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EC~薬剤師による処方がある州とない州の比較~

経口EC(Emergency Contraceptive:緊急避妊薬)は米国ではその種類によっては市販薬として購入が可能となっています。

緊急避妊薬について詳しくは別のNOTE記事で書いているのでそちらをご覧ください。

今回はじめて知ったのは、米国とひとくくりで考えられることばかりではなく、ECに関して「薬剤師による処方ができる州」「薬剤師による処方ができない州」があるということ。

米国での緊急避妊薬の流れ

【導入部分】
米国で利用可能な緊急避妊(EC)
・銅製子宮内装置(Cu-IUD)の挿入~使用頻度は低い
・市販薬:レボノルゲストレル(LNG)1.5mg経口錠剤
・処方箋薬:ウリプリスタル酢酸塩(UPA)30mg経口錠剤

1999年 経口LNG0.75mgの2回投与レジメンとしてFDAによって承認された
    その後、1.5mgの単回投与レジメンとして処方されるようになる
2006年 18歳以上を対象として市販薬として承認
2009年 17歳以上を対象として市販薬として承認
2013年 すべての年齢層の人が市販薬として入手できるように
2010年 ウリプリスタル酢酸塩(UPA)処方箋薬として FDA 承認された

米国における緊急避妊へのアクセスのモデル
1.処方箋:FDAにより処方薬として承認されている。
2.薬剤師による処方:FDAにより処方薬として承認されており、州全体の権限または処方者との共同診療契約の下で、事前の処方箋なしに薬剤師から直接入手可能。
(州法で認められている事実上のカテゴリーであり、FDAでは認められていない)
3.カウンターの後ろ:市販されているが、薬剤師による監視が必要な制限がある
4.店頭:市販薬

薬剤師がECを処方できる州(8つの州)
アラスカ、カリフォルニア、ハワイ、メイン、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ニューメキシコ、バーモント、ワシントン
※米国の州は全部で50州ある

そして、薬剤師がECを処方できる州(カリフォルニア)と処方できない州(ジョージア州)にいる薬剤師に電話調査をした結果が文献として報告されていました。

都市の薬局における緊急避妊アクセスとカウンセリング:薬剤師処方のある状態とない状態の比較

Stone RH, Rafie S, Ernest D, Scutt B. Emergency Contraception Access and Counseling in Urban Pharmacies: A Comparison between States with and without Pharmacist Prescribing. Pharmacy (Basel). 2020;8(2). doi:10.3390/pharmacy8020105
主要評価:薬剤師によるECの処方を許可している州とそうでない州の間で、患者のECへのアクセスやカウンセリングに違いがあるかどうかを判断する
副次評価:各州内の薬局タイプ別のECアクセスとカウンセリングにさらに違いがあるかどうかを判断する
『 電話調査のためのチャート 』
1.個人的な質問ですが、薬剤師と話すことはできますか?
2.避妊のために使用できるものはありますか?
3.どこで手に入るか知っていますか?
4.いくつか種類があると聞いたことがあるのですが、何種類ありますか?
5.LNGのみ、上記在庫照会 →6
5’.LNGとUPA →6’
6.セックスをしてから4日が経ちましたが、LNGはまだ使えるのでしょうか?
6’.セックスをしてから4日が経ちましたが、どれが一番効くのでしょうか?
全てのカウンセリングポイントを記載
1.2.3でNoだった場合は、そこで終了

【対象】
ジョージア州(GA:アトランタ149、38.4%)
カリフォルニア州(CA:サンディエゴ127、32.7%、サンフランシスコ112、28.9%)
★薬剤師がECを処方できる州はカリフォルニア州(CA)
388例(CA 239、98.4% vs. GA 149、98.0%)から得られたデータ
ー 業種内訳 -
■チェーン薬局(310、79.9%)
 ドラッグストア薬局(216、55.7%)
 食料品店薬局(68、17.5%)
 量販店(26、6.7%)
■個店(独立薬局)(78、20.1%)

2.に対する回答
避妊していない性交渉の後、ほとんどの薬剤師がECが利用できると回答した
(CA 220、92.1% vs GA 121. 81.2%、p<0.01)
カリフォルニア州の方が割合は高くなっている

4.に対する回答
■どんな薬があるのかの質問に対して大多数がLNGと回答した(CA 211、88.3% vs GA 121. 81.2%)
カリフォルニア州の薬剤師のごく一部は、LNGとUPAの両方(4名、1.7%)またはUPA単独(1名、0.4%)について言及していた。
→追加の質問なしに回答できた割合
LNGの在庫については、カリフォルニア州の薬剤師の方がジョージア州の薬剤師に比べて在庫があると回答した(CA 214、89.5% vs. GA 101、67.8%、p < 0.01)
カリフォルニア州の薬剤師は、ジョージア州の薬剤師よりも、性交後4日後にLNGを使用した場合、「効果はあるが、効果は低いかもしれない」と正しく回答する方が多かった(CA 112、67.5% vs GA 21、17.5%、p<0.01)

【 UPAの認知度と在庫 】
電話調査員による追加の質問により、UPAについて言及した人(CA 49、20.5% vs. GA 5、3.4%
→うち在庫があったところ(CA 23、42.6% vs GA 1、20%、p = 0.33)
→「セックスをしてから4日が経ちましたが、どちらが効果的でしょうか」と尋ねたところ、ほとんどの薬剤師はUPAがLNGよりも効果的であると答えた(CA 44、81.5% vs GA 5、100%)

薬剤師によるECの処方が許可されている州の継続教育を受けている薬剤師は、経口ECへの患者アクセスの改善とより正確な患者カウンセリングと関連している可能性があります

さいごに

日本では、薬局での緊急避妊薬の処方については壁があり難しい状況にありますが、この文献をみると市販薬(LNG)にしても処方薬(UPA)にしても制度が確立し継続教育を受けている薬剤師の方が正しい知識を患者さんに伝えることができ、また在庫の確保の意識も高かったという結論になっているため、継続教育の仕組みづくりさえできれば日本においても同様の対応ができるのではないかと感じてしまいます。

一番は、悪意のある利用を避けながら、患者さんの不利益にならないためのアクセスのしやすいルートを確保して、正しい知識を伝えてあげてその後の避妊率も向上させるような仕組みづくりが大切だと思った文献の紹介でした。


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