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平成ガールズサマリー・改/コギャルからインスタグラマーまで

令和を迎えてさっそく時代の変化が激しくなり、平成時代のカルチャーが見直されることも増えてきた今日この頃。
ここで、以前に雑誌(『spoon.』2017年12月発売号)に寄稿した、平成の女の子についてのコラム「平成ガールズサマリー」とイラストを、
再編してまとめておきます。

イラストについては、2019年の春にTwitterでも投稿していますが…

ここで今あらためて解説してみますので、
平成の女の子ファッションに思いを馳せるきっかけにしていただけたら嬉しいです。

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◎ 平成初期 /1990年代〜2000年代前半

原宿をはじめとするストリートに自由なファッションがあふれ、『FRUiTS』『Zipper』『CUTiE』『KERA』など青文字系雑誌が狂い咲いていた時代。
一方その頃渋谷ではギャル文化が爆誕。

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*シノラー:
シノラーブームの頃、私は小学生になったばかりでアニメ『こどものおもちゃ』の主題歌の、篠原ともえ「ウルトラリラックス」(石野卓球プロデュース)の印象が鮮烈でした。
その篠原ともえを真似した、ド派手で不思議ちゃんなファッションが社会現象に。
おもちゃのようなビーズアクセサリー、ランドセルに羽など、これでもかとカラフルに飾りつけていることが特徴です。
ファッション的には「デコラ」とほぼ同じですが、シノラーは「クルクル〜」とか「ぐふふ〜」とか「◯◯ですぅ〜」など篠原ともえの発言やキャラクターまで意識して、テンションも高めというところがポイント。

*ヴィヴィ子:
オーブマーク、ロッキンホースの靴、ラブジャケット…そんなVivienne Westwoodのファッションアイテムを着こなす愛好家たち。
全身ヴィヴィアンという強者もいますが、MILKやCOMME des GARÇONSなど、日本のストリートで人気のブランドと組み合わせている子が圧倒的多数。
スカーフやソックス(ちょっと頑張ってバッグやアクセ)など、安めだけど目立つヴィヴィアンアイテムを一点豪華主義で投入する、というプチプラテクニックもあったようです。今でも真似できる!
ヴィヴィ子といえば、眉上ぱっつんにツインテール、という印象が強いのは千秋さんの影響でしょうか。

*ロリータ:
2000年代前半、私がロリータ文化に親しむきっかけになったのは、ロリータさんたちが個人で作っていたホームページでした。
お茶の間でも話題になった映画「下妻物語」の深田恭子を見ても感じるように、当時のロリータは細眉、金に近い茶髪、小麦色の肌にパールピンクのリップなど、ギャルっぽさが残る印象。

*コギャル:
「ギャル」よりさらに若い女子中高生たち=コギャルは、雑誌『egg』を発端に社会現象となったと言われていますが、その頃の小学生だった私たち世代にとっては、藤井みほなの漫画『GALS!』が教科書でした。
ちなみに、小麦色の肌に茶髪&細眉、ミニスカにロングブーツなど、コギャルと共通するポイントが多い有名なファッションとして「アムラー」がありますが、これは安室奈美恵を意識しているのが何よりの特徴。
そして10代からOL層まで、コギャルよりも年齢が幅広い印象もあります。

◎ 平成中期 /2000年代中〜後期

インターネット、ケータイが普及し、女の子たちは自分の好きなものや思っていることをブログや携帯サイトでより気軽で発信できるように。
青文字系/赤文字系の区別もまだはっきりしていた時代で、カリスマ読モも群雄割拠。

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*エビちゃんOL:
エビちゃん=蛯原友里のファッションやライフスタイルがモテるのは、当時も今も変わらない気がしますね。
『CanCam』の人気モデルで、ドラマやCMにも引っ張りだこだった頃のエビちゃんは、ブラウン系の巻き髪、花柄のワンピース、パステルカラーなどの「エビちゃんOL」スタイルを確立。
デザインは甘口でありながら、同性(&自分)ウケよりも、男性ウケを重視するのが最大ポイントです。
「赤文字系」の代表的なスタイルとしてもわかりやすい例で、当時の「量産型(女子大生)」といえばこのタイプでした。

*エロかっこいい系:
エビちゃんがピンクならこっちはモノトーン。
ボディラインを強調し、胸や腕などを露出する服に、セクシーなダンスや世界観を披露した倖田來未が、「エロカッコいい」と呼ばれました。
「エロさ=女!!」を恥じらうことなくアピールしつつ、色味はダークめの辛口ファッションに身を包んだのは、のちの「おフェロ系」との大きな違い。
結果として、男性というよりも同性の憧れを集めたスタイルでした。
この頃、中高生の世代もエロかっこいい系に憧れて、制服の着こなしやヘア&メイクなども、かわいい系よりクール系が好まれる傾向に。

*森ガール:
mixiのコミュニティから派生した「森にいそうな女の子」のファッションで、森ガール専門誌も続々創刊するほどのブームに。
べつにアウトドア好きではない。カリスマは蒼井優。
レースやフリル、動物など少女的なモチーフと、コットンのキャミソール、リネンのワンピース、アースカラーのストール、かぎ編みのベストなどを重ね着して「ずるっ」「だらっ」とした旅人ちっくなシルエットに仕上げます。
手先が器用な人も多く、元・森ガールはきっと今ごろ、雑誌『リンネル』などを愛読し、「ていねいな暮らし」を楽しんでいるのでは。

*青文字系:
エビちゃん的な「赤文字系」ファッションと対をなす、モテよりも個性と同性ウケを重視したスタイルのこと。
青文字系の人気ファッションは時代によりさまざまですが、この時期の青文字系ファッションは、ルーズめな古着の重ね着スタイルが定番でした。
ちなみにこの絵を描いた時にイメージしたのは、「UKIちゃん(SHAKALABBITSのヴォーカル、『Zipper』の常連) に憧れる女の子」。
ニアリーイコール原宿系で、パンク系、ロリータ系も総じて青文字系のカテゴリです。
aikoっぽいファッションはだいたいざっくり青文字系だ。

*オタク女子:
「萌え~」というフレーズの流行、中川翔子(しょこたん)のブレイク、メイドカフェブームなど、秋葉原カルチャーがメジャー化し、オタクとカワイイの親和性が高くなってきた頃。
ぱっつん前髪、黒髪ツインテール、ニーハイソックスなど、萌え要素をファッションに落とし込んだオタク女子が増えました。
自らオタクを公言しつつライブパフォーマンスを行なっていた、声優・歌手の桃井はるこはカリスマ的存在。
イラストは初期でんぱ組をイメージ。趣味の合う男性には好かれるスタイルで、「オタサーの姫」なんて言葉ものちに生まれましたね。

*姫ギャル:
『小悪魔ageHa』などの層から広まった、盛り盛りデコラティブなギャルスタイル。
カリスマ的ブランドはJESUS DIAMANTE。
ギャルといえば辛口ファッションのイメージだったのが一変、ロリータに近いお姫様のような服の一派が生まれました。ただしロリータと混同するのは要注意。
姫ギャルは露出度が高め、ヘアスタイルもage嬢的な盛り髪が大きな違いです。
「夜の街」の女の子たちが、リボンやレース、フリルなどロリータに近いデザインの服を身につける…という今の「地雷系」の先祖は、この方々だと思います。

*フェアリー系:
青文字系ファッションがシンプル&カジュアル化してきた…?というムードに反旗をひるがえした妖精たち。
リメイクした古着や、ハンドメイドのファンシーなアイテムを集めた「SPANK!」や「NILE PERCH」など、パステルでファンシーなお店が人気ショップ。
高円寺の古着店「CULT PARTY」も熱狂的なファンを集め、のちの「ゆめかわいい系」にも繋がる儚げなダークファンタジーの系譜をつくりました。

◎ 平成後期 /2010年代 〜

青文字系/赤文字系のカテゴリがほぼ消滅、雑誌文化は衰退してゆき、SNSの時代へ。自己プロデュースを制する者がファッションを制する!
画像加工アプリと親和性の高いファッションやメイクが流行しはじめる。

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*きゃりー系:
00年代末、停滞したかに思われた原宿系ファッションに彗星のように現れたアイコンが、元読者モデルでアーティストのきゃりーぱみゅぱみゅ。
ブレイク後は、きゃりーを真似して大きなリボン、目玉や骨など「グロかわ」モチーフ、おもちゃっぽいアクセサリー、チュールのパニエなどを身に纏ったカラフルな女の子たちが街にあふれました。
デコラ×フェアリーをカジュアルに、子どもでも取り入れやすくした感じ。
ちなみに歌手デビュー後のきゃりーの衣装デザインやアートワークを手掛けた増田セバスチャン氏は、90年代から原宿カルチャーを支えたデコラ御用達ショップ「6%DOKIDOKI」のプロデューサーでもあります。

*おフェロ系:
雑誌『ar』が提唱したことから火がついた、「オンナっぽさ」をアピールするおフェロ系は、「雌ガール」という自称もあり、ディテールは変わりつつ今もモテ系として確固たる地位を築いています。
モデルとしてのカリスマはやっぱり森絵梨佳かな。
メイクアップアーティストのイガリシノブが伝授するおフェロメイク(火照ったような血色感を演出する)を施し、身体の丸みとメリハリを強調するようなリブニットや背中が開いている服などに身を包んでいるのが特徴です。
ちなみにイガリシノブは90年代に読者モデルとしても活躍していた元ヴィヴィ子&青文字系女子でもありましたね。

*オルチャン:
韓国語で「最高にかわいい/かっこいい(=顔がいい)」を意味する言葉で、日本では韓国女子に影響を受けたファッション全般のこと。
そのスタイルは流行によりさまざまですが、2010年代後半頃は、スポーティーなスウェット、プリーツミニスカート、ポロシャツなどスクールガール風アイテムをガーリーにアレンジしたようなファッションが人気でした。
韓国アイドルやモデルを真似したヘアスタイルやメイクも特徴で、モデルの「テリちゃん(カンテリ)」は日本のファッション誌でもたびたび表紙を飾るほどカリスマ的存在に。
そして美容整形も一気にカジュアル化!

*ぺこガール:
『Zipper』や『Popteen』などで読者モデル「ぺこ」(オクヒラテツコ)のファッションをお手本にした女の子たちがぺこガール。
80年代〜90年代の映画やドラマに出てくるアメリカのティーンエイジャーを意識したファッションで、ウェーブヘア、カラフルな色使い、スタイルアップを目的としないシルエットなどがポイントです。
ファッションだけでなく、『クルーレス』などアメリカのティーンファッションがかわいい映画や、マイリトルポニーやバービーといったレトロトイなど、カルチャー面でもちょっとしたブームに。

*ゆめかわいい系:
ドリーミーでフェティッシュなガーリーファッション。
そのどちらも兼ね備える人気ブランドはKatieやMILKでしょう。
その言葉を生み出した雑誌は『LARME』で、広めたのはモデルのAMOだと思われます。
ロリータのようにある程度決まったブランドやコーディネートの様式などはなく、雰囲気重視のスタイルですが、パステルカラー、ランジェリーアイテム、天使やユニコーンモチーフなどが特徴。
その系譜としては、00年代半ばのフェアリー系、森ガール系、ロリータ系のそれぞれの路線が、より取り入れやすいスタイルとして融合したものなのではないかと私は思っています。

*ネオギャル:
外国人風の新しい(=ネオ)ギャルスタイル。
ハイトーンヘア、海外風メイク、ネオンカラーの服などが特徴で、それまでのギャルよりも格段に「男ウケより自分ウケ!」なところがポイント。
英語が堪能で海外カルチャーに精通していることも多く、自己プロデュースにも長けていて、ギャル=おバカという固定観念を覆す存在。
もはや「映え」だけのインフルエンサーを超えて、日本と海外をつなぐオピニオンリーダー的な立ち位置になっているのがネオギャルです。

*インスタグラマー:
ブロガーの時代から、インスタグラマーの時代へ。
ファッションも「インスタ映え」と、一目でわかりやすい「系統」がキーワードとなっていきます。
LARME系のガーリーファッションなどはその要素を兼ね備えるため、インスタグラマーの人気ファッションに。
ここに、アイドル(ジャニーズ、K-POP)や声優など、熱烈に「推し」を愛するオタク女子も流入し、やがて、新たな「量産型女子」の波が訪れるのです…!

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さて、ここまでまとめてみましたが、
これらのイラストを描いたのが2017年末なので、
その後に目立ち始めた「量産型」「地雷系」「チャイボーグ」などは入っていません。
また、今ではギャル系の流れでも「令和ギャル」なる懐古的かつフェミニズムにも通じるような一派が生まれていますよね。

ちなみに「ロリータ系」や「青文字系」は、その中にもさまざまなカテゴリがあって、平成時代のファッションという大きなくくりではとても描ききれず割愛しました。
そのあたりは、ロリータや青文字系に関するnoteの別の記事でも深掘りしていくので、また読んでください!

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