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さらにロリータを楽しむ場所 令和の「お茶会」事情

ロリータさんたちが長年積極的に作ってきた、好きなものを共有できる人たちと一緒に楽しめる場──その代表的な場のひとつが、「お茶会」です。
たとえ普段着ではあっても、日常生活の中で仲間を見つけたり、常に着たまま仕事をしたり家族と関わったりするのはなかなかむずかしいことも多いロリータファッション。
だからこそ、お茶会はロリータさんたちの貴重な出会いと情報交換の場として機能してきました。

お茶会といえば、ブランド主催のものや、個人のロリータさんが呼びかけて開催するものが目立ちますが、ロリータのお友達と一対一でお茶する「ロリータデート=ロリデ」も、時にはひとりでお茶することも、広くお茶会のカテゴリに入れられている場合もあります。ぬいぐるみやドールと自分だけのお茶会、なんていうのもロリータらしいですね。

そんなお茶会は今、どんな様子で開かれているのでしょうか。最近私が見てきたロリータお茶会シーンについてご紹介します。


ロリータデビューしたい人のためのお茶会

ロリータファッションに身を包み、カフェやレストラン、イベントスペースで集まるというのがお茶会の基本スタイル。
紅茶やケーキなどを楽しんだり、写真を撮り合ったりするだけでなく、さまざまな企画が用意されているものもあります。

たとえば、先日お邪魔した「おでかけロリィタさん」というイベント。

これはヘアサロン・STOCKを拠点に、ロリータ服レンタル、プロによるヘアメイクとお茶会がセットになった企画でした。
ロリータファッションをしてみたいけど、お洋服も持っていないし、一緒に楽しめる友達もいない……そんな人にとって、 ロリータの世界の扉を開くきっかけになってくれるようなイベントです。
このイベントを主催したのは、ロリータさんに人気のブランドでモデルとしても活躍しているMayukaさんと、ヘアサロンSTOCKのクリエイティブディレクターを務める美容師のIMARIさん
普段からSNSを通して、ロリータをはじめバラエティ豊かなかわいいファッションを発信しているふたりです。
そんなふたりが提案するロリータ体験は、ブランドやカテゴリの枠を超えて自分なりの大好きなスタイルを見つけることをサポートしてくれそう。

ぬいぐるみやパステルカラーの小物で彩られたSTOCKの店内は、ロリータさんやかわいいもの好きの女性、推し活のためのヘアアレンジに来るお客さんなどで賑わい、ハンドメイドのヘッドドレスやリボンなどアクセサリーも売られています。
原宿にほど近いヘアサロンで、カリスマ的存在のスタイリストさんに施術してもらい、アクセサリーまでお買い物して大好きな世界の一部になれる……雑誌が主な情報源だった2000年代には憧れだったこの感じ。
今も新しくそういう場が生まれて機能しているんだな、と思うとわくわくしてきます。
参加者がレンタルできるのは、Mayukaさんの私物のワンピース、ジャンパースカート、ブラウス、頭もの、靴下、パニエ。
プランの参加者は、Mayukaさんが実際に愛用してきたさまざまなブランドのお洋服を見ながら、なりたいイメージに合わせたり、似合いそうなおすすめを聞いたりしてお洋服を選んでいました。
「せっかく参加するなら思いっきり甘々なロリータ服が着てみたい!」というお客様が多いようで、ふだん自分では買ったことがないようなフリル全開のスウィートなお洋服を選んでみたり、着たことのない色に挑戦したりして、新たな自分に出会った様子。
仕上げに、IMARIさんの手によってロリータにぴったりなツインテールやハーフツイン、巻き髪などのスタイリングをしてもらい、Mayukaさんからはポイントメイクのトッピングを。
ひとりだと、お洋服にヘアメイクが合ってるかな?とか、このまま外を歩いて変じゃないかな?などと気になってしまうこともあるかもしれませんが、 ロリータの先輩のような人にサポートしてもらうのは、さながらロリータ個別レッスンのよう!なんだか一段と自信を持てるような気がします。

でもやっぱり、一時的に借りるだけでなく、自分のものとしてお洋服やアイテムを手元に大事に集めていく、というのがロリータファッションの醍醐味でもあります。
こういう場でいろいろなお洋服やブランドに間近で触れたら、これから自分の好きなファッションをさらに突き詰めていけそう。

思い思いのロリータファッションに身を包んだら、お茶会プランの参加者はロリータファッションとも相性ばつぐんのQ-pot CAFE.に集合です。
アクセサリー&アパレルブランドQ-pot. 表参道本店に併設されたこのカフェは、アクセサリーみたいなスイーツやアフタヌーンティーセットなど、唯一無二のかわいさのメニューを提供している人気のお店。
お茶会って、誰も知り合いがいない中にひとりで参加しても大丈夫かな……とドキドキすることもありますが、主催メンバーも参加者ひとりひとりとお話してくれるので心配は無用。
とくに今回は8人ほどでテーブルを囲むアットホームなお茶会だったので、主催のMayukaさん&IMARIさんとお話したり、お互いに写真を撮り合ったり、「そのアイテムどこのですか?」などとコーディネートの情報交換をしたり……和やかなムードで、みんな思い思いにアフタヌーンティーを楽しんでいました。

Mayukaさん私物のロリータ服を貸し出し!
ロリータ服の着方をレクチャーするMayukaさん
IMARIさんによるヘアアレンジ
アフタヌーンティーを囲んで写真を撮り合う参加者の方々


個人主催の小規模なお茶会は、こういったロリータ体験のように気軽に参加できるものもあるし、ブランドやお洋服など、ドレスコードを設けて集まるものもあります。
ブランド合わせだけでなく、さらに細かく、たとえばBABY, THE STARS SHINE BRIGHTの「エリザベス」や「ミルフィーユ」など人気の伝統的なシリーズで合わせたり、Angelic Prettyのオリジナルプリントで合わせたり……。
ロリータの長い歴史の中で、「◯◯ロリ」というさまざまな細かいカテゴリが自然発生的に認知され、定番人気のシリーズや「型」、プリントなどが伝統のように愛されていることが、お茶会の楽しみを広げているともいえるでしょう。

情報収集や輪を広げるためのお茶会

ブランドやメディア主催のお茶会は、お洋服の新作発表会としての場でもあります。

先日、原宿のレストランSolomon'sで開催されたロリータ&ガーリーファッションメディア『tulle』主催のお茶会&ファッションショーに参加してきました。

ドレスコードは「Rose」で、ブランドやテイストなど細かい縛りはなくロリータファッションでなくても参加可能。
ファッションショーの参加ブランドは、デコラティブな甘ロリの代表的なブランドであるAngelic Pretty、ゴスロリを一躍広めた長い歴史を持つMoi-même-MoitiéATELIER BOZMIHO MATSUDA
そして甘ロリだけでなく和ロリ、ナース風などさまざまなテイストのお洋服を長年展開してきたMetamorphose temps de filleや、Metamorphoseとの共同のお茶会をいち早く開催したという歴史をもち、オリジナルプリントや手作業で作られた小物も人気のTriple*fortune
そして、イラストレーターとコラボしたオリジナルプリントが人気の気鋭ブランドRoyal Princess Alice
そんな多種多様なテイストのロリータブランドのファッションショーが一挙に観覧できるお茶会でした。
ファッションショーとセットになったお茶会は、ブランドの新作を間近で見ながら、お客さん同士でわいわいお話できるというのも楽しいポイント。
お洋服はもちろん、頭ものからソックス、靴などディテールまでじっくり見て写真も撮ることができ、生地の質感までわかるので、後からゆっくり考えながら「あのときに見たあのアイテムを買おう!」と参考にするロリータさんも多い様子でした。

他にもブランド主催のお茶会の場合、その場で新作や小物などが購入できたり、デザイナーやモデルと交流できたりする機会もあります。
40人以上など大人数が参加するお茶会では参加者がいくつかのテーブルに分かれることになるので、初対面の人とも話せるかな?とドキドキしそうですが、そんな人のために、主催側でさまざまな工夫が取り入れられているお茶会もあります。

 ロリータに特化した即売会「Gothic and Lolita Market(ゴスロリマーケット)」を主催している山田菜々子さんは、ゴスロリマーケットの10回記念パーティーを開催した際、「1人3枚のカードを持って、素敵なコーデだなと思った人にメッセージを書いて渡す」という企画を取り入れ、初対面の人同士でも自然と会話が生まれるように考えたそう。
また、小規模のお茶会を主催する場合は、一緒のテーブルなどにつくメンバーを実はよく考えてセッティングしていることもあるという裏話も語ってくれた山田さん。
「お茶会で全員が楽しめるかどうかは、主催の力量が試される!」ともいえそうです。

あなたと私だけのロリータデート(ロリデ)

大人数が得意ではない、という人には、 ロリータさん同士、一対一でお出かけするという選択肢も。
ロリータファッションで揃えて一緒にお出かけすることは「ロリータデート」、略して「ロリデ」と呼ばれてきました。
ふたりとも好きなロリータファッションで会う、それだけでロリータデートですが、たとえば甘ロリやゴスロリなどのカテゴリで合わせる、ブランドを統一する、ブランドの中でも同じシリーズのお洋服で合わせる、小物だけお揃いにする、あるいは全身完全にお揃いのお洋服にする、などさまざまなアイデアがあります。姫ファッションと皇子ファッションで合わせるのも、ロリータならではの楽しみ方です。

大人数のお茶会よりも予定が立てやすく、フットワーク軽めに移動できるのもロリデの魅力。
お茶会だと、参加者を募ったり、カフェやスタジオなどを予約したり、いろいろな利用許可を取ったりする必要がありますが、ロリデだとそのハードルが下がります。
たとえば『ゴシック& ロリータバイブル』vol.41では「私達のロリィタデェト計画書」という特集が組まれ、東京ディズニーランドとディズニーシーでのデートコースが提案されていました。
ウィッグやパニエなどを着用することも多いロリータでテーマパークに行くのはコスプレと勘違いされがちという難点もありますが、パークやキャラクターをイメージした「バウンドコーデ」や「概念コーデ」を考えるのもロリータの醍醐味。 ロリータとコスプレが混同されがちな問題については、まだまだ議論は尽きませんが……。

ロリータデートの注意点は言うまでもなく、インターネットで出会ったよく知らない相手とは、会う前に慎重に検討することです。
他のお茶会やイベントなどで会ったことがある人と仲良くなってロリデする、というパターンが多いようですが、確かにそういった複数人でのプロセスを踏んだほうがトラブル回避になりそう。
また、もともとロリータじゃなかったプライベートの友達をロリータの世界に誘い込む……というのも素敵かもしれません。

ロリータ服、どこに着て行く?

個人的に私が好きなのは、「ロリータじゃないけどファッション好き」な友達とのお茶。
ぜんぜん違うものが好きでも、それぞれ好きなものへの情熱が強い。お互いの好きな服を着たいとは思わないけど、気持ちは理解できるし、リスペクトしあえる。 そんな相手から真剣な刺激を受けるのが好きです。
ロリータの桃子とヤンキーのイチゴの友情のような、「下妻物語的お茶会」ともいえるでしょうか。

好きな服を着ていると、周りから浮いたり、好奇の目を向けられるなど嫌な思いをすることもありますが、やっぱり自分の好きなものをわかってもらえたり、好きなものを共有できる人と出会いやすくなるという喜びのほうが勝ります。

「お茶会」はロリータさんの貴重なリアルでの出会いと交流の場。
買っても着て行く場所がわからない、と迷う人も多いロリータファッションですが、お洋服をお迎えしたら、そのお洋服を着て参加したいお茶会を探してみるのも、ロリータというファッションならではの楽しみです。
あるいは逆に、着ていきたいお茶会をイメージしてお洋服を選んでみる。
そうして一歩踏み出したら、ロリータの世界がさらに広がっていきそうです。

(大石蘭)


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