【声の界隈】宅録環境の変化とその原因
ツイッターになんとなく愚痴った
「プロのボイスサンプルが素人の遊び以下の音質ってアウトやで」
が何故かいいね山盛りなのでそれに付随するお話を。
これ、コロナの影響で宅録するプロが増えたことと無関係ではないのよね、実は。
声優やナレーター、アナウンサーなんかもみんな同じ議題を抱えているのではないかと思ってる。ってか、周囲を見てるとこのままだったりする。
ライバルの認知はしているのだ
普段から面倒を見るってほどじゃないけど目をかけているとある声優との会話。
「ネット声優とかの方が我々売れてなくて金のない声優たちよりもはるかに家で録音する環境優れてますよ。」
これなのである。
ネット声優、同人声優と呼ばれる人たちのことを、養成所を出て、事務所内での生き残り競争でまだふるい落とされていない層も、この存在を認知している。羨ましがることはないけど存在は知っているし、同人系の単価が安い仕事を片っ端から取られている自覚もあるのだ。
知ってるからこその悲しみ
元局アナの人も増えているが、おそらく声優たちと同じようなことを思っているはずだ。それも、痛烈に。
「持っている技術が完全納品まで考えると全く足りない」
この残酷な事実に。
プロの音響と一緒に仕事をし、プロの環境を知っている。
ただ、そのクオリティや納品クオリティにまで演者の立ち位置だけではなかなか思いが至らない。至ったところで話を聞いて教わるところまでってなると、ほとんどの人がそんなことはしない。
そう言う人たちがフリーになったときにぶつ当たるのが、最初から正規のルートを通らずにたどり着いた人たちだ。発声や読み方では現場が長かった元プロや現役プロの方が圧倒的に上手い。だが納品はファイルなのだ。
マイクの距離はなんとなく過去の現場を思い出しながら設置はできる。
では録音ソフトの使い方は?
音量って?
ノイズレベル?
そもそも家の環境で録音って難しくない?
このマイクであってるの?
リップノイズってどうやって処理するの?
パソコンとオーディオインターフェイス、これでいいの?
etc
これらの壁が立ちはだかる。
その上に敵は、悩みながら時間をかけてその戦場までたどり着いたネット活動者たち。すでにクオリティともかく納品すると言うことを自分自身で経験している人たちになる。挙句、その戦場は今までとは話にならないほど敵が多い。だって、訓練されていない人たちだって名乗れるし納品できるのだから。それも数の上では明確に敵になるのだ。
訓練を受けていない人たちすら敵になる
そうこうしていると、子供達という新たな存在が雨後の筍のように湧いてくる。この世代はプロを目指すと気軽に口にする。そして、簡単に声をかけられるネット活動の人たちに相談したりする。まぁ結構な数が食い物にされたり無駄な時間を過ごすことになっているものの、中には乗り越えてくる子たちも一定数存在する。
気楽にネットに「ボイスサンプルです」ってアップしてくる無限に存在する障害物。当然自分たちもその中の一つでしかないので、埋もれる。上手い下手を語る前に、聞いてもらう機会が激減している。
しかしオーディションはある
録音に関しては、声に関してでいうと現役プロの方が総じて苦手であり、同じ土俵で戦うことすら難しいのはここまでに書いた通りだ。であれば、事務所所属の最大のメリット「オーディション」なら無関係。これを受け続けていろんな仕事につなげていき、そこで生きていけばいい。
オーディションへのボイスサンプルは基本的に事務所が送ってくれる。つまり、品質チェック合格済みだ。つまり、ここで勝負するためにひたすら演技や読みを鍛えればいい。
問題はテープオーディションだ。スタジオを持っている事務所に所属しているようなラッキーな人以外は、事務所にスタジオをとってもらうか自分で取るか、自分で録音するしかない。なぜなら参加を決めてからお題を読むのだから。
ここで、自分で録音するしかない、となった場合は、立場も何もなく録音したものを納品と同じ扱いで提出する。
この時の録音クオリティがネット活動者に明らかに劣る場合、演技や読みの上手い下手まで意識してもらえるだろうか?残念ながら基本的にはこれはNOなのだ。受け取った方の立場で考えて欲しい。たくさんいる候補の中で大量のサンプルを聞いている。大量のサンプル群は基本的に事務所が行けると判断して、実力がそこそこ以上は確実にある。その中に一人だけ環境が悪くファイルとして不合格のものがある。
それ、わざわざ聞く?
言い訳に必要だった
こんな状況を知らなかったのかと言われると知っていた。知っていたが劇的に環境を変えるほどではないと思っていたり、資金的に動けない人間が多かった。筆者のところはスタジオがあるからテープオーデの際に、今からスタジオで撮るから急いでこい!って言えるけど、そんなところは稀。そうじゃないなら自分でとらざるを得ない人がほとんど。
そんなわかっちゃいるけど「どうしようかな」が続く中でのコロナ禍。宅録需要が高くなり、いいきっかけとようやく動き出したのだ。今が動ききっかけだ!と。当然すぐに録音がうまくなるわけではない。だが、芸能人のyoutuber現象もだけど、同じ土俵にさえ上がればこれまで苦労して時間をかけて身につけてきた技術で勝負できる、って思いはみんな持ってる。
つまり、ここからが本当の戦国時代になるのだ。
その戦国時代を目の前にして、まだ素人以下のクリティのサンプル投げてくるって馬鹿にしてるのか、っておじさんは思っただけの愚痴。
楽録やらないと、って動き出したらすぐに結果を出す。それが本当の意味でのプロですよ、と。相談相手いるってだけでも異常に恵まれてるってまだ気がつかんのか!ってねw
教える立場なのでできる限りはワークショップなどで教えた内容を説明していこうかなと。地方の人やワークショップに事情があって参加できない人たちへのサポートが今後もやっていければと思っています。