があふれているんだと再認識できる本。 ランチ酒 (祥伝社文庫) www.amazon.co.jp 759円 (2024年01月07日 08:52時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する ダウンロード copy #料理 #本紹介 #原田ひ香 #ランチ酒 2 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート