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自炊クッキングバトル ~子牛の睾丸編~

去勢というものがあります。
身も蓋もなく言えば睾丸を除去するものです。

家畜、こと肉牛においては非常に重要な処置で、これをしないと仕事になりません。

牛を去勢すると肉が柔らかくなって大人しくなるとは言いますが、個人的には「大人しくなる」方が断然重要です。

分かりやすく例えるなら、人の頭を金属バットで思い切り殴れる人がオス牛、ちょっとためらってしまう人が去勢牛です。
肉の味がどうという以前に生き死にが関わってくる、それが去勢なのです。


去勢方法は何種類かあり、バルザック去勢、観血去勢、捻転去勢というのが主ですが、最近はもっぱら捻転去勢が行われています。
睾丸の膜とか血管とかを捻じることで止血と切除を同時に行うというものです。

そして去勢が終わると何かを失った顔をした子牛と二つの睾丸が残されます。

睾丸は廃棄されるのが普通ですが、犬を飼っている農家では犬に食べさせることもしばしば。

そして稀に、数奇な運命をたどった睾丸は私の手元に食材として流れつくのです。


遠目で見ると鶏肉に見えなくもないが
近くで見ると完全に睾丸である



自炊料理というのは己との戦いであり、挑戦であり、成長である。

2022年、11月吉日。
私はジップロックに入った6個のタマを完全に持て余していました。

あと一個で願いが叶うとかそういうタマではなく、去勢された子牛の睾丸です。なんかノリと勢いで貰ってしまいましたが2日ほど冷蔵庫に封印して頭を抱えています。

実際に子牛の睾丸を食ったことがある方に話を聞いたところ
「そこまで美味しくないですよ」
と言われました。
何となくですが知ってた。

じゃあ何で貰ったの、と言いますと、ちょっと毒のあるキノコを先月食べてから食に対するハードルが下がっていたためです。
毒と言っても人によっては腹を壊す程度のものですが、それでも毒は毒。毒キノコが食えたんだから、ね!
というノリです。

しかし微毒キノコの方はネットで美味しいと書かれていたのに対し、睾丸は面と向かって不味いと言われてしまい、いやしかし貰った手前こりゃ捨てられないな、と。

結果、私は子牛の睾丸という目に見える地雷の上にそっと足を乗せたのでした。



まずは食べ方を考える所から。
『タマ』
という印象的なフレーズに引っ張られて

「タマの天ぷら、タマぷら」
「タマ入り五目巾着、タマ巾着」
「釜玉うどん」

みたいなのばかり思いつきました。
とりあえず全部やってみっかァ、という考えのもと食材を買い込んで帰宅。

次いで調理、試食です。
精巣は半透明の膜、恐らく肉様膜というものにつつまれており、それゆえある程度の清潔さを保っています。まずその膜を切除して、美味しくなさそうな部分を取り除く所から。

血管や精巣上体を切除して真っ二つに。
白膜と呼ばれる皮っぽいものを皮引きの要領で除去。

残った柔らかそうな部分を食べることにしました。



まずは焼き。
サラダ油でざっくり焼いてみましたがその時点でヤバイ臭いが漂ってきました。

獣臭というヤツです。
タヌキを煮込んだ匂いを薄めたようなヤツです。
個人的に苦手なヤツです。

立ち込める暗雲。

とりあえず塩で一口。
ほんのり獣臭。
食感はレバー系の内臓。
食材本来の味がよく分かりました。塩はダメです。

次いで塩コショウ。
コショウが臭みを少し和らげましたが旨味を引き出すということは特にありません。
血の味がしないレバーという印象。

次にポン酢。
ポン酢が
「俺が抑えているうちに飲み込め!」
と言ってきたので2回くらい噛んですぐ飲み込みました。サンキュ! 助かる。

最後にマヨネーズ。
これは当たりでした。
マヨネーズの何でもマヨネーズ風味にする能力により臭みが大きく減少。不遇の裏に活路あり。

次に茹でタマ。

塩と塩コショウについては焼きとほぼ同じ。
しかし水っぽいためマヨよりポン酢のほうが合う気がします。



結構苦手な臭いだったのでタマを一つ試食する段階で吐き気との戦いが始まっていました。これは臭いを何とかしないと食事になりません。

拮抗状態を作るとしよう。

ニラとショウガを使います。

刻んだだけで台所に立ち込めていた獣臭がニラ臭さとショウガ臭さに塗りつぶされました。

いける、いけるぜ・・・!

今日の晩飯はニラ玉だッ・・・!

ニラ玉

材料
ニラ     半束
子牛の精巣  4個
マヨネーズ  適当
塩コショウ  適当

作り方
一、全部ぶち込んで炒める。
二、完成


ニラ玉汁

材料
ニラ    半束
卵     1個
子牛の精巣 1個
めんつゆ  適当
醤油    適当
白だし   適当

作り方
一、全部ぶち込んで煮る。
二、完成


完成したものがこちら


ニラ玉の方は臭みが殆どなく、血の味がしないレバニラって感じでした。
ニラ玉汁の方は恐怖心により調味料の量をミスったため味が濃かったので、うどんをブッ込んで頂きました。

結論として、廉価版レバーとして美味しく食べられることから食材としての価値は十分にあると判断します。
とはいえ臭みが強いので食べ方を十分に考えないと苦手な人は地獄を見るでしょう。

先の見えない昨今の世界情勢。
戦争や飢饉により子牛の精巣を食べる機会が訪れるかもしれません。
そんな時はニラと一緒に炒めて塩コショウとマヨネーズを味付けに使うと食べやすいということを覚えておいてください。




上に少し書いたように、先月から微毒キノコを食べています。
職場に数十本群生していたので一ヶ月かけて殆ど食い尽くしました。

今回子牛の精巣を食おうとしたのもキノコを食おうとしたのも同じ衝動によるもの。
実家を飛び出して独り暮らしを始めたら生活が平和になりすぎて退屈なのです。

小人閑居して不善を為す。
然るに阿呆は閑居して阿呆を為す。

この食レポは愚行により少し得られた知識を皆様に伝えることで社会全体の知見を広げんとする貢献活動であります。

断じて不適切に処理された畜産産物の飲食を推奨するものではありません。
胃腸に自信の無い方は真似しないでくださいね。


以上をもちまして
自炊クッキングバトル ~子牛の金玉料理編~
終了でございます。

次回は未定ですが、最近職場でスズメバチの巣を見つけたので人生初の昆虫食かもしれません。楽しみだぁ。

それと、今回のタマは2日ほど冷蔵庫で封印してたため新鮮なタマに比べて味が落ちていた可能性もあります。
次は是非その日のうちに料理してみたいですね。

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