裾野市役所のミッションと行動指針を策定しました

こんにちは、裾野市の及川です。先日、村田市長が就任後初めての記者会見を開きました。記者会見のテーマは「裾野市役所のミッションと行動指針の策定」です。その様子はメディアにも取り上げていただきました。

この記者会見の内容は、市長を中心にこの1か月半、重点的に検討してきたテーマでした。今回は、このことについて少し紹介させていただきます。

策定のきっかけ

私が市長から求められているのは「公約をはじめとする主要政策を着実に推進すること」です。4月に就任し、すぐにこの論点について市長と議論をスタートしました。

裾野市はもともと県内で最も財政力指数の高い(税収の多い)自治体でした。しかし、制度改正などの影響により、税収が大きく落ち込み、市の貯金を切り崩しながら行政サービスを維持しています。そのため、赤字を減らし、持続可能な財政を目指す必要があります。

一方で、時代の変化への対応や将来の投資のため、新たに実施すべき事業もあります。その実現のためには、各事業をコスト意識を持って見直しながら、国の交付金なども最大限活用し、実現可能な方法を全力で探していくことが必要です。

こうした制約条件の中で、裾野市がもっともっと発展していくためには、市役所全体が同じ方向を向いて、課題解決のために創意工夫できるような組織風土をつくることが重要なのではないか

そのような意見交換の中で出てきたのが「ミッションと行動指針の策定」という案です。

自治体で、ミッション(つまり組織として果たすべき使命)と、その使命を果たすための行動指針が明確に定義されている事例は多くありません。しかし、良い政策を実現するためには、なにより良い組織をつくることが重要という判断のもと、ミッションと行動指針の検討を開始しました。

本来はどちらも、職員との意見交換の中で策定していく方が望ましい、ということは認識していました。ただ今回はスピードを重視するため、市長を中心に策定し、しばらく運用してみて、一定期間経過した後にアップデートしていくことにしました。

ミッション

こうして策定したのが「日本一市民目線の市役所として最高の行政サービスを提供する」というミッションです。普段は「日本一市民目線の市役所を目指す」と表現しています。

これは村田市長が就任時に掲げていた「市民は顧客」という表現を踏まえています。ミッションの説明文の中に「市民目線とは、将来世代の市民も含め、価値の最大化を目指すもの」と補記し、よりメッセージが明確に伝わることを目指しました。

ちなみに、このミッションはUXデザインにおける「人間中心設計」の考え方を意識しています。行政サービスも、前例や現行制度だけを前提とするのではなく、常に市民の本質的なニーズに立ち返って検討した方が望ましいのではないか。そんな思いを込めています。

行動指針

更に、このミッションを実現するために、日々実践したい要素を行動指針として定義しました。村田市長はもともと介護関係の会社役員でもあります。そのビジネス経験も基に、良い事業をつくるための要素を5つにまとめました。

一、本質的な課題の特定
一、より良い解決策の探究
一、小さく始めて、継続的に改善
一、新しい挑戦の応援
一、コスト意識の徹底

「本質的な課題の特定」「より良い解決策の探究」「小さく始めて、継続的に改善」は、デジタル庁が公表している「サービス設計12箇条」を踏まえています。サービスデザインの考え方を、情報システムだけでなく、あらゆる行政サービスにおいて取り入れたい、と考えたためです。

「新しい挑戦の応援」は表現にこだわりました。新しい挑戦そのものだけでなく、新しい挑戦を応援できる組織風土をつくることで、より継続的な改善が図れるのではないか、という思いです。

これらの取り組みを最大のコストパフォーマンスで実現するため、「コスト意識の徹底」を最後に入れました。

ちなみに、トヨタ自動車の豊田綱領を意識して、「行動指針」ではなく「綱領」という表現にしています。

実現に向けた取り組み

実施体制

ミッションや行動指針を実現するための体制も新たに整備しました。まずは経営会議です。これは、部長級などの職員全員を対象に、主要政策の検討状況の一覧を隔週で確認し、庁内横断的にボトルネックを把握し、その実現を図るためのものです。

もうひとつ、ボトムアップ型で行政サービスの継続的な改善を図るため、市民目線改革会議も設けました。市民や職員から細かな課題を拾い上げ、デジタルツールなどを活用してその解消を図ります。

ちなみにこれは他自治体にある「DX推進会議」のような位置付けのものです。私はデジタル化やDX自体が目的なのではなく、市民の課題解決こそが目的であるべきと思っています。それを会議名称にしたのは、私のささやかなこだわりです。

更に、これらの改革を推進するための改革伴走チームも設けました。前職で自治体向けのカスタマーサクセスをしていたときに最も感じていたのは、運用開始時の心理的負荷が新しい取り組みを阻害してしまっている、ということです。これを解消するため、運用開始を伴走して支援するためのチームをつくることにしました。

デジタル目安箱

最後にデジタル目安箱です。市民の皆さまが課題を直接投稿できる仕組みです。普段あまり市政と接点の無い方からも、幅広く意見をお伺いできるようにすることを目指しています。

投稿いただいた内容は、必ず市長が確認し、市政の参考にさせていただきます。その一部は、解消に向けて市民目線改革会議や改革伴走チームで取り上げていきます。

理解を深めるために

ミッションや行動指針は、策定して終わりではなく、本当に浸透するものにしたいと思っています。そこで、職員の皆さんに理解していただけるよう、市長が直接すべての課を周り、30分ずつ説明と意見交換を実施しています。

なかなか対面では直接話しにくい雰囲気もあったので、意見交換後に感想や質問を提出できるアンケートフォームも設けました。投稿いただいた職員さんには、一人ひとり返事をお返ししています。

おわりに

これらの取り組み自体が、村田市政にとってひとつの挑戦です。運用しながら改善してしていきたいと思います。

次のステップとして、私に求められることのひとつは、職員の皆さんが更にパフォーマンスを発揮できるような環境を整えていくことです。こういうとき、岸田総理も取り上げていた「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」というフレーズが思い返されます。

例えば一案として、こんなことに取り組もうかと考えています。

・業務の棚卸しと超過勤務の縮減
・職員向けのデジタル目安箱開設
・市長がいま考えていることを伝えるための庁内ブログの執筆
・働きやすい庁内情報システム環境の整備(三層分離の見直し、PC端末の更改、コミュニケーションツールの導入、共同編集ツールの導入など)

当然ながら100点満点には遠いものです。もし「もっとこうしたらいいのでは」「こんな取り組みもあるよ」といったアイデアがありましたら、ぜひ教えていただけたら嬉しいです

今回の取り組みの検討にあたっても、市外のたくさんの方からアドバイスをいただいています。この場を借りて心から御礼申し上げます。試行錯誤の毎日ですが、今後もさまざまな方にお知恵をお借りしながら、裾野市をより良い地域にするため尽力します。

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