論文要約「歯科学報Vol 115 No3 (2015)より 臨床のヒントQ&A45 小澤卓充;石上恵一

質問

 ナイトガード(スプリント)のソフトタイプとハードタイプの使い分けについて教えてください。また厚さはどのような基準で決定すべきでしょう
か。



ストレス社会とブラキシズム:ナイトガードの重要性

現代社会はストレス社会と呼ばれるほど複雑であり、人々は無意識にストレスを発散しようとします。その一つの方法がブラキシズム(歯ぎしり)です。ブラキシズムは増加傾向にあり、その治療としてナイトガードの需要も増えています。ブラキシズムは、咀嚼時や無意識時に上下の歯が接触することを指し、特に睡眠やストレスが原因とされています。

ブラキシズムの原因と影響

睡眠時のブラキシズムは、浅い睡眠(ノンレム期ステージ1、2)及びレム期に多いとされています。また、ブラキシズム発生前には交感神経の活性化や心拍数の上昇が見られます。精神的なストレスも大きな原因であり、ブラキシズムはストレス発散の役割を果たしていると考えられています。「ブラキシズムは、むしろ人間が生存するためのきわめて重要な機能であると言え、多くの人に高頻度に認められる」とも言われています。

ブラキシズムは顎関節症や歯の損傷などに大きな影響を与えますが、診断や治療法は確立されていません。現在の治療法としては、ナイトガードによる対処療法が一般的です。

ナイトガードの作成と咬合挙上量

ナイトガードを作成する際に重要なのは咬合挙上量です。覚醒時の安静空隙量でレジンの強度が最低限確保できる臼歯部で1mm前後が良いとされていますが、明確な指標はありません。睡眠中は持続的に開口している時間が長く、安静空隙の2〜3ミリ以上垂直的に開口している時間が多いと報告されています。この時、ブラキシズムの回数が多いほど開口量が小さい傾向にあり、ナイトガードの厚みはブラキシズムの頻度に応じて調整する必要があります。

ナイトガードの種類と選び方

ナイトガードにはハードタイプとソフトタイプがあり、ソフトタイプは製作が簡単で違和感が少ないとされていますが、筋活動が増強されるという報告もあります。また、ある実験報告ではハードタイプよりソフトタイプを使った時の方が歯のひずみが大きく、楔状欠損や修復物の破折を引き起こす可能性があるとされています。基本的にはハードタイプの方が推奨されることが多いです。



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