名前はまだない
身近に少し歳の離れた人がいる。
帰りの時間が合う時は、何故か決まってしばらく立ち話をしてしまう。
初めて話した日、自己紹介を沢山してくれた。
自分の生活とは、真逆な話ばかりでとても面白かった。
彼は、きちんと人の目を見て話をする人だった。私は、あまり人の目を見て話していないことに気づいた。
初めて会った時、ドキッとしたのをぼんやりと覚えている。
凄く頑張った後の匂いがしたことも覚えている。
名前が素敵で家族に愛されて育ったのだろうと思う瞬間が沢山ある。
その人が家族を大切にしていることもわかる。
彼は、自由奔放な知人と似た匂いがする。
その知人に私は憧れている、今だから思うことのできる憧れ、ヤンチャな人。
私は"物分かりがいい"が何かを知ってしまっているからか完全な自由にちょっぴり憧れ、彼に惹かれた。
私は、好きな曲を何度も聴く、そんな人間。
未知で面白い彼に夢中になってしまった。
でも、夢中になりすぎることは良くない気がするのでやめようと努力した。
ある日、いつものように立ち話をし、話の流れで一緒にあるお店へ行った。
何度も行ったことがあるのに、一緒に行ったコーナーを見るのは初めてだった。
なんでも聞いたら、なんでも教えてくれた。
彼が、私と同じ方向を向いて歩くことを少し嬉しそうにしていて尻尾を振る犬に見えた。
私も楽しかったが、その気持ちは伝えなかった。
彼は自分の好きな話を好きなだけしてくれる。
私の知らない話ばかりでとても新鮮で楽しいから好きなだけ聞くけど、話されすぎてたまに聞いていなかった。
置きっ放しでもいい、変わりたくないと思った。
名前のない関係
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