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北東北フードツーリズム ~出会える人とできるコト~

こちらの記事では、現在募集中の「北東北をめぐるフードツーリズム」で、実際にどんなおいしい体験ができて、誰と出会えるのかをまとめました。
※ご予約はこちらのフォームからお申し込みをお願いします。

DAY1: 南部地方の食文化を堪能する

旅の1日目は、今回の旅のメインとなる津軽地方の郷土料理をより理解するために、そのカウンターパートとなる南部地方の文化を体験します。

浄法寺の漆器製作工房「滴生舎」で漆器をお買い物

国産漆の最大産地として名を馳せる岩手県二戸市の浄法寺町。この土地の漆を使って作品をつくり続ける作家たちの漆器を中心に、岩手県内外の作家の漆器も取り扱う「滴生舎」は漆器のセレクトショップです。
ここでは、漆器の器やお椀を見学し、任意でお買い物をしていただきます。お猪口や椀をここで手に入れて、今回の道中で使う…なんてのも素敵です。

南部地方の郷土料理を味わう

・出会えるヒト=佐藤ひとみさん
・体験するコト=ひっつみ&かっけづくり体験

奥羽山脈の東側(太平洋側)に位置する岩手県北部や青森県南地方は、かつて南部氏の盛岡藩が支配していたことから「南部地方」と呼ばれます。南部地方は夏場に気温が上がらないため、稲作には適さない土地でした。栽培できるのは蕎麦や小麦を中心としたコメ以外の穀物。そのため、小麦粉や蕎麦粉を練った生地を茹でたり焼いたりして食べる「練りもの」を中心とした食文化が、今でも根付いています。そんな食文化を継承するひとりが、岩手県八幡平市の佐藤ひとみさんです。

南部地方の郷土料理を伝承する活動を続ける 佐藤ひとみさん

ひとみさんからは、南部地方の食文化を代表する主食料理「ひっつみ」と「かっけ」づくりを教えていただきます。「ひっつみ」とはぬるま湯で練った小麦粉を「ひっぱったりつまんだり」して沸騰した湯で茹でる麺。根菜や葉菜を煮た煮干し出汁に入れて食べるすいとんのような料理です。
「かっけ」とは、蕎麦粉(小麦粉の場合もある)を打ってのばしたものを三角形やひし形(“かけら“のような形状なので「かっけ」)に切った麺。茹でたてをニンニク味噌やネギ味噌を少し付けて食べます。
ひとみさんがつくる料理はもちろんとびきり美味しいのですが、ひとみさんの包容力の強さはきっと誰しも虜になるはず。仕事は早いし丁寧だし、頭脳はめちゃくちゃ明晰で、なおかつ訪れた客を温かく包み込む…。とてもすてきなお母さんです。

レトロな温湯温泉「飯塚旅館」で芯から温まる

・出会えるヒト=飯塚旅館の女将さん
・体験するコト=湯冷めしにくく肌にもやさしい温泉浴

レトロな木造2会建ての飯塚旅館

温湯温泉郷は、共同浴場「鶴の湯」を中心に、明治後期から大正にかけて建築された木造の「温泉客舎」が立ち並ぶ鄙びた温泉街。1泊目の宿泊地はこの温泉郷の飯塚旅館です。木造2階建てでレトロな建物ではありますが、内湯は綺麗で、なによりも身体の芯まで温まり、それが持続するという泉質が最高! 津軽地方の山間部らしい適正な質と量の食事も素敵です。ちなみに朝食に必ず供される焼鮭が秀逸で…たまりません。

DAY2: 津軽あかつきの会での調理体験

2日目は、津軽地方の食材探索をしてから今回の旅のメインとなる、津軽あかつきの会を訪れ、伝承料理活動を続けるお母さんたちに津軽地方の郷土料理を教えていただきます。

大鰐温泉もやしを調達

温泉郷として知られる青森県大鰐町の伝統野菜。雪に閉ざされる津軽地方では数少ない、冬に食べられる生鮮野菜として、藩政時代からつくり続けられています。豆モヤシとソバモヤシの2種類があり、豆モヤシの特徴は、在来種にして門外不出の大豆「小八豆」が原料であること、温泉の地熱を使って土耕栽培すること、栽培・洗浄・仕上げの全工程で水道水をいっさい使わず、温泉水のみを使うことなど。土の香りをほのかに抱き、濃厚な味わい。シャキシャキした歯切れのいい食感も持ち味。

そんな大鰐温泉もやしを購入できる数少ないポイントが、大鰐町の経営する温泉施設「鰐COME(ワニカム)」の売店です。今回は事前に予約し、早朝に大鰐温泉もやしを調達します。それを「津軽あかつきの会」の調理体験時に使いましょう。

虹のマートで弘前市民の台所探訪

弘前市民ならきっと誰しも1度は訪れたことがあるでしょう。「虹のマート」は弘前駅前にある屋内型商店街。これも雪が深いからでしょうか、館一棟の中に肉屋、魚屋、八百屋、乾物屋など、各ジャンルの個人商店が軒を並べています。各商店を覗きながら館内を散歩すれば、“等身大“の弘前の食卓を想像できます。とくに惣菜屋には、伝統的な郷土料理に今っぽいひねりを加えたおかずなども並んでいるため、ローカルフードに興味のある人であれば、間違いなく飽きることがありません。

津軽あかつきの会の心臓部、漬物蔵を見学

・出会えるヒト=「津軽あかつきの会」の“漬物大臣“中田圭子さん
・体験するコト=漬物蔵の見学

春から秋にかけてとれた食物を塩蔵したり麹に漬けたりして保存し、真冬の糧とする津軽地方の食文化。その心臓部ともいえるのが漬物蔵です。蔵の中には仕込まれた時期の異なる山菜やきのこ、そして野菜などの樽がぎっしり。「おい研」が依頼して2022年の冬に仕込んでもらった味噌もここで眠っています。塩蔵食品にしろ発酵食品にしろ、津軽地方の保存食は冬に旬を迎えます。まずは津軽あかつきの会の核心部の見学から始めましょうか。

冬が厳しい津軽地方では、りんごも漬物にして冬に食べられるように貯蔵します。

津軽あかつきの会のお母さんたちと調理とお食事

・出会えるヒト=津軽あかつきの会のお母さま方
・体験するコト=調理体験とお食事

今回のフィールドワークのハイライト。調理体験の詳細については直前までお母さまたちと調整する必要がありますが、ちょうど小正月の時期に大鍋でつくってみんなで食べる「けの汁(※)」を候補に挙げて検討しています。春先に塩蔵しておいた山菜や、秋に収穫した根菜など、春夏秋の食材を駆使するという意味で、「けの汁」は津軽地方の1年間を総括できる料理でもあるのです。また、塩蔵した山菜類を水に浸して塩気を抜く方法や、気が遠くなるほど細かく(かつ均一に)食材を切り揃える丁寧さなど、学びが多い料理でもあるでしょう。

津軽弁でお喋りしながら一緒に調理をします

とにもかくにも、津軽あかつきの会では、佐藤ひとみさんの手ほどきによってDay1で体験した南部地方の食文化との対比をしながら調理や食事を体験すると、いろいろなことが見えてくるでしょう。骨格も細部もまるで異なる食文化なので、かつての藩の境界線はある意味で正しかったのかも? なんて仮説も生まれます。

※けの汁
冬の津軽地方を代表する料理。小正月につくることが多かった料理で、正月に家族の世話や来客対応に追われた嫁が小正月に里帰りする際、男衆のためにつくりおきした保存食という側面がある。春先に塩蔵しておいた山菜、秋に収穫した根菜を煮干しと昆布のだしで煮る。大豆をすり潰したズンダが入るのも特徴だ。「津軽あかつきの会」では、大量の根菜や山菜を細かいさいの目に刻むところから、調理がはじまる。「大鍋に大量につくるのが美味しい」とされ、数日間温めなおして食べる習慣がある。温めなおすほど具のうま味が染み出して味わいが深くなる。津軽の方言で「粥(かゆ)」を「け」と呼ぶことから「かゆの汁」が由来であるという説もあり、小正月に一年の無病息災を願っていただく「七草がゆ」の代わりだったという説もある。

あかつきの会のお母さまたち

嶽温泉「小島旅館」で、硫黄泉と津軽の山の献立を堪能

岩木山の麓に位置する獄温泉の「小島旅館」が2泊目の宿。獄温泉は岩木山の山腹に湧く乳白色の硫黄泉。小島旅館は獄温泉街で古くから営業を続ける温泉宿です。秋田県の乳頭温泉を思わせるここの泉質は抜群。「マタギ飯」と名付けられた舞茸の釜飯を軸として、山菜やきのこが多く使われた津軽の山の献立で夕食を楽しみます。青森県民のソウルフードにして、風邪をひいたときには必ず食べるともいわれる滋養食でもある「貝焼き味噌」の朝食もたのしみ。これぞ正しいニッポンの朝ごはん。

DAY3: 津軽の漁師飯を体験

最終日は、津軽の沿岸部の食を巡ります。豪雪地ならではの食材「ふかうら雪人参」を見学してから、漁師町で津軽の海の幸を存分にいただきます。

雪の中のあまーい「ふかうら雪人参」を収穫

・出会えるヒト=舮作(へなし)興農組合の人々
・体験するコト=雪を掘り起こしてニンジンを収穫する作業の見学(交渉中です)

津軽地方の日本海側の沿岸部のことを、青森の人々は「西海岸」と呼びます。北米の「西海岸」とは打って変わって、温暖でもなければ、太陽がさんさんと降り注ぐことも(あまり)ありませんが、世界でも有数のブナの原生林を抱き込む世界遺産の白神山地が背後に控え、白神からの山の養分が注ぎ込む日本海は、魚・貝・海藻がよく育つ豊穣の海。そんな日本海から吹き上がる、白神産地由来の養分をたっぷり含んだ潮風を浴びるような高台に「ふかうら雪人参」の畑があります。

雪の下から掘り起こした「ふかうら雪人参」

ミネラルが豊富な土壌では、ニンジンを夏に植え、秋に収穫できるまでに育ったものを、そのまま土の中で眠らせます。収穫期は12月から3月までの積雪期。雪を掘り起こして収穫します。品種は「はまべに五寸」と呼ばれる昔ながらのものですが、寒さの中でも凍らないよう身を守るニンジンの生理機能が働き、糖度が増します。おおむね糖度は9度前後、高いものでは12度を超えるものも。
この「ふかうら雪人参」のつくり手は、青森県深浦町の農事組合法人舮作(へなし)興農組合。とにかく「野菜とは思えないフルーティな甘さが特徴だ」ということで、生のままミキサーで回してジュースにして飲む!のが最高。

鶴田漁業で漁師飯を体験

・出会えるヒト=鶴田仁さん&悦子さんご夫妻
・体験するコト=漁師の昼メシ

鶴田仁さん、悦子さんご夫妻

旅の締めくくりは、背後に世界遺産の白神山地を抱える、日本海に面した漁師町で津軽の漁師ご飯をいただきます。深浦町で漁業を営む鶴田仁さんと悦子さんご夫妻は、ご自宅を開放して普段の家庭の「漁師ごはん」を振る舞ってくれる(!)という、とってもグッとくるサービスを展開中です。
同じ津軽地方の家庭料理とはいえ、内陸部の農家の料理を伝承している「津軽あかつきの会」と、鶴田さんのような漁師の家とでは、食卓に登場する食材や料理も劇的に異なります。食卓にズラリ居並ぶのは、季節の魚介のお惣菜。ヒラメやハタなど白神山地の養分で育った白身魚の刺し身、メバルの煮付け、ふぐの唐揚げ、山のように盛られたサザエのつぼ焼き…など、など、など。数えればざっと10数種の海の幸がテーブルを埋め尽くします。まさに、野菜嫌いと魚好きには堪らない食卓。

「今朝獲ってきたのがあったので、これも食べて。肝を醤油に溶かしてね」という魅惑的すぎるセリフを添えて登場するカワハギや、「俺が内緒でつまみにしようと思ってたんだけど…」という枕詞とともに供される真だこなどなど、突然現れる“オプション“のクオリティも高すぎ…。
そうこうするうちに、仁さんが一升瓶を抱えて登場し、豪快すぎる漁師飲みに発展することもしばしば。瓶から直接湯呑みにトクトク…。瞬く間に一升瓶が床に転がる…という状況。津軽の漁師の暮らしぶりにどっぷりと浸かっている自分に気付くはずです。
あ。そうそう。ヒラメのヅケはご飯にのせても美味ならば、お茶漬けにしてもうっとり級の美味しさです。ぜひお試しを!

ヒラメの漬け、絶品です…….。

たらふく漁師飯を頂いたあとは、バスでJR新青森駅へ移動し、解散となります。

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今回のツーリズムで出会う北東北の方々との交流や、食体験を通して、参加者のみなさんと共に様々な角度から学びや問いを重ねることを楽しみにしております。
今回のツーリズムに関するご質問やお問い合わせはこちらのメールアドレスで受け付けております。みなさまのご参加お待ちしております。

お問い合わせ先:oiken.uehara@gmail.com

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