「海底探険」作者コンビ、10年ぶりの最新作!「ベネチアのおみやげ」制作秘話
オインクゲームズは新作ボードゲーム「ベネチアのおみやげ」を、2024年秋に発売します。
ゲームマーケット2024秋(11月16日・17日)にて先行販売、11月22日に一般販売開始予定です。
本作はゲームマーケット2023秋にてサークル「パンパス」より発売された「ベネチアのおみやげ」をオインクゲームズ版としてリメイクした作品です。
「ベネチアのおみやげ」について
おみやげえらびは 時間との たたかいだ
旅のタイムリミットがせまるなか、急いで町でおみやげを買い集めなきゃ!ほしい個数がそろうか不安だけど、迷ってるうちにどんどん売り切れてっちゃう!よくあるおみやげに切り替える?いや、まだ間に合うかも… そんなとき、ハトのエサ売りおじさんが現れ、よけいなトラブルを巻き起こす!サクサク遊べてほどよく悩む、変則すごろくゲーム!
30万部発行の「海底探険」デザイナーコンビ、10年ぶりの最新作。ゴンドラでおみやげ探しに奔走する、幅広い年齢層が一緒に遊べるファミリーゲーム。ベネチアの街を表現するコンポーネントも魅力です。
-対象年齢:8歳以上
-プレイ時間:約30分
-プレイ人数:2~5人
-内容物:おみやげタイル48枚 / ゴンドラコマ5個 / お金チップ30枚 / ダイス1個 / カード6枚 / 遊び方説明書(JA/EN)
-ゲームデザイン:佐々木隼 & 佐々木吾朗
-アートワーク:佐々木隼
はじめに
この記事では、「ベネチアのおみやげ」のデザイナーである佐々木隼 氏と佐々木吾朗 氏に、インタビュー形式で「ベネチアのおみやげ」の開発秘話を聞きました。
オインクゲームズ版「ベネチアのおみやげ」の元となった、パンパス版「ベネチアのおみやげ」はどのようにして誕生したのか。
元のパンパス版からの変更点から浮き彫りになる、オインクゲームズのゲームの特徴とは。
ゲームデザイナー2人が考える、「己のゲームデザインの在り方」とは。
ゲームデザインに興味のある方に、ぜひお読みいただきたい内容になっています。
人物紹介
DESIGN & ARTWORKS
佐々木 隼 / JUN SASAKI
2010年にオインクゲームズを設立。同社が開発する多くのゲームのディレクション、ゲームデザイン、アートワークを手がける。「ベネチアのおみやげ」ではゲームデザインとアートワークを担当。文中では(佐)と記載。
DESIGN
佐々木 吾朗 / GORO SASAKI
佐々木隼 氏の長男。「ベネチアのおみやげ」ではゲームデザインを担当。文中では(吾)と記載。
INTERVIEW
家族旅行の思い出がそのままゲームに!?ヒントは「おみやげを買いそびれた」実体験
-パンパスとはどのような制作チームですか?
(佐)パンパスは元々、僕の娘がじゃんけんのゲームを考えた時に「それおもしろいからゲムマで出そうよ」となったのがきっかけで作った、家族のチームです。
2023年の春ごろにパンパスを作る話が出て、次のゲームマーケット2023秋にそのじゃんけんのゲームを発売しようという計画を立てました。
ゲームマーケットに応募する際にサークル名が必要で、名前がパンパスでした。
家族チームでゲムマに出展するのなら「せっかくだから吾朗もなにか作ったらいいんじゃない?」という話になりました。吾朗もわりと乗り気で、「2つのゲームを販売しようよ」と雑談していたんです。それが「ベネチアのおみやげ」が誕生するきっかけでした。
-「ベネチアのおみやげ」はどのようにして制作が始まったのでしょうか?
(佐)「じゃんけんのゲーム以外にもうひとつゲームを考える」という課題を持ったまま、夏に家族でイタリア旅行に行ったのが始まりでした。
(吾)イタリアに旅行した際、友達に「おみやげにピザのマグネットを買ってきてほしい」と頼まれていたんです。イタリアの色々な都市をめぐる旅行だったのですが、そのマグネットはどこでも売っていたので、いつでも手に入るからと買うのを先延ばしにしたまま最終地のベネチアに行きました。ところが、ベネチアはベネチア独自のアイコン…ベネチアンマスクやゴンドラのモチーフなどをおみやげにしている感じで、ピザのマグネットはまったく見当たらなかったんです。そのことに焦って、目当てのおみやげを探すためにベネチア内を巡った思い出がテーマの元となりました。
(佐)おみやげを買うタイミングって難しいよねという話になりました。
旅をしている時のおみやげって、できるだけ持ち歩きたくないので最後の方に買うじゃないですか。このイタリアの旅行も、ローマをスタートに各地を巡る移動の多い旅だったので、おみやげを買うのを先延ばしにしていたんです。他の都市では道中にピザのマグネットはどこにでもあって、いつでも買える感じだったのに、最終地のベネチアには「いかにもイタリア」というおみやげが全然なかった。
そこで、旅行の最終日が迫ってくる中でおみやげを買うのっておもしろいねとなったんです。それが「ゲームになるかもしれない」と帰ってから色々試し始めました。
-テーマの方が先に決まったのでしょうか?
(佐)そうとも言えますが、「おみやげを買う」というルールがゲームになりそうという発想なので、テーマとルールができたのは同時ですね。テーマとルールが一体となって「ゲームにできるかも」となりました。
「海底探険」作者コンビによる新作ゲーム考案。同じすごろくでも、また違ったテイストに
-制作にあたり、ふたりの役割はそれぞれどのようなものだったのでしょうか?
(佐)「こういうゲームになりそう」という原案は吾朗が作りました。
そのあと僕の方でそのシステムの原案を預かって、ルールをさらに深めていくなどのブラッシュアップをしました。
何かを変えるたびに家族でテストプレイして確かめていました。どんどん違う形に進化していきましたね。
最初は「どこかにいいおみやげがあるけれど、その場所はどこかわからない。今持っているおみやげで妥協するか、よりよいおみやげを求めてねばるか…」という、完成版よりさらにチキンレース感の強いゲームでした。
-最初の案は「海底探険」感が強いですね。
(佐)「海底探険」は、「どこまで進むか、どこで引き返すか」というゲームでしたが、このプロトタイプは「必ず帰ることはわかっているけれど、どのタイミングでおみやげを拾うか」という感じでした。「これ以降拾える可能性が小さいから、ここら辺で妥協するか」という感情が発生するんです。その時のルールは「なるべく後の方に買った方がよい」というものでした。
-どのようにパンパス版「ベネチアのおみやげ」のルールにブラッシュアップしていったのでしょう?
(佐)元々は「スタート地点がバラバラな方がいいのではないか」と、スタート・ゴール地点を空港ではなくホテルにしていました。それぞれ違うところからスタートして、おのおの自分のスタート地点に戻るという形だったんです。それぞれおみやげを探す場所が最初はバラついていて、だんだん共通になっていくというデザインを考えていました。
しばらくはそのルールで、プレイヤーそれぞれが好きなところに拠点を置いて、そこからスタートできるようにしていました。
その後、拠点の空港は全員共通になりましたが、その考えの名残でパンパス版は空港を好きなところに配置できるルールなんです。オインクゲームズ版では空港は固定位置になっています。
(吾)「おみやげを売る」という行動がこのゲームには登場するのですが、「売る」という行為が必要か不必要かはずっと議論されていました。最終的には採用になりました。
(佐)「自分の番に必ずおみやげタイルを一枚オモテにする」という「ググる」ルールも、当初はありませんでした。止まった場所でおみやげをこっそり見て、買わなかった場合のみオモテにしていたんです。
この辺りの調整は、一本道だったすごろくが碁盤の目に変化したときに「終了条件をどうしようか」となって生まれたものでした。
(吾)「ハトのエサ売りのおじさん」が誕生したのは最後の方でした。
誕生する前は、ワイルドカードのような存在がありました。「どの偶数にもなるハト」「どの奇数にもなるイヌ」があったんです。「ワイルドカードがないと、3枚同じ数字を揃えるのは厳しいのでは」という考えで入れていました。
捨てたおみやげがマイナスになるというルールもありました。隣の船から一枚おみやげを買い取れる、なども。最初にゴールするとプラス1.51点というルールもあって、このルールは最後の方まで残ってましたが、結局不採用となりました。それぞれのチップの点数を何点にするかは最後まで悩みました。
(佐)完成するまで、かなりいろんなバリエーションのルールが試されていました。
特に、それぞれのチップの得点数は最後までずっと悩んでいましたね。
-さまざまな検討をされていますが、「すごろく」というシステムは当初から一貫していたのですね。
(佐)すごろくは、旅をしている感じをよく表現していると思いました。ダイスのランダム性も良い感じで必要だと思ったので、そこを変えることはなかったです。
-「ベネチアのおみやげ」というタイトルはどのように決まったのですか?
(佐)タイトルはあまり悩まずに決まりました。
元々は「ベニスのおみやげ」と呼んでいて、語感を調整して「ベネチアのおみやげ」に決まりました。
ゲームの盤面を碁盤の目にすることになってから「この形状は水路ってことにしよう!」となり、「イタリアのおみやげ」ではなく「ベネチアのおみやげ」にした気がします。
「パンパス」のアートワークから探る、「オインクゲームズ」っぽさとは
-パンパス版の「ベネチアのおみやげ」のアートワークはどのように制作していったのですか?
(佐)とにかく時間がなくて、箱絵やイラストは絵素材を購入して作りました。パンパスが、子どもから大人まで全世代が遊べる、ファミリー向けの可愛い感じを意識していたので、フォント・イラスト・色合いはかわいいテイストを意識しました。できればオインクゲームズのテイストと離れようという意識もありましたね。
-ちなみに、オインクゲームズのテイストとはどのようなものなのでしょうか?
(佐)オインクゲームズのテイストこそ、自分の好きなテイストです。なるべくミニマルで、あまりイラストで描かないことを意識しています。パンパス版よりもうちょっと無機質な方向に寄せているのがオインクゲームズのスタイル。あんまり作品の色をつけすぎない感じですね。
パンパス版ではそれから離れるべく、もっと雰囲気に味付けをするイメージで制作しました。
ベースが実体験だからこその細やかなリアルさ
-パンパス版「ベネチアのおみやげ」のタイルのアートワークの内容はどのように決めたのですか?
(佐)おおよそ自分で決めましたが、「おみやげは何を入れようか?」と家族に訊いたりもしました。
-ただの「スパゲティ」ではなく、「イカスミのスパゲティ」にしているところが細やかですよね。
(佐)このゲームは僕らの旅行体験に基づいているものなので、ベネチアで実際に名物のイカスミパスタを食べた記憶を残したかったんです。
また、そういうディテールの細やかさがあった方がいいと思ったのもあります。
「モカポット」も旅行体験に基づいています。オインクゲームズ版にも入れたかったのですが、不採用にしたんですよね。
-「ハトのエサ売りのおじさん」はどのような経緯で誕生したのでしょうか?
(佐)実際に吾朗がベネチアで「ハトのエサ売りのおじさん」に遭遇して、とんでもない目にあった実体験を活かしたかったんです。急に手のひらにエサを乗せられて、お金を払えって言われるという…(笑)。これはぜひ入れたいね、となりました。
200部限定!幻の「パンパス版」が実際に販売されるまで
-パンパス版「ベネチアのおみやげ」でのゲームデザインや、アートワーク、生産面などで苦労したところを教えてください。
(佐)色々苦労しましたね。予算が限られていたので、原価と価格と生産量を決めるのが難しかったです。原価が全体的に高くて…印刷するものが特に高くて大変でしたね。コンポーネントは妥協せず作りました。
普段オインクゲームズで箱のサイズの縛りがあるのとは違って、コンポーネントの大きさをあまり気にしなくてよかったのは楽でしたね。
コマをゴンドラにするのは最初から決まっていました。木製品はシュピールマテリアルというボードゲームパーツを販売しているドイツのオンラインサイトから買ったのですが、発注していたのと違うダイス200個が届いたんです。当然、交換を頼みました。そうしたら、送り返す送料が高いからか「半額にするからそれで勘弁してくれないか」とも持ちかけられたんです。でも、ダイスの目が違っていて、それだとルールが変わってしまうので断りました。締め切り的に急いで送ってほしかったので、「オインクゲームズとしてイベント出展のためにドイツにいくので、返品は現地でしますから先に正しいものを送ってください」と言いました。実際にエッセンシュピールの会場(ドイツ)で返品したんです(笑)。
一番苦労したことは、最後まで中々ゲームデザインが固まらなかったことです。もうひとつのじゃんけんのゲームと同時並行での制作も大変でした。
アートワークも大変でした。ルールと同時並行でデザインを進めていたので、ルールを変えるたびに調整が入るのも大変でした。
箱詰めも家族で苦労しましたね。苦労だらけですね(笑)。
説明書のデザインはオインクゲームズのフォーマットから抜けて大きく作れるというのもあって、わかりやすさだけを重視して作りました。説明書は秋にエッセンシュピール(ドイツ)に行く飛行機の中で作った記憶がありますね。ゲームマーケット2023秋の直前で、ギリギリでした…。
-ゲームマーケット2023秋でのパンパス版「ベネチアのおみやげ」の反応はいかがでしたか?
(佐)予想以上にすごく売れました。評判がよくて、予約もすぐ埋まって、即完売でした。売り切れに対して申し訳なさもありましたが、200個限定で作ると決めていたので、「まあしょうがないか」という気持ちです。オインクゲームズの時は「売り切れたら負けだ」という気持ちでやってますけどね(笑)。在庫を抱えるのが怖すぎて、宣伝もがんばったのも功を奏しました。
(吾)パンパスが出展していたゲームマーケット2日目の開始と共にブースに長い列ができて、事務局の人が列整理に来てくれるほどでした。
自分の実感としても、反応は悪くなかったと思います。インストをした感じでは、少し理解されづらい点がいくつかありました。「こっそり買い」のアクションの説明をしていて、「裏になってるやつを買うことにメリットがないのでは?」とよく言われたのが印象的でしたね。そのあと、徐々にメリットを理解してもらうことができました。
変更点から垣間見れる、オインクゲームズならではの特徴
-どのようにしてオインクゲームズ版の制作が決まったのでしょうか?
(佐)10周年を迎えた「海底探険」を新たに「海底探険 深版」として販売することになったのが始まりでした。「海底探険 深版」は半分リメイクのような感じなので、完全新作をひとつ出したいという思いがあったんです。そこで、同じ作者コンビの完全新作を海底探険10周年に合わせたら喜ばれるかな、と思ったのがきっかけでした。
(吾)オインクゲームズ版が決まった時は単純にうれしかったです。「オインクゲームズから出るんだ!」という感じでした。10年前に「海底探険」でアイデアを出して以来、またオインクゲームズからゲームを出したいという気持ちがありました。
-オインクゲームズ版「ベネチアのおみやげ」のアートワークはどのように制作していったのですか?
(佐)基本はパンパス版をベースに、しかしもっとシンプルにすることを意識しました。シンプルにしないとオインクゲームズ規格の箱に入らないというのもあります。チップも箱に入るように小さくしました。
全体的にシンプルで、パッケージのグラフィックは日本語版・英語版どちらも、すごく気に入っています。「おみやげ」という言葉もレトロな響きがあって、古き良き観光地の感じを出せている気がします。
実際に行ったからかもしれないですが、ベネチアの風景が思い浮かぶいいパッケージになったと思います。
海底探険と合わせて販売するので、並べたときにきれいに見えるようにデザインをしました。
(吾)「ベネチアのおみやげ」のじわじわくるおもしろさがパッケージによく表れていると思います。
-オインクゲームズ版「ベネチアのおみやげ」の制作にあたって、パンパス版から変更した点を教えてください。
(佐)見た目だけでなく、ルールももっとシンプルにしようと思って調整しました。パンパス版も十分おもしろいと思っていますが、プレイした時に少し課題を感じたので手を加えています。
まず、最大4人プレイから、5人までできるように調整しました。
あと、パンパス版ではプレイ人数によって使うタイルが変動していたのがあまりよくないと思っていたので、調整して基本7×7の構成で全部のチップを使うようにしました。2人プレイのときだけはタイルが多すぎると大味になってしまうので5×5にしています。この調整が難しかったですね。どうしてもうまくいかなくて、「8×6の形にする?それとも6×7?」となっていましたが、角の一枚を空港にしてタイルを48枚にすることで美しくまとめることができました。
空港の位置にも課題があって、パンパス版では空港の前に船があると帰りづらかったのが、角に空港を置くことで2方向から戻れるようになって、このアイデアは一石二鳥の解決策になりました。
その他の変更点として、「イヌ」というスペシャルカードがオインクゲームズ版ではなくなりました。なくした理由としては、説明がややこしいのと、いたずらにゲームを長引かせると思ったからです。それでもスペシャルカードの数は3枚がよかったので、イヌがなくなった分、ハトを2枚にしました。ハトはおもしろみがあるので、この調整はよかったと思っています。
ダイス目も変更しました。壁にたどり着くまでどこまでもまっすぐ行ける、「星」の目をなくしました。星の目は最後まで「帰れるかも」と思える希望でしたが、ルールが複雑になるので思い切ってなくしました。「あまり簡単に帰れてもおもしろみがない」「戻ってくる時にヒリヒリしてほしい」という気持ちもあったので、最終的には星をなくしてよかったと思っています。けっこうこまごまと調整していますね。
おみやげのラインナップも変えました。おみやげタイルのいちばん小さい数が3から5になりました。パンパス版でいちばん点数が高かった「マンドリン」はネット上でベネチアを調べると出てきますが、現地で一切見かけなかったので、オインクゲームズ版では不採用にしました。パンパス版にはあった「バルサミコ酢」と「モカポット」もあってよかったけど、どちらも絵が縦長なので採用することが難しかったです。オインクゲームズ版はタイルが小さい上に、得点と数字を入れる関係で収まりがいいように横長の絵で統一したかったんですよね。代わりにゴンドリエのTシャツが入りました。同じようにタイルを小さくする関係で、「イカスミのスパゲティ」も文字数が多かったので「イカスミのパスタ」になりました。
-オインクゲームズ版「ベネチアのおみやげ」でのゲームデザインや、アートワーク、生産面などで苦労したところを教えてください。
(佐)デザインはけっこうすんなり決まってよかったのですが、エッセンシュピールに合わせて作るのが大変でした。同時発売の「海底探険 深版」の制作も同時並行で進めながら、日本・英語・ドイツ語・フランス語の多言語のパッケージをひとりで作るのが大変でした。
このスケジュールはパンパス版というベースがあったからこそ、できたことだと思います。普段の作り方ではできなかったと思いますね。
-世界初の発表となったエッセンシュピール2024での反響はどうでしたか?
(吾)販売の手伝いに入っていたので、反応は正直よくわからなかったですが、レジに入っていて「けっこう売れたな」という感触はありました。試遊卓では小さい子からお年寄りの方まで遊んでもらえていた気がします。静かなおもしろさというか、じわじわとしたおもしろさのあるゲームだと思うので、ぱっと見ではわかりづらかったかもしれないですね。エッセンシュピールでのエピソードではないですが、学校のカナダ人の先生に「ベネチアのおみやげ」と「海底探険 深版」が入ったフェルトポーチをプレゼントしたら、その先生は「ベネチアのおみやげ」の方を好んでたくさん遊んでくれています。「親戚の会でも遊んでいるよ」と言ってもらえて嬉しかったです。
(佐)僕も忙しかったのであまりブースにいられず、反応はあまりわからなかったのですが…、手伝ってくれた現地のスタッフからは好評でした。このゲームは、みんなでまったり楽しんで、「おもしろかったね〜」となるゲームだと思いました。
(吾)そういう意味でも、家族で楽しめるエッセンシュピールに向いたゲームだと感じました。
(佐)「海底探険」のヒリついている感じに対して、ゆるやかにおみやげを買う楽しい時間が表現できたと思います。
ゲームデザインにおいて、それぞれが大切にしていること
-普段ゲームデザインをする時にどのようなことを心がけていますか?
(吾)やりたいことをちゃんとやる、ということです。テストプレイの過程などで出てくる新しい「おもしろさ」に飛びつかない。ゲームマーケット2024秋に個人で出す新作ゲームでは「うまくいかない」ということをやると決めていたので、それが実現できるように合わせてルールを考え、コンポーネントを考えました。あとは10年前の「海底探険」を作るときに言われた「ジレンマ」を大切にしています。それは父の教えなので。
(佐)そのゲームが世に存在する意義、オリジナリティ、そのゲームでしか体験できないおもしろさがあるのかというのは常に気にしています。一生かかっても遊び尽くせないほどボードゲームが世にある中で、新しく作る意味のあるおもしろさがあるのか?というのは心がけています。それが必ずしも実現できるとは限らないけれど。
-「ベネチアのおみやげ」では、どこにその心がけていることが反映されていますか?
(吾)「あの時買っておけば」という後悔を生みたい、という当初からあった「やりたいこと」をやりきりました。ジレンマもあって、いいゲームだと思います。
(佐)オリジナリティ、ユニークさの面で言えば、「家族で行った旅行という個人的な体験をゲームにした」という初めての作品だと思っています。「ハトのエサ売りのおじさん」やおみやげの数々は体験に基づくものですし、そういう個人の体験をゲームにするというのは新しいことだと思っています。個人的な体験をゲームとしてパッケージにしていくということに可能性を感じました。
-「ベネチアのおみやげ」はどのように遊ばれたいですか?
(吾)おみやげを買いそびれて後悔してほしいと思います。それこそがコンセプトで、自分が体験してほしいと思うことなので。「ハトのエサ売りのおじさん」のやばさとかもを感じてほしいですね。
(佐)旅行をするように遊んでほしいです。ゲームっていろんな側面があって。ジレンマがあって、勝ちたくて…。もちろん勝ちは目指さなければいけないけれど、景色を思い浮かべながら買い物をする楽しさを味わってほしい。いつもそう思っていますけれど、今回は特にそう思います。
Xで「実際に体験したことを思い出す」というようなコメントがあったのですが、ぜひみんなにもそういう思いをしてほしい。なので、いろんな観光地でたくさんのバージョンを出したいなとも思います。
-今後はどのようなゲーム作りをしていきたいですか?
(吾)ゲーム作りを続けて行きたいと思います。「制作者が伝えたいことを、受け取り側が娯楽として享受できる」という点でゲームというものはすばらしいと思っていいて、今は「日常的に感じるおもしろさ」をゲームで表現したいです。僕はまだそこまでボードゲームに詳しいわけではないですが、現時点の自分からの視点で作れるものを作っていけたらと思います。
(佐)「ベネチアのおみやげ」でやった「個人で体験したことをゲームにする」という行為はまだ堀りがいがあると思っていて、継続して考えていきたいです。
それと、自分の中でゲームづくりの揺り戻しがきていて…、作品の特徴が、初期のシンプルなものから徐々に盛り込んだものへ発展しましたが、近年またシンプルな方向に戻ってきています。シンプルなゲームづくりが今は楽しいですね。
(取材日:2024年10月24日)
概要
【商品概要】
◆商品名:ベネチアのおみやげ
◆価格:2,700円+税 (ゲームマーケット会場では特別価格2500円で販売)
◆対象年齢:8歳以上
◆プレイ時間:約30分
◆プレイ人数:2〜5人
◆内容物:おみやげタイル48枚 / ゴンドラコマ5個 / お金チップ30枚 / ダイス1個 / カード6枚 / 遊び方説明書(JA/EN)
◆ゲームデザイン:佐々木隼 & 佐々木吾朗
◆アートワーク:佐々木隼
◆紹介ページURL:https://oinkgames.com/ja/games/analog/souvenirs-from-venice/
【ゲームマーケット2024秋概要】
名称:ゲームマーケット2024秋
開催日時:2024年11月16日(土) 11:00~18:00/2024年11月17日(日) 10:00~17:00
会場:幕張メッセ展示ホール 4・5・6・7
会場所在地:〒261-8550 千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1
URL:http://gamemarket.jp/access/
オインクゲームズブース:展示ホール5 「61」
【お問い合わせ先】
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担当:稲垣
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