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フェイスオフ / 短編小説その9

2020年喫煙者は肩身が狭い。。。

あらゆる場所での、全面禁煙の張り紙が目立つ。
お酒の場でも吸えない。
はたまた、電子タバコならOKという意味がわからないことまで書かれてる。

僕の会社も先月から全面禁煙になり、これを機にタバコを止める人もチラホラ。

「えー、前田さんはタバコやめないんですかー?」

事務の高岡さんに言われたが、
なぜ、やでなければならないのか?
なぜ、こんな質問をされなければならないのか?
少しばかり腹ただしくもなる。

「やめないけど、なんで?」

質問者を傷つけない精一杯の返答。

僕はなんて、優しいんだ。

幸いにも、僕の会社の目の前にはコンビニがある。
コンビニは外に灰皿が置かれてるので、公式に吸っていい場所だ。
コンビニさまさまである。

お昼休み。
いつも通り、灰皿の前でタバコを吸う。
車用のストッパーの後ろに急発進して店に突っ込まないようの大きなバーが建てられてる。
喫煙者の僕にとっては、ちょうどいい腰かけになる。

コンビニにとっては、そんな使い方されてほしくないだろうが、もし車がブレーキとアクセル押し間違えて突っ込んで来た時、僕が身を制してこのコンビニをまもることになるから、WIN-WINの関係性になるだろう。

タバコを吸いながら
携帯をいじりふと顔を見上げると、
本コーナーのガラスが僕を映し出す。

「髪の毛、伸びたなー。次の休みにでも切りいくか。。。」

そんなことを
鏡越しの自分に問いただす。

2本目のタバコを吸い終え、
会社に戻ろうとまた、
フッと鏡を見上げる。

そこには、
さっきはいなかった本コーナーで立ち良ししてるおじさんの顔と、
自分の顔が重なった顔が映し出される。

「俺は、誰だ?」

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