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〇気まぐれキッチンカーで昼食を/鹿ノ倉いるか

凌平さんは軽くトーストしたパンの片側にマスタードを塗り、
もう片側に完成させたデミグラスソースをたっぷりと塗った。
カツの断面はミディアムレアのルビー色で実に鮮やかだった。
サクッとした歯触りで、簡単に噛み切れる。
柔らかなビフカツは口の中でほどけるように
肉の旨味を広げていった。

始まりのビフカツサンド

デミグラスソースはすごく濃厚で、
そこに味噌の香りがアクセント程度に効いている。
更にマッシュポテトを入れたことで、
まろやかさとねっとりとした舌触りが生まれていた。
あとから感じる粒マスタードの辛さや
お肉の美味しさを引き立てている。

始まりのビフカツサンド

お肉は蕩けるような感じではなく、
モチモチと弾力があるのに柔らかい。
角煮というトロットロというイメージがあったけど、
あちらはお肉の繊維がややパサついてるので、
私は瑞々しいこちらの方が好みだ。
それにコンフィで香りづけをしているからか、
お肉にはまるで臭みがない。
豚肉と甘じょっぱいタレの相性も素晴らしかった。
高菜や椎茸などの具を混ぜて食べると、
さらに複雑な味に変貌した。
様々な味が混在しているけれど、しっかりとまとまりがある。
これは恐らくタレの力強さが成せる業なのだろう。

始まりのビフカツサンド

チキンはシナモン、クミン、五香粉(ウーシャンフェン)
などのスパイスと、醤油とアゴだし、
生姜の和風な味付けを下味をしている。
いずれも主張しすぎないので、
複雑ながら癖のないまとまりのある味に仕上がっていた。
そこにこんがり焼けたアーモンド、カシューナッツ、
ピスタチオの香ばしさが加わり・・・

迷子の欧風カレーライス

にんにくと唐辛子の香りを移したオリーブオイルで
みじん切りにした玉ネギをじっくりと炒める。
その後長ネギ、万能ネギを投入し、
更に弱火で二十分弱炒める。
それをソフリットというそうだ。
この工程は時間がかかるので予め仕込んできてある。

迷子の欧風カレーライス

タルタルソースにはレモンが絞られているようで、
まろやかさの中に爽やかな酸味がある。
甘酸っぱいチキンとの相性が抜群だ。
濃厚で強い味のチキン南蛮だと。
飽きが来るだろうけど、
間に温野菜を挟むことで
口の中がさっぱりするのもありがたい。

初恋のチキン南蛮

今回のオムライスは緑、白、赤の三色ソースをかけた、
イタリアの国旗を模したものとなった。
赤はトマトソース、白はキノコのホワイトソース、
緑はほうれん草のソースである。
イタリアというイメージで、
はじめは緑をバジルソースにしたのだが、
香りや癖が強すぎて子どもが嫌うおそれがあったので、
ほうれん草のソースへと変更になった。
白は凌平さんの自信作でもあるキノコのホワイトソースだ。
通常キノコのホワイトソースといえば
キノコの形の分かる大きさのものを使用するが、
凌平さんの作ったソースはみじん切りにしてある。
しめじ、まいたけ、エリンギの三種類を
形が分からなくなるまで細かくし、
じっくりと炒めて香りを引き出している。
仕上げに、トリュフペーストを少し加え、
更にキノコの風味を効かせた逸品だった。

独り立ちのオムライス

シェフはさっそく調理をはじめていた。
ひき肉はほぐして炒め、
パチパチという爆ぜるような音がし始めてから
タマリンド、甜面醤油などの調味料を入れて味付けをする。
シェフが肉みそを作っている隣では、
凌平さんがきゅうりを千切りにしていた。
ぬるま湯で戻した麺を容器に盛り、
その上に肉みそをかける。
そこに細切りのキュウリ、くし切りにしたレモン、
砕いたローストピーナッツを盛り付ける。

逆境のジャージャー麺風パッタイ

普通のジャージャー麺と違い、
肉みそに優しい甘みと爽やかな酸味が感じられた。
恐らくこれはタマリンドを入れているからなのだろう。
そのまま舐めたら個性が強すぎたタマリンドだが、
加熱して料理に使うとこんなにも上品な味になるから不思議だ。

逆境のジャージャー麺風パッタイ

十勝帯広丼とはその名の通り北海道の名産料理で、
分厚めの豚バラ肉を炭火で焼き、
ウナギのかば焼きのような甘めのタレをかけて食べるのだそうだ。
しかし今回はネギ塩レモン豚丼同様、
薄切りの豚バラ肉を使用する。
分厚い豚バラ肉は硬いので
年配の方や子供には噛み切りにくいためだ。
たれはまず砂糖でカラメルソースを作り、
それを元に醤油、酒、みりんを加えて煮詰めて作る。
豚バラ肉を炭火で焼かない代わりに
カラメルを使うことで芳ばしさを出すためだ。

やり直しのファミリーランチ



キッチンカーの中で作られるものに
制限なんてないんだろうなあ。



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