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090 『小市民シリーズ』、感想第一回目

 私はテレビアニメシリーズの第一話、新規IPでも続編でも、ファーストカット、最初の場面、最初の主人公の出し方に気をつけて観てていて。特に「小市民」は『氷菓』と同じ原作者で比較される運命にあるし、今回のシリーズで終わりにしたくないだろうから、生半可に作ってないはずだから。

『小市民シリーズ』、ファーストカット

 その結果が上記の受験番号票。

主人公のファーストカット

 上記がタイトル画像の表情から変わる笑顔ですが、果たして、これから高校生になろうとする少年の笑みか? 少なくとも希望のある表情とはいいがたい。この直後に中学が同じだったらしい小佐内さん、そして小学校は同じで中学時代は疎遠だった堂島くんが登場し、三人が顔見世する形。
 そして小鳩くんは小佐内さんと喫茶店に入り、本作に関わる決定的な台詞を吐く。

テーマを言う小鳩くん

「小市民たるもの。決して出しゃばらず、日々を平穏に過ごし、それを妨げることからは、断固として回避の立場をとるべし」

 なるほどと、私は合点がいきました。実は私は昨年遅まきながらアニメ『氷菓』を観賞し、夢中になった時期がありまして。直に同じ米澤穂信の原作の『小市民シリーズ』があることを知ったのですが、結局読まずに今月からのアニメを観ることになったのです。だから小鳩くんの「小市民たるもの…」の口上も初めて知ったことですが、私は小鳩くんと小佐内さんに関し、二つのことを推察したのでした。
 普通に考えれば高校生なんてダイダスが認められて天狗になってた高校生の河原木桃香みたいなもんかと。それが悟ったように「小市民を目指す」とは、小鳩くんは中学時代にとんでもない大失敗をやらかしたに違いない、これが一つ。二つ目は、本作は決して主人公二人が小市民を目指す話でないこと。それどころか目指したいと思いつつ、「小市民への夢」はどんどん遠ざかっていく物語になると想像したのです。
 そう考えれば第二話で無神経に小鳩くんに中学時代を問いただした堂島くんの(作中の、戯作としての)役割は馬鹿にならない。多少強引で押しの強い人間でないと、落ち着き払った小鳩くんの化けの皮は剝がれないと思うので。
 しかし小鳩くんと小佐内さんの関係は不可解ではある。第一話では小鳩くんの後ろに小佐内さんが回り込む場面が見受けられたが、決して小鳩くんと小佐内さんは〈守り/守られる〉関係だけでないはず。むしろ小鳩くんは自分の窮地を、小佐内さんを助ける/救うことで脱することが出来たのではと妄想する。つまり小佐内さんが隠れることは小鳩くんの自尊心を保つことと、小佐内さん自身が自覚してるのではないか? OPでも出てくる自転車の二人乗りで必要以上に密着してないのは、小佐内さんは小鳩くんに頼っているわけでない証左と思えるのです。
 何はともあれ緊張ある静謐のアニメシリーズ、青い空と白い雲と言う『タッチ』の遺伝子は受け継ぎつつも陰キャの二人(ですよね)の物語に目が離せません。

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