芸人活動とは○○だった

こんにちは。

今回も、当時どう思っていたかとか、事実はどうだったということとは別に、また時間が経つにつれて感覚が変わる可能性もあるのですが、とりあえず今思っていることを書くことにしました。


20代のときにお邪魔していた事務所では、年上の先輩方に「まだ若いね!」と言われ続けていましたが、今度は自分がそのときの先輩方の年齢になりました。

子どものころからテレビっ子で、一般的な知識や雑学はほとんどテレビから得ていました。
中学生・高校生になると時代の流れもありお笑いにハマりだし、ラジオにハガキを送ったりしているうちに芸人を目指すようになりました。

大学生のうちから事務所のネタ見せやフリーライブ、大学生のお笑い大会にも出るようになり、徐々に生活を芸人にシフトしていきました。

20代も半ばになると八王子の方にある実家から出て都内に1人暮らしをするようになり、生活としてはいわゆる「上京芸人」のような状態になりました。

大学を出てからの10年間で、「バイトをしながらお笑い活動をする」という期間が生まれるのですが、32歳くらいのときに思ったのが、

「20代のころは自分が何をしているのかわかってなかった」

ということです。

急な展開になってしまったのですが、一応伝わるように20代の8年間で何をしていたかを一言で説明すると、「好きで見ていたお笑いのネタを、自分でもやってみる」を継続していただけの8年間でした。

そして、「思うようなネタが生まれない」「外で勝負できるネタが生まれない」という違和感のようなものを抱えたまま、「先輩たちのようにテレビ番組のオーディションにチャレンジしたり、都内で有名なライブにチャレンジしたりする」、みたいなことを何もせずに過ごしていました。


ここでタイトルの話に戻るのですが、
僕が個人的に思ったことは、「芸人活動とはビジネスだった」ということでした。
これは否定的な意味ではなく、「そうとらえるべきだった」と思ったのです。

まだ20代の前半だったと思います。先輩に「君は芸人をビジネスとしてとらえているでしょ。芸人っていうのは生き方なんだよ」と教えてもらいました。

とても尊敬している先輩のひとりだったので、「そうなのか」と素直に受け止めました。それからは、お笑いとか芸人をビジネスの視点で見るのをなるべくやめようと思いました。だって「生き方」なのだから。

もしかしたら、今もその先輩の言葉の意味をすべて理解できていないかもしれません。でもわかる部分もあります。特に当時のお笑いの世界はまだ今に比べれば洗練されておらず、体系化もされきっておらず、昭和や平成初期の文化も引きずっていたと思います。

その点で、「(芸の質が高いことも含めて)芸人としての生き方が魅力的であれば、売れる」という考え方は今の視点で見ても正しいと言えます。お笑い芸人本来の在り方という意味でも。

ただ、僕はやはりこの年齢になって「やっぱりお笑いはビジネスだった」と思ったのです。アイドルもバンドマンもビジネス活動だし、ラーメン屋を経営することも何かの会社を起業をすることも、基本的には同じ陸続きの話だと思いました。

「ネタを作って、人に見せて、いいものを作っていく」
というのが芸人の基本的なサイクルになるのですが、
「ラーメンを開発して、お客さんに食べてもらって、さらに味を磨いていく」
のと、基本的なことは何も変わらないと思いました。

「今人気の家系ラーメンの店を開く」
「醬油ベースで高級感のあるラーメンの店を開く」
「海鮮のだしを使った旨味の強い二郎系つけ麺の店を開く」
という経営的な選択も、

「王道漫才師を目指す」
「演技力で魅せるコント師になる」
「ネタじゃない何かでおもしろいものを発信していく」
ことと根本的には同じです。

「今どういう流れで」「どういうものが人気で」「こういう路線もある」というのを分析して選択するという点では共通点しかありません。

その上で憧れや美学や向き不向きを踏まえて、時には道を一本に絞らずに活動をしていきます。それは「経営方針」とも言えます。
その意味で、繰り返しになりますが「芸人活動とはビジネスである」と思うのです。


もちろん、資本主義社会であるこの世界で生きていく以上、「ビジネス」という概念からは何をしていても根源的には離れることはできないと思います。

芸人にとって「売れる」とは「大金を得る」とほぼ同義ですし、特に現代の「芸人」というものを取り巻く環境を見れば、「浮世離れした人」などというポジションは時代錯誤もいいところです。(もちろん例外はありますが)

売れる前に一時的にそういう状態があったとしても、売れていけば最終的にはビジネスの受け皿によって経済活動としてカテゴライズされます。


僕はそういう「自分がやっているのはそういうビジネスなんだ」ということを理解しないまま、暇を見つけたときだけキッチンに立って自分が作りたいラーメンを思いつきで作って、たまに人に食べてもらっていました。

「そういうものではない」ということを理解しないまま。

それが、上記の「自分が何をしているのかわかっていなかった」に繋がります。


周りの先輩たちや同世代の芸人さんたちはみんな「そういう活動である」ことをわかっていたと思います。僕だけがそれに気づいていなかっただけで。

その点で、前回書いたような「リソースの話」もやはり大事な話で、「向いてることで」「勝てる場所で」「勝てるやり方で」取り組まなければ結果など出ないですし、それをやってもなお結果に繋がらないことが往々にしてあるのが芸人だと思います。

「売れるんだろうと思ったけど売れなかった」「売れないんだろうと思っていたけど売れた」そういうケースを遠くの先輩含めて何組も目にしてきましたが、しつこいようですがこれもビジネスの世界と同じで、タイミングやきっかけのズレでいくらでも運命など変わってしまうのだと思います。

ただやはり、「準備していた者」と「準備していなかった者」には雲泥の差があり、「準備していなかった者」がチャンスを掴むことはほとんど無いのはどの世界でも同じだと思います。

「何をしているかわかっていない者が準備などできるわけがない」が20代の8年間を振り返っての総括になります。
悲観的に聞こえるかもしれないですが、そういうことではないので誤解しないでほしいのですが。


またちょっと違う角度の話も書いてみたいと思っていますが、
今回は今の視点で改めて感じたことを書いてみました。

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