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くすりの服用回数が少ない方が飲み忘れは少ないのか?【予想外の結果も】

「くすりを飲むときに服用回数が少ないほど飲み忘れは少ないだろう」

ずっとこう思ってきましたが、

ほんとうにそうなんだろうか?

という疑問が湧きました。

【ベザフィブラートSR200mg 朝夕食後】

朝の薬は飲めますが、夜の薬を飲み忘れることが多いため飲み残しが増え、2回ほど残薬調整が続いた方がいました。

フィブラート系の薬剤だと他に、

☑フェノフィブラート(リピディル®)
☑ペマフィブラート(パルモディア®)

があります。

服用回数でみると
 <1日2回>
ベザフィブラート、ペマフィブラート
 <1日1回>
フェノフィブラート

となっていて、服用回数を減らすにはフェノフィブラートへの切り替えという選択肢があります。

なので、「1日1回にしたら飲み忘れが減るだろう!」という流れです。

ベザフィブラートとフェノフィブラートの効果の差は?

まずは服用回数の前に、そもそも薬を切り替えても同じ効果が得られるのかどうか?という部分も大切になるので見ておきます。

【薬 価】
フェノフィブラート53.3mg:12.0円
フェノフィブラート80mg:15.9円
(1日24円~31.8円)
ベザフィブラートSR200mg:10.1円
(1日20.2円)
■ベザフィブラートSR(400mg/日)
・PPARα・δ・γに作用
TC:-11 ~ 19% LDL-C:-12 ~21%
TG:-30 ~ 57% HDL-C:+32 ~ 48%
■フェノフィブラート(106.6mg~160mg/日)
・PPARαのみに作用
・尿酸低下作用あり
TC -17%,TG -48%,HDL-C +36%
TC:-9~22% LDL-C:-17~29%
TG:-33~54% HDL-C:+25~67%
       
<インタビューフォームより抜粋>

薬の価格としても、コレステロール低下作用としてもそれほど差があるような感じはありません。

両剤の臨床での効果を比較した報告もあります。
■対象:
61例(男性43例、女性18例)
■方法:
フェノフィブラートをベザフィブラートに切り替える
■結果:
切り替え20週後の脂質(LDL-C, TG, HDL-C)および糖代謝(HbA1c)に対する安全性と効果を評価

 ベザフィブラートへの切り替え後、血清LDL-C値、TG値に有意な変化は認められなかったが、切り替え後20週目には血清HDL-C値が49.5±1.7mg/dLから52.5±2.0mg/dLへと有意な上昇が認められた。また、HbA1c値は5.92±0.34%から5.72±0.33%へと有意に低下した。

この中ではグルコース代謝とHDL-C値についてベザフィブラートの方が良好な数値を示したというものです。

<参考資料>
フィブラート系薬剤の切替えによる脂質代謝,糖代謝改善効果の比較検討-ベザフィブラートとフェノフィブラートの実臨床での相違について-.Therapeutic Research,33(10):1561-1568,2012

そこまでの効果を期待して使用しているとも思えないため、1日1回のフェノフィブラートへの切り替えでOKと仮定しておきます。

服用回数について

服用回数に的を絞っていくつか文献の内容をピックアップしてみたいと思います。

 服用回数に関して、1日の服用回数の増減によりコンプライアンスの割合が特別の傾向を示すことはなかったという報告¹⁾があります。

服薬遵守率(コンプライアンス)
1回 41.4%(12/29)
2回 47.1%(41/87)
3回 36.8%(160/435)
4回 46.2%(30/65)

 また、患者の希望する服用回数としても、1 日 1~3 回で大きな差がみられなかったという報告²⁾もあります。

無題


1回430件 2回300件 3回 450件 くらい

 残薬管理の服薬アドヒアランスに与える影響をみた報告³⁾では、残薬の内訳について調べています。

【 残薬の内訳 】
用法別の品目数では、1日1回が130品目(30.9%)、1 日 2 回が 69 品目(16.4%)、1 日 3 回が 159 品目(37.8%)と、1 日 1 回と 3 回の医薬品が多くなっています。

用法別に関しては,薬剤数では 1 日 3 回の医薬品が過半数を占め,特に昼の薬の飲み残しが多かったとされています。1日1回もまた意外にも比較的飲み残しが多くなっています。

ここまでの結果をみると、服用回数によって飲み忘れが減るか?と言われるとはっきり断言はできませんが、1日3回よりは、1日1回、1日2回の方が飲み忘れは少なそうだなという結果はでていると思います
また、1日 の服用回数が少ない方が飲み忘れが減少するような気がしますし、そのような報告も見られます⁴⁾

もう一つ。1日3回で服用した場合に、どの時点での飲み忘れが多いか調べたもの⁵⁾
服薬時刻別では、飲み忘れの割合が朝 (9%)、夕 (8%)、眠前 (6%) に比べて, 昼 (21%)が最も高い割合でした。
( 昼 > 朝 > 夕 > 寝る前 )

昼の薬を飲み忘れる理由としては
①職場や外出時における薬の不携帯
②単なる飲み忘れ
③食事を摂らないことによる薬の自己中断
などが考えられます。

その他飲み忘れの理由としてはいくつかありますが、
◎うっかりして忘れた
◎忙しくて忘れた
◎病気が治ったと思った
◎副作用が心配
◎手元になかった
◎薬の種類が多い
◎服薬回数が多い
◎食事をとらなかった
◎お酒を飲んだ
などが挙げられています⁶⁾

<参考資料>
1)コンプライアンスに影響を与える要因.病院薬学,11(3):276-283,1985
2)服薬コンプライアンスのさらなる向上と薬剤管理指導業務.医療薬学,34(8):800-804,2008
3)節薬バッグを活用した残薬管理の服薬アドヒアランスに与える影響.医療薬学,43(6) 344-350,2017
4)患者の服薬指導.薬局,32:813-820,1981
5)老年患者の服薬コンプライアンス.日本老年医学会雑誌,29(11),1992
6)日本内科学会雑誌 第81巻 第9号(平成4年9月10日)

さいごに

服薬アドヒアランスに影響を及ぼす患者の意識調査.医療薬学,38(8) 522―533 (2012)

 この資料の中では、飲み忘れに影響を及ぼす要因について検討しています。

 CS分析によって、改善度が高い(改善する必要がある)設問をピックアップしています。
TOP5
1.食事は規則正しくとれている
2.生活リズムはきちんとしている
3.薬剤師を信頼している
4.お薬の説明書を活用している
5.薬を飲み忘れないように気をつけている

薬の効果を認識し、飲み忘れを意識しながら規則正しい生活を送ることで、飲み忘れを減らすことができるという結論です。

このように服用回数以外にも様々な要因が関与しているため、まずは患者さんの生活背景の聞き取りを行ったうえで、服用回数の改善に取り組むことが大切だと思います。



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