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妄想日記

水曜日の朝は早い。お花を仕入れに行くから。
5月になり、4月とは違う花が市場に並ぶ。
今日は何を仕入れようか。
今日はあの人がくるかな、天気もいいし、まだ湿度も高くないから…仕入れ前、車の中で今日のことを考える。

花瓶にそれぞれ生ける。お花屋さんほど多くはないが、色とりどりのお花が、朝日を浴びてのびのびとしているように見えるのは、心地いい。今日からうちでよろしく頼むね〜と声をかける。お花は話しかけると綺麗になると何かの本で読んだから。

旦那さんが作ってくれた朝ごはんを一緒に食べながら、ニュースを見る。ほぼ時計代わりである。家の時計はどれもへんてこりんな時間を示しているので、飾りになっている。でもそれが気に入っている。テレビをつけるか、携帯を見ることでしか時間が確認できない。時間をあまり気にせずいられることが、これまた心地良い。

8時ぐらい。仕事へ向かう方たちに、行ってらっしゃい〜と心の中でいいながら店を開ける。早朝に生けた花がさっきよりも高い位置にある朝日を浴びようと背伸びをしているようだ。今日は夏に近い空。少しもくもくふわふわした白い雲が漂っている。

のんびりレジのカウンターにある椅子に腰掛けて読書を始める。まだこの時間はお客さんは来ない。新鮮なお花の匂いを嗅ぎながら、最近ハマっているエッセイを読む。旦那さんはお昼と夜の買い出しに行ってくれた。私は言わば店番のようなものだ。

カランカラン。と店のドアが開く。いらっしゃいませ〜とは言わない。おはようございます〜。と声だけかけておく。今日はいつも水曜の朝に来てくれる、飲食店のお姉さんがきた。いつもうちのお花を店に飾ってくれている。今日はどうしよう〜と沢山なやんで、ガーベラを3つ買っていってくれた。お姉さんのお店は小さな喫茶店で夜遅くまでやっている。たまに休みたい時にお邪魔するのだが、居心地がよくて本を一冊読み切れるぐらいだ。淹れてくる紅茶もとてもおいしい。

なんやかんやいつものお客さんやら、新しい方やら、ちらほらいらしてくれているうちに12時になった。思ったより時間が経ってしまい、今からランチの用意である。売れた花の花瓶を片付けて、小さな机と椅子を3つ置いておく。今日のメニューはスクランブルエッグのホットサンドと、昨日の残りのハッシュドビーフ、季節のランチサラダ。せかせかと用意しているうちに、ママ友らしき2名様がご来店された。次は、こんにちは〜。である。

水曜日はママ友さんらしき方々や、平日休みの社会人の方、学生っぽい方、あとはおばあちゃんたち。水曜日は割と人が来る。週の真ん中だからか、火曜日と木曜日はお客さんが少ない。今度統計でも取ってみるか。

ランチにきて下さったお客様がいなくなり、16時。自宅という名の店の奥からひょっこりと旦那さんが顔を出す。
「夜、4人で吉田たち来たいって」
「何も終わってないから、19時半ごろが嬉しい〜」
「了解」

予約は嬉しいが、さっきまでサンドイッチをもりもり作っていたので夜の用意が全くできていない。とりあえず余った花をしまい、好きな花だけお店ように少し生けておく。旦那さんに洗い物と、夜の下拵えを手伝ってもらい、やっと自分のご飯を食べた。もう18時だった。

カランカラン。
「あれ。ご飯今から?」
常連さんのゆうさんがいつもよりだいぶ早く来た。土建系のお仕事らしくガタイがとても良い。笑顔が素敵だ。今日は仕事が近くで早く終わったから、一軒目から来てくれたようだ。嬉しいが、こういう時に限ってお口にご飯がたらふく詰め込まれている。

わいわい、がやがや。カウンター4席。テーブル3つの小さな店が、今日は密度100%である。同期の吉田と一緒にうちの店で飲むはずの旦那も、私の手伝いでてんやわんやしている。申し訳ないが、楽しい。今日のオススメは、小さいだし巻き卵、ほうれん草のお浸し、たまこんにゃくである。あとは適当にあるもので、言われたものをなんとなく作る。なんとなく作りすぎて、誰が何を頼んでくれたか忘れてしまい、結局いる人みんなでシェアして食べてくれた。コロナが開けたからこそ、できることだなあ、とこんなに忙しいのにこの光景にふわふわと思いを馳せてしまった。

日付が回り、片付けが終わった2時。水曜日は朝が早いので流石に睡魔が襲ってくる。引きづられるように旦那さんにお風呂へ詰め込まれた。溺れないよう湯船はなし。どこまで優しいのやら。明日は何時に起きようかな〜、何を作ろうかな〜、そろそろアクセサリーまた作ろうかな〜りんちゃんが欲しいと言ってくれたしな〜。ぐるぐる。

気づけばベットで倒れていたらしい。
明日、きっと10時起きだな…

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